絶縁抵抗計(メガー)はメーカーや種類がとても多く、どれを購入すればよいかわからなくなりますよね。
単純なスペックの違いもありますが、職種や工事内容により測定電圧や必要な機能が違ってきます。
そのため、一概にこれがおすすめとは言えないのですが、この記事ではそれぞれの種類のおすすめを紹介しています。
自分が普段よく測定する回路を事前に把握して、選んでみましょう。
絶縁抵抗計とは
絶縁抵抗計とは、現場では「メガー」とよく呼ばれ、絶縁抵抗値の単位であるMG(メガオーム)からそのように呼ばれるようになりました。
電線を新規に配線した後や、電線を一度離線したり接続したりした後のブレーカー投入前に、電路の絶縁抵抗値を測定し、電線の品質に問題ないかを確認する目的で使用されます。
絶縁抵抗値とは、電線が電線の外部とどの程度絶縁されているかを抵抗値にて表したものです。絶縁とは断ち切られているという意味ですね。
電線と外部との絶縁が悪くなると、電流が外部へ漏れ出て漏電となり、火災や感電の原因となります。
通常の電線であれば絶縁抵抗値は良好ですが、ケーブルの被覆や絶縁体が外部からの物理的な影響、雨、日光などによって劣化をすると絶縁が少しずつ悪くなり、絶縁不良から漏電へと繋がります。
このように、ケーブルの絶縁診断を事前に確認するために、絶縁抵抗計を使用して絶縁抵抗値を使用します。
実際には、絶縁抵抗計から測定する電路に実際に電圧を印加し、アース側のリード線にどの程度電流が漏れ出ているかをみて絶縁抵抗値が計測されます。
絶縁抵抗値は、電気設備技術基準にて規定値が定められており、それ以上の数値を満たす必要があります。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 | |
300V以下 | 対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう。以下同じ。)が150V以下の場合 | 0.1MΩ |
その他の場合 | 0.2MΩ | |
300Vを超えるもの | 0.4MΩ |
電気設備に関する技術基準を定める省令 第五十八条より抜粋
絶縁抵抗と絶縁抵抗計の使い方については下の記事に詳しく解説してますので参照ください。
絶縁抵抗計の選び方
アナログかデジタルか
・アナログタイプ
アナログタイプはメーターの針が左右に動き、針が止まった位置で測定値を読むタイプです。
初期値は∞の位置(一番良好な状態)に針がありますので、ほぼ動かなければ良好、0に近づくほど絶縁不良という判定ができます。
動きで直感的に確認できますので、細かい数値を必要としない人や初心者の方におすすめです。
針の位置の判断ですので、細かい数値を読み取れない点がデメリットですが、低いレンジの方はメーターが細かくなっていますので良否判定はしっかりできます。
・デジタルタイプ
デジタルタイプは、ディスプレイに測定値がそのまま表示されますので、正確な測定値を読み取ることができます。
測定値を記録したい方にはおすすめです。
デメリットとしては、絶縁抵抗値の判定基準を覚えておいて数字で判断しないといけないので初心者の方には少し難しいかもです。
その場合は、規定値より低い測定値になった場合に警告してくれる良否判定機能付きがおすすめです。
測定開始がレバー式かボタン式か
基本的には電路測定側のプローブに測定開始ボタンが付いていますので、プローブを当てるときにボタンを押す方法が一般的ですが、回路数がとても多いく連続して測定する場合は、測定ボタンをON状態で固定して使用することがあります。
その場合は、本体にある測定開始を操作することになりますが、この部分がレバーを引くタイプか、ボタンを押して回転するタイプがあります。
ここの仕様は、メーカーごとに決められているようで、正直あまり重要な部分ではありませんので好みになります。
測定電圧は多レンジがおすすめ
ここが一番の選ぶポイントではないでしょうか。
基本的に、特定の機器しかメンテナンスしないという方を除いて、複数の回路を測定する場合が多いと思うので多レンジタイプがおすすめです。
測定対象の回路によって測定電圧が変わりますので、自分がどの回路を測定したいかを把握しておきましょう。
50V・・・電話機器など、既存コンセント回路
125V・・・単相100V、単相200V
250V・・・三相200V
500V・・・三相400V回路、100Vや200V回路も機器仕様書や工事仕様書で指定された場合
1000V・・・高圧回路(推奨されない)
5000V・・・高圧回路に推奨
50Vレンジは、電話機器や既存のコンセントに機器が接続されている場合に、機器を破損させないために使用されます。
125Vレンジは単相の回路、250Vレンジは動力の回路に使用し、500Vレンジは400V回路に使用します。
また、500Vレンジは、新設物件でより安全側にみるために高い電圧を印加して判定する場合があります。
工事仕様書や機器仕様書で500Vを指定される場合がありますのでその場合は500Vレンジを使用します。
1000Vレンジと5000Vレンジは高圧回路専用となりますが、高圧回路に1000Vレンジは推奨しません。
理由は、高圧電路の不良で継電器にてPASが開放された後、1000Vレンジにて絶縁抵抗測定し、良判定であったため再投入したら波及事故になったという事例があるためです。
印加電圧が使用電圧と乖離していたため、正しい測定値ではなかったのです。
そのため、高圧絶縁抵抗測定には5000Vレンジを推奨します。
また、高圧メガーについてはケーブルの切り離しが必要ないG接地端子方式に対応しているものをおすすめします。
太陽光に使える活線メガー
太陽光対応の絶縁抵抗計は、活線状態の回路においても測定することが可能です。
太陽光発電設備の点検や完了検査をする際に、太陽光発電側(直流部分)は活線となりますので、通常の絶縁抵抗計では測定できません。
厳密には、回路を短絡させたり、太陽光が発電していない夜間であれば測定できなくはないですが、何も考えずに活線で測定できる「太陽光対応」の絶縁抵抗計はおすすめです。
もちろん無電圧の状態で一般的な絶縁抵抗測定もでき、太陽光発電設備工事以外の一般回路にも使用できますのでいくつも計器を持つ必要はありません。
太陽光発電設備工事を請け負う方は是非持っておきたいタイプです。
オートディスチャージ機能
オートディスチャージ機能は、残留電荷を放電する機能です。
測定にて印加した電圧が電線やコンデンサに蓄積される場合がありますので、そのままですと感電の危険性がありますので放電する必要があります。
放電は電線などでも実施可能ですが、オートディスチャージ機能は測定後そのままプローブを接続し続けるだけですので安全に放電できます。
実際には、一般的な低圧回路ではあまり残留電荷の心配はないですが、印加電圧の大きい高圧絶縁抵抗測定の後や、低圧回路においても接地コンデンサなどの大きめのコンデンサが接続された回路では残留電荷が溜まりますので放電しましょう。
高圧メガーを行う方や、接地コンデンサが接続された非接地の物件を担当する方はおすすめです。
bluetooth転送機能の有無
bluetooth機能は、専用の無料アプリを使用してスマホやタブレットにデータを記録して、パソコンにもCSV形式でデータを送信することができたり、測定中の測定値をリアルタイムでスマホやタブレットに表示することができます。
施工管理業務は、現場対応の中、事務作業もこなす必要がある多忙な業務ですが、この機能があれば報告書や記録表作成の業務効率化や人員省力化を図ることができ、その上入力ミスといったヒューマンエラーもなくすことができます。
また、竣工検査などの立会いの際は、表示値をタブレットに表示することで、お施主様や設計監理の方が見やすいですし、施工写真撮影もしっかりと数値を撮影できます。
測定業務の多い、施工管理や電気主任技術者さんには大変おすすめです。
おすすめの低圧絶縁抵抗計
共立電気計器MODEL3146A
【仕様】
アナログタイプ
測定レンジ・・・50V、125V
外形寸法・・・90(L)×137(W)×40(D)mm
質量・・・約340g
電源/使用電池・・・単3形乾電池R6(1.5V)×4
オートディスチャージ機能付き
電圧計機能付き(AC)
スケール照明付き
測定電圧は2レンジのみの最低限仕様です。
最小限機能ということもあり、この型のメガーの中では小型軽量になります。
また、暗い場所に便利なスケール照明付き。
レンジは125Vまでなので、住宅専門に工事する電気工事士さんや、DIY使いにおすすめです。
日置電機 IR4031
【仕様】
アナログタイプ
測定レンジ・・・50V、125V、250V
外形寸法・・・ 92[H]×152[W] × 40[D] mm
質量・・・約420g
電源/使用電池・・・単3形アルカリ乾電池 (LR6) ×4,
LED照明メーター
活線警告赤色LED付き
本機は、50V〜250Vまでの測定レンジがありますので、三相3線200Vの測定までは可能です。
メーター部分は白色の照明が付きますので暗い場所でも測定可能ですし、活線警告LEDも付いていますので測定前のブレーカーをOFFし忘れを防止できます。
50Vの測定ができ500Vがない仕様ですので、既設物件の改修をする電気工事士さんにおすすめです。
共立電気計器 KEW3432
【仕様】
アナログタイプ
測定レンジ・・・125V、250V、500V
外形寸法・・・97(L)×156(W)×46(D)mm
質量・・・約430g
電源/使用電池・・・単3形乾電池LR6/R6(1.5V)×4
オートパワーオフ機能付き
スケール照明と測定物を照らせるLEDライト付き
125Vから500Vまで測定可能ですので、野丁場系の新築を工事する電気工事士さんにおすすめです。
レンジをOFFし忘れても、自動で電源が切れるオートパワーオフ機能付きとなります。
また、スケールのみではなくプローブの先端にもLEDライトが付いていますので、薄暗い盤内でも測定物を容易に確認できます。
日置電機 IR4052-50
【仕様】
デジタルタイプ
測定レンジ・・・50V、125V、250V、500V、1000V
外形寸法・・・92 [H] ×152[W] × 40[D]mm
質量・・・約440g
電源/使用電池・・・単3形アルカリ乾電池(LR6) ×4
オートパワーオフ機能付き
活線警告赤色LED付き
オートディスチャージ機能付き
電圧測定機能(交流/直流自動判別)
コンパレータ(良否判定機能)
Bluetooth対応
50V〜1000Vまで測定でき、その他多くの機能が付いた多機能メガーです。
低圧回路であればどこでも対応でき、新築改修問わず使用できますね。
本機は良否判定機能が付いていおり、ディスプレイのLED表示で絶縁抵抗値の基準値を下回ると警告してくれるため、初心者の方にもわかりやすくなってます。
Bluetoothにも対応しているため、別売りのワイヤレスアダプタを使うことによりデータをやりとりできます。
電気工事士にはもちろんですが施工管理の方や電気主任技術者などの保安管理の方、職種問わずおすすめできます。
共立電気計器 KEW3552BT
【仕様】
デジタルタイプ
測定レンジ・・・50V、125V、250V、500V、1000V
外形寸法・・・97(L)x156(W)x46(D)mm
質量・・・約490g
電源/使用電池・・・単3形乾電池 LR6/R6(1.5V)4本
オートパワーオフ機能付き
電圧測定機能付き(AC,DC自動判別)
オートディスチャージ機能付き
コンパレータ(良否判定機能)
スケール照明と測定物を照らせるLEDライト付き
メモリ機能
赤外線通信機能
Bluetooth対応
本機はスペックの通り、測定電圧も低圧側は全対応で、機能も豊富なためハイスペックのメガーとなります。
メモリ機能は、最大1000件のデータを機器で記録し、別売りのUSBでPCに送信できます。
Bluetoothにも対応してるためデータ処理には困りません。
コンパレータ機能はもちろんですが、メモリゲージが表示されますので、アナログタイプのように直感的に測定値の確認ができます。
多機能ですので職種問わずおすすめです。
おすすめ小型の低圧絶縁抵抗計
三和電気計器 HG561H
【仕様】
デジタルタイプ
測定レンジ・・・15、50V、100、125V、250V、500V
外形寸法・・・H139×W91×D29mm
質量・・・約230g
電源/使用電池・・・LR03(単4形アルカリ)×4
オートパワーオフ機能付き
電圧測定機能付き(AC,DC自動判別)
オートディスチャージ機能付き
コンパレータ(良否判定機能)
こちらは、絶縁抵抗計には珍しいカード型タイプです。
高機能なカードテスターのようなイメージです。
小型ですので胸ポケットにもすっぽり入り、持ち運びに便利です。
小型ですが機能が豊富で、他の機種に引けを取りません。
測定方法は、アース側のリード線はワニグチになっており、測定側は本体に固定されていますので、本体を測定物に近づけるような感じです。
奥まって見難い部分でも、測定値のホールド機能がありますので問題ないですよ。
また、別売りのオプション商品も豊富ですので、電圧測定に使いたい場合はプローブやリード線を取り替えてみてもいいですね!
15V、25Vレンジがありますので、電子部品が繋がっている回路を止むを得ず測定する際に役立ちます。
腰道具のポケットにも入りますので電工さんにもおすすめです。
共立電気計器 KEW6041BT
【仕様】
デジタルタイプ
測定レンジ・・・50V、125V、250V、500V
外形寸法・・・232(L)× 51(W)× 42(D)mm
質量・・・約230g
電源/使用電池・・・単3形乾電池LR6(1.5V)× 2
オートパワーオフ機能付き
電圧測定機能付き(AC,DC自動判別)
接地抵抗測定機能(2極法)
オートディスチャージ機能付き
コンパレータ(良否判定機能)
活線警告機能
ディスプレイ照明と先端照明付き(照度感知自動点灯)
Bluetooth対応
こちらも絶縁抵抗計では珍しいペン型タイプです。
小型で持ち運びに便利な上に、電圧測定と接地抵抗測定機能を備え、更にBluetooth対応という高機能な絶縁抵抗計です。
測定レンジも豊富でその他機能もいうことなしですね!
本体の先端に測定部がありますので、本体を移動して測定箇所に当てていくといった感じです。
L型プローブなどのオプション品もありますので、測定しにくい箇所ではチェックしてみてください。
おすすめの太陽光対応絶縁抵抗計
日置電機 IR4053
【仕様】
デジタルタイプ
測定レンジ・・・50V、125V、250V、500V、1000V
外形寸法・・・159 W × 177 H × 53 Dmm
質量・・・約600g
電源/使用電池・・・単3形アルカリ乾電池 (LR6) ×4
オートパワーオフ機能付き
電圧測定機能付き(AC,DC自動判別)
オートディスチャージ機能付き
コンパレータ(良否判定機能)
ディスプレイ照明と先端照明付き
太陽光発電対応
こちらは、太陽光発電の直流活線部を測定できる活線メガーです。
もちろん普通の絶縁抵抗計としても使用でき、機能も電圧測定やオートディスチャージ機能など十分に備えられています。
太陽光発電設備工事をされる方は必須となりますのでチェックしてみてください。
共立電気計器 KEW6024PV
【仕様】
デジタルタイプ
測定レンジ・・・(絶縁抵抗250V、500V、1000V)(太陽光絶縁抵抗500V、100V)
外形寸法・・・84(L)×184(W)×133(D)mm
質量・・・約900g
電源/使用電池・・・単3形アルカリ乾電池LR6×6
オートパワーオフ機能付き
電圧測定機能付き(AC,DC自動判別)
オートディスチャージ機能付き
コンパレータ(良否判定機能)
ディスプレイ照明と先端照明付き
太陽光発電対応
USB転送機能
こちらも太陽光発電設備対応の絶縁抵抗計になります。
一般の絶縁抵抗と太陽光用でレンジが分かれており、一般は250V〜となります。
機能としては、一般的な機能にプラスして、1000件までの測定値を記録できるメモリ機能とUSBにてデータを移動できる機能が備わっています。
おすすめの高圧絶縁抵抗計
共立電気計器 KEW3125A
【仕様】
デジタルタイプ
測定レンジ・・・250V、500V、1000V、5000V
外形寸法・・・177(L)×226(W)×100(D)mm
質量・・・約1.9kg
電源/使用電池・・・単2形アルカリ乾電池 LR14 (1.5V) ×8本
オートパワーオフ機能付き
電圧測定機能付き(AC,DC自動判別)
オートディスチャージ機能付き
ディスプレイ照明
低圧の250Vから高圧5000Vまで印加できる、高圧メガーのスタンダードタイプです。
250Vレンジもありますので、低圧動力回路の測定が可能です。
また、高圧回路の絶縁抵抗測定において、高圧機器が接続された状態で高圧ケーブルのみの絶縁抵抗値を測定できるG接地端子方式にも対応しています。
オートディスチャージ機能付きですので、電荷の溜まりやすい高圧回路の放電も問題ありません。
事故防止のため6.6kv高圧回路には5000Vでしっかりと測定しましょう。
年次点検を行う電気主任技術者の方、高圧ケーブルを新設で工事する電気工事士の方は必須のメガーです。
まとめ
まとめ
- DIYや住宅専門工事の方は125Vまでのレンジで十分
- 高圧受電している現場を担当する電気工事士や施工管理の方は500Vレンジまでが必須
- 業務に追われる施工管理業務の方は、値段が高いがBluetooth対応品がおすすめ
- 電気設備技術者などの高圧設備を含めた管理をする方は、高圧メガーと低圧メガーの2台持ち必須