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【疑問】ELCB(漏電遮断器)接地はなぜ共用接地してはいけないのか。誤作動は?

2022年4月16日

ELCBの接地が他のD種接地と別になっているのを良く見るけど理由がわからないという方に内線規程からの根拠と図を使って徹底解説していきます。

結論としては「漏電電流がELBの機器に回り込み危険な状態になる」ということです。

どういうことなのか順を追って説明していきます。

内線規程の関連箇所の記載は

お堅い話かもしれませんが、法律や規程を確認しておくことは重要なことです。

自分がなぜこの施工をしているのかを理解し、顧客や元請けに根拠の提示を求められることもありますので知識として持っておくことは必要です。

電技と内線規程の確認

まず電気設備技術基準の条文には次のように記載されています。

(電気設備の接地の方法)

第十一条 電気設備に接地を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならない。

出典:電気設備技術基準

アバウトな表現ですね。

この条文を受けて内線規程では次のように規定しています。

1350-13

漏電遮断器で保護されている電路と保護されていない電路に施設される機器などの接地線及び接地極は、共用しないこと。

ただし、2Ω以下の低抵抗の接地極を使用する場合は、この限りでない。

出典:内線規程

「共用しないこと」とはっきりと明記されていますね。

接地抵抗2Ω以下なら共用可

ただし、例外が2行目に記載されています。

接地極の接地抵抗値が2Ω以下でしたら共用可能です。

抵抗値を低くすれば接触した際の感電電圧は低くなるのでこの値でしたら安全は担保できるということです。

しかし、2Ωの値を出すのは相当大変なことです。

アース棒だけでしたら何十本も必要になりますし、抵抗値が下がらない場合は他の場所に離して打設しなければなりません。

また、接地銅板を使うにしても広い埋設スペースが必要になります。

そのため敷地面積が狭い場所は共用接地せずに、ELBアースが単独になっていることが多いです。

ELB回路のケーブルを結線する際は、盤の内部を確認しELB専用接地端子にアースを接続しなければいけません。

専用接地端子がない場合は共用接地の設計となっている可能性が高いですが、その際は設計図または竣工図などを確認すると確実です。

共用設置した際の問題点。ELB機器回り込みのメカニズム

ELB接地とD種接地を共用してしまった場合

ELBで保護されていない回路が仮に漏電したとします。

その場合回路は漏電保護されませんので地絡状態が継続します。

ELBで保護された回路と接地を共用している場合、共用接地を伝って地絡電流が流れます。

ELB回路の機器外箱等に電位が現れ、この機器に人が触れた場合は感電事故になる恐れがあります。

ELB接地を共用している回路

それぞれ単独接地とした場合

それぞれ単独に接地することによりMCCB等の回路で漏電が発生しても回り込みによる機器の電位は発生しません。

それぞれ単独接地している回路

回り込みはELB以外の回路でも同じでは?

それぞれ単独接地にしても、ELBで保護されていない回路同士の機器はアースで繋がっていますね。

例えばMCCBの回路で漏電が発生してしまったら、ELBの回路の回り込みは防止できても他のMCCBの回路の機器が回り込みによって電位を帯びます。

もちろんこれは危険な状態で、ELBの回路だけ安全であればいいというわけではありません。

しかし、ELB回路は特に危険だから接地を単独にしましょうねということです。

ELBの回路は本来漏電を保護しなければならない回路なのでELBを設けているのです。

ELBの回路の機器は水気のある場所に設置されています。

そのため濡れた状態の人が感電する可能性があるので特に危険なのです。

逆を返せばMCBの回路は漏電の危険性が低い、または漏電が発生しても致命的な事故になる可能性が低いという設計者の判断からELBを設置しなかったことになります。

ELB回路は特に危険な回路だからELBを設置して漏電保護をするはずが、全く機能せずに役にたたないといった状況を防ぐためにそれぞれを単独設置するということです。

MCCBの回路は漏電による電路の遮断はされませんので、漏電リレー等を設けて警報し早期に事故点を見つけ出してから手動で遮断する方法が通常です。

共用設置するとELBが誤作動するって本当?

結論から言いますとELB接地とD種接地を共用接地としてもELBの動作には影響せず誤作動はしません。

ELBの原理は、機器内部のZCTで相と相の電流値の差異を検知します。

クランプメーターと同じ原理ですね。

ZCTは回路の電流値を測定しています。

漏電し地絡した時に初めて地絡分の電流が増幅しZCTが差異を検知します。

仮にMCB回路(ELBで保護されていない回路)が地絡したとしても、ELBの回路は地絡していないので地絡電流はELBの回路には直接影響しません。

(ELBは地絡していないので回路と接地体は絶縁された状態となっている)

もちろんELB回路が地絡した場合は電流差異が生じますので正常に動作します。

ELB共用が誤作動しない根拠の回路

最後に

水気のあるELB回路は特に危険ですので保安を目的にそれぞれの接地を単独にしていることがわかりましたね。

まとめ

・内線規程に共用接地してはいけないことが明記されている。

・ただし接地抵抗値2Ω以下の場合は可。

・共用禁止は回り込みによる感電防止。

・MCB回路も回り込むがELB回路は特に危険なため。

・共用接地によるELB誤作動は基本的には起きない。

それではまた、ご安全に!

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