今回は中性線欠相について解説していきたいと思います。
ブレーカーの仕様を見ていると「中性線欠相保護付き」などと記載されているのを見かけませんか?
中性線欠相すると何が起きるか、どんな不具合に繋がるのか、メカニズムをできるだけわかりやすく説明していきます。
起きてしまうと不具合に繋がりますので知識としては必ず持っておきましょう。
それではご覧ください。
中性線欠相とは
中性線欠相とは単相3線式電路において、中性線(接地相、ニュートラル)が何かしらの理由により浮いてしまい回路に異常電圧を発生させ、機器を破損・焼損させてしまう現象をいいます。
小ブレーカーのような分岐回路ではなく幹線が欠相した際に起こります。
原因としては主幹ブレーカーの中性線端子部のネジの緩み等が多く、中性線の1相のみが死んでいる状況となります。
単相3線式は100V、200Vの電圧を使用できる利便性がありますが、中性線欠相による機器焼損を防ぐためにブレーカーに保護機能を備えることとなっています。
中性線欠相のメカニズム
まず単相3線式の特徴としまして、単相の100Vと200Vが取り出せることが最大のメリットかと思います。
中性線はトランスでB種接地されているため対地電圧0Vに保たれています。他のR相、T相の2相は対地電圧100VですのでR-S、S-Tで線間電圧100V、R-Tで線間電圧200Vとなりますね。
ここで中性線が欠相してしまうとどうなるでしょう。
ビスが外れていたりして、浮いてしまっているとそれは電源から切り離された状態、中性線だけなくなったと同じことになります。
そうすると、通常時は中性線0Vと対地電圧100Vの線間で100Vを取得していた100V電源回路が、R相側とT相が合わさり直列で200Vがかかってしまいます。
簡略図を見ていただくと100V機器が直列となって線間200Vがかかった状態となります。
仮に二つの100V機器の容量が500Wと40Wが繋がってるとします。
通常状態の回路の電力と電圧から二つそれぞれの抵抗値を求めていきます。
これで抵抗値が500W負荷が20Ω、40W負荷が250Ωとわかりましたので実際の負荷にかかる電圧を求めていきます。
ここでみなさん電気工事士試験で勉強した「分圧の法則」を覚えていますか?
抵抗(負荷)が直列に接続された時に、各抵抗にかかる電圧を求める法則です。
中性線欠相状態になると、電圧200Vが機器負荷にそれぞれ分圧し片方に100Vを超える過電圧が加わります。
中性線欠相保護機能付き遮断器の設置義務
1360-3
3. 単相3線式電路に施設する配線用遮断器は、中性線欠相保護機能付きのものとすること。(3605-2(分岐回路の種類)3項の規定により施設する単相3線式分岐回路の分岐過電流遮断器を除く。)ただし、当該遮断器の負荷側電路に中性線欠相保護機能を有する遮断器(配線用遮断器又は漏電遮断器)が施設されている場合にあってはこの限りでない。
1375-2
5. 単相3線式電路に施設する漏電遮断器(3605-2(分岐回路の種類)3項の規定により、単相3線式分岐回路の分岐漏電遮断器としての施設するもの除く。)は中性線欠相保護機能付きのものとすること。ただし、当該遮断器の負荷側電路に中性線欠相保護機能を有する遮断器(配線用遮断器又は漏電遮断器)が施設されている場合にあってはこの限りでない。
引用:内線規程
内線規程では単相3線式電路において、100Vの電気機器に過電圧が生じるのを防止するために、中性線欠相保護機能付きの漏電遮断器又は配線用遮断器を施設することを規定しています。
一般的に住宅の場合は、分電盤の主幹に漏電遮断器が設置されるケースが多いので、内線規程では漏電遮断器への欠相保護機能について規定しています。
内線規程の「ただし」以降の部分は、中性線保護機能のある遮断器の上位には中性線保護機能を有する遮断器を要しないとしています。
例えばローカルの分電盤の主幹に中性線保護機能を有していれば、その上位で送り出してるキュービクル配電盤の大元遮断器には中性線保護機能を要しないということです。
中性線欠相保護付き遮断器の施設方法
中性線血相保護付き遮断器には欠相を検出するリード線が設けられています。
このリード線を分電盤の幹線中性相に取り付けることによって欠相による過電圧を検出することができます。
取り付け位置ですが幹線(銅バーなど)の末端となります。
過電圧の検知範囲はリード線取り付け位置より電源側となりますので取り付け位置は注意が必要です。
リード線の延長については各メーカーによって違いがありますので取扱説明書しっかりと読んでください。
中性線欠相による不具合の体験談
実際に私が体験した事象を紹介いたします。
ビル停電工事のため、複数のテナント分電盤に仮設発電機からキャプタイヤケーブルにて電源を供給していました。
発電機の一つのブレーカーから複数のテナント分電盤に供給しており、本設から仮設の切り替えは営業時間の関係からテナントによってまちまちでした。
そのため、発電機は動かしながら他の分電盤には供給しつつ、営業が終わったテナントから順番に切り替えを行う必要があったのです。
発電機から分電盤までの間はブレーカーを設けていなかったので活線作業になりますが、分電盤への接続キャプタイヤケーブルは2m程のものでコネクタで本線に接続していたので、活線でもコネクタを外すことで問題なく作業することができます。
そして、切り替えの時間になったので、分電盤の主幹ブレーカーを遮断し、仮設のキャプタイヤケーブルを順番に外して、本設へと無事切り替え作業が終了しました。
しかし次の日の朝テナントから部屋が停電していると連絡を受け駆け付けたところ、ある部屋に私が認識していなかった分電盤があり、そこの主幹ブレーカーが中性線欠相保護機能によりトリップしていたのです。
実は、仮設の切り替えを行なった分電盤の主幹ブレーカーの一次側から違う分電盤へと幹線が渡っていたんですね。
おそらく、キャプタイヤケーブルのコネクタを抜く際に、S相(白)を一番先に抜いてしまい中性線欠相になったと予測されます。
ブレーカーの保護機能がなかったら、テナント内の機器が損傷していました。
停電でテナント様には迷惑をかけましたが、中性線欠相保護に助けられた形となります。
「仮説側にブレーカーをつけていなかった」「コネクタを抜く順番を気にしていなかった」「仮設切り替え後に部屋の状況を確認しなかった」など反省点は多くあります。
このように、幹線にコネクタを使うことは稀かと思いますが、参考にしてみてください。
まとめ
まとめ
- 中性線欠相により異常電圧が発生
- 内線規程により欠相防止遮断器設置が規程されている
- リード線は幹線の末端へ
いかがでしたでしょうか。
中性線欠相のメカニズムが理解できたかと思います。
また、基本的に分電盤の主幹は欠相防止をつけることとされていますので盤を設置する際は確認してみてください。
こちらの記事がみなさんの現場のお役に立てれば幸いです。
それではまた、ご安全に1