三相電源からどうしても単相電源を取り出して使用したい経験があるかと思います。
しかし、技術的、理論的に可能なのか、電力会社の規約に反しないかなどの不安がありますよね。
実は、高圧受電以上(低圧受電以外)の物件に限り、動力回路から電灯を取り出して使用することが可能です。
動力から2相取り出して単相200Vとして使用する例は多く見られますが、他にもトランスを使った事例もありますので紹介していきます。
一回路どうしても単相を使いたいといった場合や、電気工事の計画をする際に回路構成の構築に役に立ちますので是非ご覧ください。
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三相3線式から単相200Vを取得する方法
3線のうち2線を取り出す
三相3線(動力)の3本のうち、2本を取り出すことで単相200Vとして使用できます。
取り出す2本の線はRS、ST、TRどの組み合わせでも全て単相200Vを取ることができます。
改修工事や仮設工事の際に、近くに三相電源しかないけど、どうしても単相200Vを使用したいといった場合に使えます。
その場合は、図のように単相200V側にケーブル保護やメンテナンス性を考慮してブレーカーを必ず取り付けましょう。
この場合不平衡に注意する
三相3線から2相を取り出した場合、一つの線間ばかりを使用すると不平衡となりますので、回路が複数ある場合はR-S、S-T、T-Rの各線間をバランス良く使用する必要があります。
不平衡とは負荷のバランスのことで、これが大きく崩れると変圧器の電力損失や機器への悪影響となります。
回路が一つの場合は、一つの線間となりますが末端負荷のような小さな負荷の場合はほとんど問題ないでしょう。
ただ、現地の設備担当のお客様への説明や電気主任技術者と協議することは重要です。
実際の使用例① 空調室外機から室内機への渡り
ビルマルチエアコンは、室外機は動力盤から、室内機は最寄りの電灯盤から電源線を配線し、別々に電源を取得することが一般的ですが、パッケージエアコン(業務用エアコン)の場合は室外機から室内機に渡りで電源線が配線されます。
パッケージエアコンが同じ電源の理由は、室内機と室外機が同じ動きをし、稼働時間も同じだからです。
室外機は動力ですので、室外機内部の内線で動力から2相取り出して、単相用(室内機用)のブレーカーが中に設置されています。
パッケージエアコンは、コンビニや小さい事務所ビルなどの、小、中規模物件に採用されています。
実際の使用例② 動力制御盤の制御電源に使用
排水ポンプや排気ファンなどの機器は、条件によって発停させるために、制御盤にてリレーシーケンスを組み込み制御しています。
また、スターデルタ結線のモーターも同じく制御盤内にマグネットリレーを組み込んで制御しています。
これらのリレーコイルに励磁するための電源や、表示ランプを点灯させる電源などの制御電源は、三相3線から2相を取り出して単相として使われます。
もしくは小型のダウントランスで三相200V→単相100Vに降圧したり、パワーサプライで直流に変換している制御盤もあります。
わざわざ動力制御盤に単相電源を配線するということはせずに、動力の電源のみで運用します。
動力制御盤は、モーターなどの動力機器のブレーカーと制御回路が組み込まれたものだからです。
このように、制御電源に使用する場合の不平衡の問題ですが、制御電源は機器を動かす電源ではなく接点信号のやりとりのみですので、ほとんど電流が流れないので問題になりません。
実際の使用例③ 専用盤を使った例も
動力分電盤の内部に単相200V用の外線用端子台が設置され、内線が組まれている分電盤を設置している物件もあります。
RS、ST、TRの順番で端子が並んでいて、左から順番に回路を結線して使用します。
三相3線式から単相100Vを取得する方法
動力から単相100Vをとるには、変圧器(トランス)を使用するしかありません。
スコットトランスとダウントランスで変圧する2つの方法がありますので以下に説明します。
スコットトランスで変圧する
スコットトランスは、一次側に三相3線を入力し、二次側から単相3線式を2系統取り出すことができます。
単相3線式ですので、一般的な電灯と同じ単相100Vと単相200Vを使用できます。
取り出した2系統に、同じ容量の負荷を接続して使用することにより、負荷をバランスよく使うことができる点がメリットです。
使用される事例として一番多いのが、三相の非常用発電機を設置している物件では、停電等の有事の際は非常用発電機から発電した三相電源のみとなるため、単相負荷へも電力を供給するために使用されます。
この場合、スコットトランスに接続される負荷は、停電の際に電源が供給される「非常用負荷」となり、通常状態においてもスコットトランスより給電されます。
高圧受電の物件では、設置されている場所が多いので確認してみてくださいね。
ダウントランスで変圧する(三相100V)
三相→単相のダウントランスは、スターデルタ結線の巻数比1:2のものを使用し、三相200Vから三相100Vに変圧します。
三相100Vはかなり聞きなれない電気方式かと思いますが、難しいものではないですよ。
三相200Vが100Vに変わっただけです。
三相200Vと同様、それぞれの位相が120°ずつずれているため、R-S、S-T、T-R全ての線間電圧で単相100Vが取得できます。
3つの線間をバランスよく使用することで不平衡を防止できます。
実際の使用事例としまして、サーバー負荷をUPSシステムにて電源バックアップしている物件です。
サーバーを大量に設置している場合、大容量のUPSを使用する必要があります。
大容量UPSは、三相3線のみのラインナップのことが多いので、単相負荷へ供給するためにダウントランスを使用します。
スコットトランスは、負荷系統が2系統になりますが、ダウントランスの場合、盤内の子ブレーカーを3相ともバランスよく使用すれば問題ないので、変圧器盤で回路を分岐すれば系統はいくつでも取り出すことができます。
三相から単相取得は、低圧受電の場合違反となるので注意
高圧受電の場合は問題ないのですが、低圧動力を受電している場合(低圧動力プラン)は動力から単相に変換して使用することは規約違反となります。
参考として、TEPCO(東京電力エナジーパートナー)の低圧受電の動力プラン契約約款に以下のように記載されています。
お客さまが変圧器,発電設備,蓄電池等を介して,電灯または小型機器を使用されたことにより料金の全部または一部の支払いを免れた場合には, 当社は,その免れた金額の3倍に相当する金額を,違約金として申し受けます。
TEPCO 動力プラン 約款より抜粋
動力を使用する小型の物件では構内に受変電設備を設置せずに、低圧の三相3線を直接受電しています。
(最近はコンビニなどの小型の物件でも高圧受電が増えてきましたが)
実は、低圧受電の動力プランは電灯プランに比べて1kwあたりの料金単価が安く設定されています。
そのため、変圧器等を使って勝手に電灯に変換して使用すると、本来電灯で使用した電気料金よりも安くなるため「一部の支払いを免れた場合」に該当します。
約款に記載のとおり、違反した場合は3倍に相当する金額を取られますので、低圧受電の需要家の方は、くれぐれも動力回路から単相200Vをとらないように注意しましょう。
高圧受電の場合は、高圧部分の電力量から一括して電気料金を算出するため、電灯と動力の電気料金単価を別々に設定していないので問題になることはないです。
まとめ
まとめ
- 三相200Vの2相から単相200Vを取り出せる
- 上記方法の場合は不平衡に注意し、バランスよく取り出す
- 単相100Vはスコットトランスやダウントランスにて変換できる
- トランスを使用する場合、不平衡の問題を解消できる
結論としては、高圧受電でしたら三相から単相に変換しても問題ないです。
よく考えてみると高圧が三相なので、低圧の単相負荷は高圧トランスで変圧してますしね。
この記事がみなさんのお役に立てますと幸いです。
それではまた、ご安全に!