真空遮断器は、高圧受変電設備を構成する重要な機器の一つですが、どんな機器でどのような役割があるのでしょう。
今回は、真空遮断器(VCB)について詳しく解説していきます。
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真空遮断器(VCB)とは
真空遮断器(VCB)の特徴
真空遮断器は、高圧受変電設備の機器の一つで電気室やキュービクル内に設置されています。
キュービクルの高圧受電盤の扉を開けてみると、正面に大きなレバーのある機器があります。それが真空遮断器(VCB)です。(電動式の場合はレバーがありません。)
真空遮断器(VCB)は、遮断器(CB)のうちの一つで、遮断器は電路の遮断が主な機能です。
遮断器(CB)は他に、油入遮断器(OCB)、ガス遮断器(GCB)、磁気遮断器(MBB)があります。
それぞれ、油やガスなど、接点が開極する際に発生するアークを消弧する物質により製品が異なります。
真空遮断器(VCB)は、高真空によりアークを消弧します。
真空は絶縁性能が優れているため、他の絶縁体に比べて電極同士の利確距離を小さくすることができるので、小型、軽量化が可能となります。
また、油等の燃える物質を使用していないため、火災の危険がないため、防災面でも優れています。
従来は、油を使う油入遮断器(OCB)が多く使われていましたが、上記の小型、軽量、不燃化などの理由から、現在は真空遮断器(VCB)が主流となっています。
そのため、最も一般的な遮断器(CB)として普及し、ほとんどの受変電設備では真空遮断器(VCB)が採用されています。
真空遮断器(VCB)の設置位置
真空遮断器は、断路器(DS)の二次側に設置されます。
受変電設備の構成として、負荷電流を遮断できる真空遮断器(VCB)で安全に高圧電路を遮断し、接点が目視できる断路器(DS)により短絡設置器具の取り付けと確実な電路開放という、それぞれの特徴を活かした役割を担った2段構えとなっています。
負荷電流を遮断できない断路器(DS)のために、電流を遮断できる真空遮断器(VCB)が二次側にあるということを覚えておきましょう。
真空遮断器(VCB)の機能と役割
負荷電流の遮断
真空遮断器(VCB)は、断路器(DS)と違い、「負荷電流」を遮断することが可能です。
負荷電流とは、通常時に機器を使用する際に使われる電流のことです。
電流が流れた状態で断路器により開放してしまった場合、接点がむき出しですので、開放した接点同士の絶縁を空気に頼ることになり、空気が絶縁破壊してアークが飛び散ります。
真空遮断器は、真空バルブという真空の密閉された部品の中に接点が収まっていますので、アークを消弧することが可能です。
そのため、稼働している建物を安全に停電させる際に、一発目の電路遮断として使われます。(PASでもよい)
開放、投入操作は正面のレバーを90度動かすだけですが、かなり硬いのので力が必要です。
事故電流の遮断
真空遮断器(VCB)は、負荷電流だけでなく、「短絡電流」と「地絡電流」を遮断することが可能です。
高圧交流負荷開閉器(LBS)の場合は、限流ヒューズを使って短絡保護をしますが、ヒューズは一度切れると交換する必要があります。
その点、真空遮断器(VCB)は繰り返し短絡電流を遮断できますので優れていますね。
短絡電流と地絡電流の保護は実は真空遮断器(VCB)単体ではできません。
これらの事故電流を検出する継電器と組み合わせる必要があります。
短絡電流の検出には「過電流継電器(OCR)」を、地絡電流の検出には「地絡継電器(GR)」(最近は地絡方向継電器(DGR)が多いです。)を組み合わせて使用します。
継電器はキュービクルの盤面に設置されてることが多く、真空遮断器(VCB)のトリップコイル(TC)へ信号線が配線されています。
事故電流を検出した場合、継電器から信号が送られ、それを受けて真空遮断器が自動で動作(開放)します。
真空遮断器(VCB)の遮断原理
真空遮断器(VCB)は、内部の高真空でアークを消弧し、負荷電流や短絡電流を遮断しますが、どのような原理なのでしょうか。
内部の接点となる電極は上下にわかれており、上の電極は「固定電極」、下の電極は「稼働電極」といいます。
接点の開閉は稼働電極が動くことにより行います。
アークを消す真空バルブは筒状になっており、その中は真空の密封状態になっています。
この真空バルブ内で、高速でアークを真空中に拡散して消滅させます。
交流の波形は正弦波という上下に波打った形をしていますよね。
真ん中の0地点を基準に、1秒間の間に周波数の回数分上下をくりかえしています。
実は、電流は0地点のとき一瞬アークは消滅します。
0地点を過ぎればアークは復活してしましますので、復活しないように真空状態にしているのですね。
余談ですが、このような理由から常に一直線波形で0地点のない直流の高電流は遮断することが困難なのです。
真空遮断器(VCB)の引き外し方式
引外しとは、遮断器の開放機構を作動させ、負荷電流を遮断するための電極開放動作を行うことです。
要は遮断する動作をするということなのですが、単にレバーを引いて手動で「切り」にすることも引外しですが、事故電流を検出して自動で行う引外しには種類があります。
検出した信号をVCBへ送る手段として、電流を使ったり電圧を使ったりします。
電流引外し方式
高圧電路が過電流継電器(OCR)の整定値以上(過電流)となった場合、変流器(CT)でそれを検出し、変流器(CT)の二次側の電流そのものを真空遮断器(VCB)のトリップコイルに送り引外します。
この方法は、コストは安価ですが、事故電流そのものを信号として使用するため、事故時の急激な電流値の変化などに対応できない等、信頼性に欠ける点がデメリットとなります。
そのため、比較的小規模な物件に採用されます。
電圧引外し方式
電圧引外し方式は、電圧を送ることで引き外す方法です。
電圧源は、回路の交流電源や蓄電池の直流電源、コンデンサ電源などが使われます。
蓄電池やコンデンサによる電源は、充電されたものを使用するため、停電した場合も安定して動作するため信頼性が高くなっています。
VCBとLBSの使い分けは?
一般的には真空遮断器(VCB)は主遮断器として使用されます。
要はメインの母線で遮断するための機器です。
高圧交流負荷開閉器(LBS)は、コンデンサや変圧器などのバンク(分岐回路)ごとに一つずつ設置されます。
分電盤で表現すると、真空遮断器は(VCB)は主幹ブレーカー、高圧交流負荷開閉器(LBS)は子ブレーカーと考えるとわかりやすいかと思います。
しかし、高圧受電設備規程の1110−5により、受電設備容量が300kVA以下の設備については、高圧交流負荷開閉器(LBS)を主遮断装置として設置することができます。
コンビニなどの小規模の高圧受電設備は、主遮断装置が高圧交流負荷開閉器(LBS)となっています。
真空遮断器のメンテナンス
真空遮断器は、高速遮断が可能なため、接点の消耗が少なく寿命が長く、保守が容易であることが特徴です。
しかし、汚損に弱く、絶縁抵抗地が低下するとトラッキング現象が発生しやすいので、年次点検などの停電できるタイミングで、ほこりを除去するなどの清掃が必要です。
また、製造後10年以上経過したものはオーバーホールが推奨されています。
古いものは、内部短絡やレバーが固着して操作できなくなることがありますので、故障して事故が起こる前に専門の技術業者に依頼することをおすすめします。