今回は配線工事の基本、強電と弱電との離隔について解説していきます。
結論から言ってしまうと屋内配線は直接接触しなければ問題ありません。
ただし高圧以上になると離隔距離が定められているので注意が必要です。
もし接触してしまった場合の問題点、離隔をとる理由を根拠規定も含めて説明していきます。
クリックできる目次
強電と弱電の区分
まず強電と弱電の違いをはっきりとしておきましょう。
曖昧ですと現場でどのケーブル同士を離隔すればいいかわからなくなってしまいます。
弱電とは
結論として、使用電圧48V以下の電路は弱電として扱って差し支えありません。
【用語の定義】
十五 弱電流電線 弱電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体(第181条第1項に規定する小勢力回路の電線又は第182条に規定する出退表示灯
引用:電気設備技術基準の解釈
弱電については電技にて定義されています。
曖昧ですが内線規定では少し具体的に定義されています。
弱電流電線とは、電信線、その他弱電流電気の伝送に使用する裸線、被覆線、ケーブルなどをいうほか小勢力回路の施設及び出退表示灯の施設に規定する電線をいう。
引用:内線規程
弱電は情報の伝送や制御のための信号を送るために使用されます。
また、規程内に記載のある「小勢力回路」は絶縁変圧器にて60V以下に降圧された回路をいいます。こちらはリモコンスイッチの信号線やチャイムに使用されます。
基本的には情報の伝達ですので物を動かしたりはしないので大きな電流が必要ありません。そのため小容量、低電圧とし発熱や感電の心配がなく安全に使用できるようにしているのです。
具体例としては「スピーカー、火災報知器、中央監視、電話、LAN」などが弱電の扱いとなります。
使用するケーブルは信号用のCPEVや警報用のAEケーブルなど大きな電流が流れないため比較的細い線が使用されます。
弱電のイメージとしての捉え方は「情報・通信・制御」の伝達で問題ないのですが、制御電源で100V,200Vを使用したりランプの電源に24Vを使用したりと一概に用途として区分するには無理がありますので、電圧で区分するのが一般的です。
電技や内線規程でははっきりと電圧についての定義はされていませんが、「小勢力回路」に着目し60Vを境界とするようになりました。
そして、60V以下では現状の使用電圧としては48V以下しか存在しないので弱電は48V以下として差し支えないということです。
強電とは
強電は結論として使用電圧100V以上の電路となります。
強電は法令や内線規程で定義されているわけではなく、弱電の対義語として便宜的に使われる造語です。
学問分野でも使われるようですが、電気工事業界でも強電と弱電で区別して使用されます。
強電のイメージとしては「電源、エネルギー、電力」です。機器を動かす、電気をエネルギーとして使うといったイメージです。
弱電は情報を伝達するのに対して強電は動力源やエネルギーを輸送します。
具体例としては「コンセント、照明器具、モーター、各機器の電源」が強電の扱いとなります。
使用されるケーブルは一般的な負荷でしたらVVFケーブル、幹線などの大容量電路はCVやCVT、高圧電路になれば高圧CVTと最低でも2sq以上の比較的太いケーブルが使用されます。
明確な区分方法は使用電圧100V以上として差し支えありません。
現状、強電の使用電圧としては100Vが最低となります。注意していただきたいのが「使用電圧」ですから電圧降下した回路が例えば99Vだからといって強電でなくなるとはなりません。
強電と弱電を離隔する理由
混触の防止
第六十二条
配線は、他の配線、弱電流電線等と接近し、または交さする場合は、混触による感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
引用:電気設備技術基準
離隔の一番の目的は条文の通り強電と弱電の接触による混触を防止する為です。
例えば強電側の地絡により弱電流電線との混触が発生した場合には弱電流電線には通常流れない過電圧が加わり、弱電機器の破損や機器を使用していた人が感電する危険性があります。また、弱電流電線は強電を流せるような許容電流値がなく細いため、電流の発火や火災の原因になります。
誘導障害の防止
強電のケーブルには充電中は常に磁束を発生しています。
そのため、弱電線と交差または平行にケーブルが走っている場合は電磁誘導作用により弱電ケーブル側に誘導電流が流れ機器への障害(ノイズ等)が発生します。
強電と弱電の離隔距離
低圧配線との離隔
冒頭でも申し上げた通り両者の離隔距離に規程はなく「直接接触しないこと」が条件となります。
配線と他の配線などとの最小離隔距離
備考省略
引用:内線規程
何センチ離さなくてはいけないということではなく、触れていなければいいので保護管を設けたりセパレーターで区切りをいれるといった施工も有効となります。
ちなみにがいし引き以外の配線と光ファイバーケーブルの欄は斜線が入っていますが、がいし引き以外の配線と光ファイバーケーブルは接触しても問題ないということです。
これは光ファイバーケーブルの中はガラスでできていて電気を通さない絶縁物なので、混触の危険性がないと考えられています。また、光ファイバーケーブルは電気ではなく光を伝達することから強電によるノイズの影響を受けないことも理由となります。
高圧配線との離隔
〔備考1〕記号の意味は、次のとおりである。
(a)は、低圧屋内配線が裸電線である場合は、30cm以上とすること。
(b)は、高圧屋内配線を耐火性のある堅ろうな管に納め、又は相互の間に堅ろうな耐火性の隔壁をもうけるときは、この限りでない。
(c)は、相互の間に絶縁性及び難燃性のある堅ろうな隔壁を設ける場合は、30cmとすることができる。
以下略
引用:内線規程
低圧の強電と弱電線は接触しなければ問題ありませんでしたが、高圧電路の場合は基本的に15cm以上の離隔が必要となります。
明確な数字で規程されていますので注意が必要です。
また、強電の低圧と高圧も離隔する必要があります。
強電と弱電の離隔方法
①保護管
高圧との離隔はしっかりと距離を離さないといけませんが、低圧との離隔の場合接触しなければよいので間に何かを介在させるというのが有効な手段となります。
天井裏で強電と弱電が交差してしまう場合はPF管などの保護管やゴムシートを入れてあげれば接触を防げます。
この場合、混触防止ですので樹脂製のものを使用する必要があります。保護管は強電、弱電どちらに入れても問題ありません。
また、後からでもPF管の場合はカッターで割りを入れれば設置可能です。
②セパレーターを使用する
次に2連のコンセントボックスにコンセントとテレビやLANが一緒に設置される場合や、同一のケーブルラックに強電と弱電が敷設される場合などはセパレーターを強電と弱電の間に設置します。
セパレーターで壁のように仕切れば接触する心配はないですよね。
この方法は、内線規程でも「隔壁を設けることが望ましい」として推奨しています。
ボックスやケーブルラックのセパレーターは各メーカーからも販売されています。
強電と弱電を同一のダクトや配管に収める場合
内線規程3102-7-2に同一のダクトや配管に収める方法が規程されています。
同一の金属ダクト、フロアダクト、セルラダクト内
金属ダクト配線、フロアダクト配線又はセルラダクト配線により施設する場合は、電線と弱電流電線との間に堅ろうな隔壁を設け、かつC種設置工事を施したダクト又はボックスの中に電線と弱電流電線を納めて施設することが可能です。
ポイント
・電線と弱電流電線との間に堅ろうな隔壁(セパレーター)を設ける。
・金属製部分にC種接地工事を施す。
同一の電線管、線ぴ内
また、同一の配管や線ぴ(モール)の中に電線と弱電流電線を収める方法も内線規程に記載されています。
基本的には強電と弱電の配管は別々で敷設することが望ましいですが、やむおえない場合に採用してみましょう。
ポイント
・弱電流電線に絶縁電線と同等以上の絶縁効力のあるものを使用する。
・配線との識別が容易にできるものを使用する。
・弱電流電線はリモコンスイッチ用や保護継電器用に限る。
・電話線やインターホーン用弱電流電線は含まれない。
・C種設置工事を施した金属製の電気的遮へい層(シールドアース)を有する通信用のケーブルを使用する場合は弱電流電線の種類に定めはない。
絶縁電線と同等以上ということは裸線でなければOKです。被覆のない電線やケーブルは普通使いませんのであとは識別ですが、強電と弱電は基本違うケーブルを使いますので識別は容易にできると思います。
以上から、内線規程では一応リモコンスイッチ用や保護継電器用の線は同一の配管等に納めてよいということです。
それ以外の弱電流電線もシールド付きのケーブルを使用し、シールドにC種接地を施せば同一配管に納めてOKということです。
まとめ
まとめ
- 屋内配線は接触しなければOK
- 弱電は使用電圧48以下、強電は使用電圧100V以上
- 高圧電路は明確に距離が定められている
- 離隔の目的は混触と電磁誘導障害の防止
- 同一のダクトや配管に入れる方法もある
いかがでしたでしょうか。
くれぐれも現場では強電と弱電を一緒に捕縛することのないようにしましょう。
とはいえ接触している現場もあり100%の施工は難しいというのが現状でしょうか。
最後に紹介した同一配管に収める方法などを状況に応じて上手く対応していただきたいと思います。
まなさんの現場のお役にたてれば幸いです。
それではまたご安全に!