今回は、設備不平衡率について解説いたします。
不平衡率とは単相負荷におけるバランスですが、内線規程において規定されています。
不平衡率が高くなると、どんな影響を及ぼすのか、計算による不平衡率の求め方をできるだけわかりやすく解説します。
電灯分電盤や単相変圧器の容量を選定する際に大変重要となる事項ですので是非ご覧ください。
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設備不平衡率とは
設備不平効率とは負荷のバランスのことです。
このバランスが大きく崩れると、各相の電流・電圧がアンバランスとなる結果、変圧器の電力損失が大きくなり不経済となるばかりではなく、変圧器、電動機に悪影響を与えます。
特に高圧設備では、単相負荷と三相負荷が共存するため、考慮しないといけません。
三相負荷では三相同時に使用しますが、単相負荷の場合、三相のうち二相のみを使用しますので、単相変圧器の選定次第で設備不平衡が生じます。
これは、自家用発電機で発電した電源にも当てはまることで、スコットトランスを使用して単相負荷にバランスよく供給しています。
不平衡による様々な影響から、内線規定では設備不平効率について規定しています。
内線規定の確認
内線規程では、設備不平効率について二つの項目にて規程しています。
単相3線式の設備不平衡率
一つ目は単相3線式において、中性線と他の各電圧側電線を平衡させなければいけないという規程です。
例えば、単相3線式の電灯盤や住宅のホーム分電盤等が該当し、電灯盤の中のお話になります。
電灯盤の中のブレーカー配置の設計・計画時に計算が必要です。
盤内の上下または左右のブレーカーで相を分けているので、R相とT相の負荷バランスを平衡させましょうということです。
下記計算式により計算し、40%までは許容することができます。
例外として、契約電力5kW以下の設備については、40%を超えることができるとなっています。
1305節 不平衡負荷の制限及び特殊な機械器具
1305-1 不平衡負荷の制限
1.低圧受電の単相3線式における中性線と各電圧側電線間の負荷は、平衡させること。
ただし、3605-2(分岐回路の種類)3項②で規定されている片寄せ配線を行った単相3線式分岐回路にあってはこの限りでない。(勧告)
[注1]やむを得ない場合は、設備不平効率40%までとすることができる。
略
設備不平衡率= [注2]契約電力5kW程度以下の設備において、少数の加熱装置類を使用する場合など完全な平衡が得難い場合は、前記の限度を超えることができる。
引用:内線規定
三相3線式の設備不平衡率
二つ目は高圧変圧器のバランスのお話になります。
単相変圧器の設置台数の設計・計画時に計算し、確認する必要があります。
三相負荷では三相同時に使用しますが、単相負荷の場合、三相のうち二相のみを使用しますので、単相変圧器の選定次第で設備不平衡が生じます。
例えば、150kVA単相変圧器が1台の場合、R-Tで接続しますのでSは全く使用しないことになりますので、不平衡となります。
150kVA単相変圧器が3台の場合、R-T,S-T,R-Sに接続しますので3相が平衡していることになります。
このように、1台では不平衡となりますので2台以上単相変圧器を設置し、負荷容量を考慮しながら容量を組み合わせていきます。
2.低圧及び高圧受電の三相3線式における不平衡負荷の限度は、単相接続負荷より計算し、設備不平衡率30%以下とすること。ただし、次の各号の場合は、この制限によらないことができる。(勧告)
①低圧受電で専用変圧器などにより受電する場合
②高圧受電において、100kVA(kW)以下の単相負荷の場合
③高圧受電において、単相負荷容量の最大と最小の差が100kVA以下である場合
略
設備不平衡率= 引用:内線規定
設備不平効率の計算方法
単相3線式の設備不平衡率の計算
電灯盤内ブレーカーは、右と左(ホーム分電盤の場合は上と下)でR相とT相が別れています。
つまり、右と左の負荷を平衡させればいいわけですね。
ブレーカーの配置を計画する段階で、負荷表を作成し、右と左の負荷が均等になるように配置します。
最後に確認のために計算し40%以下であるかを確認するという流れです。
尚、200V回路についてはR相とT相どちらも使いますので平衡しているということで考慮しなくてもかまいません。(総負荷設備容量には含みます)
実際の計算には内線規程のとおり下記式を使用します。
設備不平衡率= |
どういうことかというと、分母が全てのブレーカーの容量を合計したものの半分で、分子がR相ブレーカー合計とT相ブレーカー合計の差です。
そこに100をかけてあげればパーセンテージが算出できるということです。
例えば下の図のように電灯盤内のブレーカーを配置したとします。
この電灯盤の不平効率が40%以下であるかを計算して確認します。
単位のVAは皮相電力です。電灯(単相)は力率100%と考えることができますので、VA=W(ワット)として問題ありません。
使用する照明や冷蔵庫などのワット数です。
まず、分子のR相とT相の差を計算します。
ここで右側の1500VAの200VブレーカーはR相とT相どちらも使いますので計算に含みません。
R相=300+150+1500+150+150=2250VA
T相=550+300+700+150=1700VA
R相とT相の差=2800-1150=550VA
次に分母の総設備容量を計算します。
こちらは200Vの1500VAを含みます。
先ほど計算したR相とT相を合計し、200Vの1500VAを足す。
2250+1700+1500=5450
内線規程の式では1/2なので2で割る
5450÷2=2725
最後に内線規程の計算式に当てはめます。
550÷2725×100≒20.18%
20.18%で40%以下のため規定値内であることが確認できました。
ポイント
・200V回路は分子の計算に含まない。
・200V回路は分母の計算には含める。
三相3線式の設備不平衡率の計算
受変電設備の単相変圧器の台数を選定する際に必要となる計算です。
設備の負荷容量から三相負荷が1500kVA必要で、単相負荷が500kVA必要だとします。
三相負荷はリスク分散から3バンクに分け500kVAを3台、単相負荷は1台ですと不平衡となりますので200kVAと300kVAに分割します。
すると下の図のような構成になります。
これが設備不平衡率30%以下であるかを計算します。
実際の計算は、内線規定のとおり以下の計算式を使用します。
設備不平衡率= |
どういうことかというと、分母が全ての変圧器の容量を合計したものの三分の一、分子が単相変圧器の容量の最大最小の差、これに100をかけるとパーセンテージを算出できます。
まず、分子の単相変圧器の最大最小の差を計算します。
この場合は200kVAと300kVAの差ですので以下の式となります。
300-200=100
ここで注意していただきたいのが、単相変圧器が一台の場合や2台とも同じ容量の場合は最小の値が0として計算します。
つまり、200kVA一台設置の場合は、200-0=200となり、200kVA二台設置の場合も同様となります。
次に分母を計算します。
総設備容量ですので全ての変圧器容量を合計して3で割ります。
(500+500+500+200+300)÷3≒666.7
最後に設備不平衡の計算式に当てはめます。
200÷666.7×100≒30%
ギリギリですが30%以下を満足していることが確認できました。
また、今回は単相変圧器を2台設置としましたが、設備スペースに余裕があれば、3台設置をおすすめします。
3台設置が一番平衡に近づけることができますし、3台とも同じ容量であればその時点で平衡していることになるので計算の必要がありません。
また、内線規程の通り、100kVA以下の単相変圧器であれば設備不平衡率を考慮しなくても、一台単独での設置が可能です。
ポイント
・単相変圧器が1台設置、または2台設置で同容量の場合は最小値を0とする
・単相変圧器100kVA以下の場合は単独設置可能(計算不要)
・単相変圧器3台設置で全て同容量であれば平衡(計算不要)
最後に
いかがでしたでしょうか。
そこまで複雑な計算ではないので、手計算でも問題ないですが、エクセルで計算ツールを作れば簡単に台数検討ができますよ!
新築のトランス設計ではもちろん必須の計算ですが、改修工事で単相変圧器を増やしたり減らしたりという場合も検討が必要になりますので必ず確認しましょう。
この記事がみなさんのお役に立てれば幸いです。
それではまた、ご安全に!