今回はKIP電線について解説していきたいと思います。
第1種電気工事士の技能試験でもKIPを使った問題が出題されますが、実際に使用される場面がふわっとしている方も多いかと思います。
高圧ケーブルと何が違うのか、どんな場所に使用されるのかなど気になるところですよね。
また、取り扱いの注意点も説明していきますので是非ご覧ください。
KIP電線とは
KIP電線の正式名称は高圧機器内配線用ゴム絶縁電線といい、ケーブルではなく絶縁電線として分類される高圧用の電線の一つです。
より線の電線でメーカーでは8sqから325sqまでラインナップされています。
素材はすずメッキ軟導線をエチレンプロピレンゴム(EPゴム)で覆った構造となっていて、必要に応じてセパレーターが胴体と絶縁体の間で使われます。
可とう性に優れているため盤内などの取り回しが容易です。また、耐熱温度は80℃と強いため、変圧器などの熱により高温になる受変電設備に使用されます。
KIP電線の使用場所
基本的には高圧キュービクル内や電気室(開放型受変電設備)の渡り線に使用されます。
キュービクルや電気室の外部からの取り込みは高圧CVTケーブル、それ以降の渡り線はKIPといった構成です。
高圧ケーブルのが外的な耐性に強く、シールドがあるため感電の心配がないといった保安面では優れていますが、狭い場所の取り回しや施工性には難があります。
その反面、KIP電線は柔らかいので取り回しが効き、接続部の端末処理も必要ないため施工性に優れています。
外からの引き込みや他のサブ変電所までの送電は高圧CVTケーブル、キュービクル内部ではKIP電線といった使われかたです。
また、KIPは電線ですので建屋内であっても天井裏を引っ張り回すなどの使い方もできません。
電線なのに露出配線されてるけど?
キュービクル式の場合は筐体に収容されているので電線は露出していないと捉えることができますが、開放型受変電設備を見てみるとKIP電線が露出して配線されているかと思います。
絶縁電線なのに露出されていていいのかな?と疑問に思いますよね?
実は受変電設備のKIP電線は「がいし引き工事」で配線することで露出してもOKという解釈となります。
電気設備技術基準の解釈に次のように記載されています。
【高圧配線の施設】(省令第56条第1項、第57条第1項、第62条) 第168条 高圧屋内配線は、次の各号によること。
一 高圧屋内配線は、次に掲げる工事のいずれかにより施設すること。
イ がいし引き工事(乾燥した場所であって展開した場所に限る。)
ロ ケーブル工事
以下略
引用:電気設備技術基準の解釈
要は高圧屋内配線はケーブルで配線するか絶縁電線の場合はがいし引き工事をしなさいということですね。
高圧電路の場合、絶縁電線はシールドがないのでがいしによる絶縁が大変重要になってきます。
また、解放型受変電設備は「乾燥した場所であって展開した場所」の条件も満たしています。
KIP電線は感電するって本当?
KIP電線は高圧ケーブルと違いシールドアースがされていないため、対地静電容量により触れると感電します。
感電する電圧は高圧系統でしたら、6600Vの対地電圧となりますので6600÷√3となり、約3800Vが人体を流れることになります。
基本的にKIP電線は人が触れる危険性のない場所に敷設することを前提としていますのでシールドされていません。
KIPの芯線と対地間でコンデンサが形成され、仮想的に交流が空気間を流れます。
(芯線ー空気(絶縁体)ー地面)
KIPと大地間に常に回路が形成されている状態ですので、KIP電線に触れるということはその回路内に人体抵抗が直列に挿入されることと同じことです。
そのため、静電誘導によりKIP電線の表面に対地との電位差が発生してる状態ですので触れると電撃を受けてしまいます。
余談ですがモールド変圧器も巻線が樹脂層で覆われていますが触ると感電するというのは同じ原理です。
受変電設備の点検や工事の際はKIP電線の表面は活線部と同じ扱いをしなければなりません。
一見被覆で覆われているので安全に見えますが、誤って触れてしまうと大事故へと繋がります。
安全なエリアと危険なエリアをしっかりと区別できるよう作業の際は高圧検電器で検電をし、活線部範囲を把握するようにしましょう。
KIPの離隔距離
下記の相互の距離を保持していること。
相互離隔距離mm 高圧母線 がいしを直接支持するフレーム・造営材 その他のフレーム・造営材 低圧母線 高圧母線 120以上 100以上 200以上 150以上 出典:高圧受変電設備規定
高圧受変電設備の施設における留意事項
KIP電線の離隔距離は上記表の通りです。
高圧母線同士は120以上と規定されていますので相間の電線同士は距離をとらなければなりません。
たまにZCTにKIPが三相まとめて通されてることがありますが推奨されません。
一応メーカーからは線間に挿入する専用セパレーターが販売されていますが、規程の距離が取れなく誘導電圧により最悪の場合相間短絡する危険性があります。
出典:泰和電気工業 ZCTセパレーター
ZCTはどうしても施工的に厳しい場合以外はシールドアースがされてる高圧CVTに通してください。
まとめ
まとめ
- KIPはケーブルではなく絶縁電線
- 絶縁電線なので筐体内またはがいし引き工事で施工
- 充電状態のKIPに触れると感電する
- 離隔確保のためZCTには通さないことを推奨