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【疑問】変圧器のB種接地はなぜ地絡にならないの?原理を解説

high-voltage power transformer on concrete pole

高圧変圧器の1線(通常はS相ですね)にB種接地線が接続されています。

高圧変圧器を見てみると、二次側(低圧側)の真ん中の端子に緑色の電線が接続されていますよね。

これがB種接地になるわけですが、B種接地の接続部は電圧もかかっているし、負荷電流も通常流れているわけなので、接続された緑の電線にも電流が流れてしまうのではないか?もしそうなら、これは地絡?

そんな疑問をもったことはないでしょうか?

なんとなく不思議ですよね。

地絡しない理由としては「変圧器の一次側と二次側は絶縁されているから」なんです。

どいうことかを原理メカニズムを含めてB種接地の謎を詳しく解説します。

 

B種接地とは

まずB種接地とは何かを簡単に説明します。

B種接地は変圧器の低圧電路と高圧電路が混蝕した際、低圧側の電位上昇を防ぐために施されます。

低圧側と高圧側が接触してしまった場合に低圧側の電気設備の損傷や、感電、火災を防止するものです。

具体的には高圧側の電流をB種接地を経由して電力会社側の配電線に対地静電容量との閉回路により電気を逃しています。

このようにB種接地工事は低圧電路を守るために施します。

そして、このことから通常は高圧側と低圧側の電路は接触していないということがわかります。

ここが地絡していないことを理解するのに重要となります。

 

B種接地が地絡にならない理由

電流は閉回路でしか流れない

電気の大原則として、閉回路(回路が閉じている状態)でないと電気は流れません。

低圧側で考えてみても何かしらの負荷が接続され回路が閉じることによって初めて電流が流れます。

コンセントですと、何も機器を接続していない状態は、電圧はかかっていますが両極が開放されているので電流は流れません。

機器をコンセントに繋げると機器内の抵抗を負荷として回路が成立します。

B種接地線も通常状態では回路が閉じていないので電流が流れる場所がないということです。

変圧器の構造を考える

変圧器は単巻変圧器を除き、一次側と二次側が絶縁されています。

そのため、絶縁された部分で回路が途切れる形となり、B種接地の帰路がないため地絡とはならないのです。

当然ですが回路が接触されていると混蝕となり大変なことになります。

では、高圧から低圧にどのように変圧しているかというと磁束を利用し一次側と二次側に異なる電圧を発生させています。

変圧器は巻線と鉄心から構成されており、一次側の巻線と二次側の巻線に1つの鉄心を通すことにより回路に流れた電流から鉄心に磁束を発生させます。

ファラデーの法則により巻線の巻数に比例した誘導起電力が発生するため一次側と二次側の巻数を調整することにより変圧することが可能となります。

このように変圧器の一次側と二次側は電気的には繋がっていないが、磁気的に繋がっているとイメージすることができます。

変圧器絶縁イメージ

B種接地の回路図

言葉ではイメージしにくいので、図で表すと下の図のようになります。

電気は閉回路でしか流れないと言いましたが、B種接地線に電気が流れるためには地面を通じてB種接地を接続した変圧器まで戻るような閉回路ができていないと流れないということです。

下の図では変圧器が絶縁されているため回路が閉じていないことがわかります。

このように低圧電路の電流がB種接地を通ってそのまま地絡するということはありません。

 

B種接地が閉回路となる場合

ここからは余談ですが、B種接地に電流が流れる場合を考えます。

電流が流れますのでB種接地が回路を形成する場合です。

高圧と低圧が混蝕した場合

仮に高圧と低圧が混蝕してしまった場合は、閉回路となり高圧側の地絡ということになります。

経路としては高圧電路→B種接地→対地静電容量→電力会社の送電線→高圧電路となります。

この場合、GR(地絡継電器)により地絡が検出され遮断器等がトリップします。

低圧と高圧が混蝕したときの回路

B種接地は低圧地絡の帰路となっている

低圧側で見るとB種接地は他の接地(A種,C種,D種)の帰路となっています。

他の接地が大地とB種接地を経由して低圧電路に戻るという閉回路が形成されています。

そのため、低圧側の地絡電流、その他の漏れ電流はB種接地線へと流れていきます。

よく電気主任技術者さんが定期点検でB種接地にクランプで電流値を測っているところを見ますよね。

B種接地の電流値を測ることによりどのくらい漏れ電流があるかがわかります。

 

まとめ

まとめ

  • 電気は閉回路でしか流れない
  • 変圧器の一次側と二次側は絶縁されている
  • 混蝕したとき高圧側の閉回路が形成される
  • 低圧側はB種接地を帰路として地絡電流、漏れ電流の回路が形成されている

B種接地の謎についての解説でした。

B種接地は高圧と低圧の混蝕対策ですが、他にも地絡電流の帰路になっているなど重要な接地線であることがわかったと思います。

この記事がみなさんのお役にたてれば幸いです。

それではまた、ご安全に!

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