地絡電流の経路や大きさを表す回路図に「対地静電容量」という単語が出てきますよね。
よく見ると、何やら地面と電線の間の空気の部分に線が引かれていて、そこが回路の一部のように書かれています。
高圧電路の地絡電流は、対地静電容量を経由して電路に帰還するといった感じで説明されていると思います。
結論としては、この空気の部分がコンデンサを形成し、回路として電流が流れることになります。
かなり疑問になる部分であると思いますので、今回はわかりやすく解説していきたいと思います。
対地静電容量を理解するにはコンデンサの理解から
コンデンサとは
対地静電容量を理解する上で、コンデンサを理解することはとても重要です。
コンデンサとは、電源につなげると電気を蓄えることができる電気回路の部品のことです。
コンデンサは、直流の電源を電子として貯めたり放出できる特徴があり、その特徴を利用して電子回路では3大受動部品として重要な役割を担っています。
また、電気工事で身近なところですと高圧真相コンデンサもコンデンサですね。
力率改善という役割のため、電子部品とは大きさも役割も全く違いますが基本の構造は同じです。
コンデンサの構造
コンデンサは、基本的には金属板などの導電体の間に、電気を通さない絶縁体をはさんでつくります。
この金属板を極板といい、コンデンサの二つの極板に電源を繋げることによって使用します。
直流電源においては、電源を繋いで電圧を加えると、各極板にプラスとマイナスの電荷が帯電します。
コンデンサ間を電荷が移動できないのでこの帯電した電荷を電気として充電できます。
ここまでがおおまかにコンデンサの説明になりますが、対地静電容量を理解するために重要な部分は、誘電体の間に絶縁体を挟んでいるという部分です。
対地静電容量はおっきなコンデンサ
対地静電容量は、電線と、電線と地面の間の空気と、地面がコンデンサを形成したものになります。
電線は、銅やアルミニウムなどの低効率が非常に小さい物質でできたものですので、電気を通す「導体」となります。
それに比べると大地(地面)の低効率は大きいですが、断面積が途方もなく大きいので電線と同じく「導体」となります。大地は接地でお馴染みですよね。
一方、空気は電気を通さないので「絶縁体」です。
電線と大地間で、絶縁体を二つの導電体が挟み込む関係となっており、これはコンデンサの構造と同じです。
そのため、電線と大地間には静電容量が存在し、これが対地静電容量となります。
対地静電容量は、おおきなコンデンサということです。
交流はコンデンサを流れる
コンデンサは、直流を通さず交流を通すという性質があります。
コンデンサの誘電体の間は絶縁体ですので、電気を通さないというのは想像できますが、交流を通すということはどういう理由なのでしょう。
これは、空気などの絶縁体を絶縁破壊して電気が流れているわけではありません。
交流の性質に起因しているのですが、交流は正弦波交流といわれるように電圧波形を見ると、電圧がプラス、マイナスと規則的に変化しています。
正弦波の波は、周波数と同じですので50Hzの地域であれば、1秒間に50回プラスとマイナスが反転します。
つまり、電子の流れも規則的に反転していますので、電極に帯電する前に電子は移動してしまいます。
電流の動きはというと、こちらも規則的に向きが変化しています。
電流により、コンデンサの両極板に発生している電界の向きも交互に切り替わり、電界の変動は変動する磁界を発生させるので、これは電流が流れていることと同様となります。
このような理由から、交流はコンデンサを通すといわれています。
高圧回路が地絡した場合は、A種接地から大地を経由して対地静電容量を伝って送電線などの回路に帰還するといった回路図をよく見ると思いますが、コンデンサは交流を通すためこのような回路図が成立します。
対地静電容量は、交流の場合は電荷の移動により見かけ上空気中に電気が流れます。
まとめ
まとめ
- コンデンサは絶縁体を導体でサンドイッチしている
- 対地静電容量は「電線」「空気」「地面」から構成される大きなコンデンサ
- コンデンサは交流を通す
- 対地静電容量は電路となり、見かけ上空気中を電気が流れる
対地静電容量は、電験の問題でも度々でてきますし、概念の理解はとても重要かと思います。
実務においても、耐圧試験器の選定や、地絡電流の流れかたを理解するのに必要ですのでおさえておきましょう。
それではまた、ご安全に!