公共工事とは、警察署や官庁などの税金で運用されている施設の工事や、道路やなどの社会インフラの整備等、国や自治体が施主となり、工事費用が税金や公的費用から発注される工事をいいます。
「公共工事は書類も施工管理も厳しい」そんなイメージはありませんか?
公共工事では、設計図書や仕様書だけでなく、適用される工事共通仕様書に基づいた「公正かつ適正な施工」が求められます。
本記事では、電気工事現場における公共工事の特有ルールと、トラブルを防ぐための留意点を分かりやすく解説します。
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現場特有ルールは「入札仕様書」にある
公共工事は、一般的には入札方式となっており、入札にあたり発注者側から「入札仕様書」が開示されます。
入札仕様書は、現場のために作成された、現場特有の資料となり、入札者はこれをもとに提案や見積書作成を行います。
基本的には、建物概要や発注者側が要望する工事仕様が詳細に記載されています。
その他にも、提出物や技術者配置の条件、施工条件等が記載されていますので、工事落札後も都度内容を確認しながら工事を進める必要があります。
【入札仕様書の内容】
・建物概要
・工事仕様
・配置技術者条件
・業務内容
・提出書類
・準拠すべき基準等
・施工条件、安全対策
・検査内容
・守秘義務の内容
現場特有ルール的な資料となりますので、わからないことがあったらまずは入札仕様書をチェックです。
曖昧な記載の仕方をしてる部分もありますので、その場合は発注者側の担当者に確認するとよいです。
公共工事の「基本」は仕様書にある
公共建築工事標準仕様書
公共工事が民間工事と最も異なるの部分は、「工事共通仕様書」の遵守です。
入札仕様書の「準拠すべき基準」に記載されていることが多いですが、公共工事は国土交通省が監修する「公共建築工事標準仕様書」の内容を遵守する必要があります。
電気工事の場合は電気設備編になります。
改修工事の改修工事の場合は「公共建築改修工事標準仕様書」の内容を遵守します。
また、施工図や設計図等の図面を作図する場合は「公共建築設備工事標準図」のシンボルをや姿図を使用する必要があります。
新築工事・・・ 公共建築工事標準仕様書
改修工事・・・ 公共建築改修工事標準仕様書
図面関係・・・ 公共建築設備工事標準図
数年に一回改定されますので、最新のものをチェックしましょう。
昔は書籍を購入する必要がありましたが、現在は国土交通省のHPで内容を確認することができます。
特記仕様書
- 図面と仕様書の優先順位: 現場で迷ったときは、まず特記仕様書を確認するクセをつけましょう。図面との整合が取れない場合は、勝手に判断せず必ず監督員と協議することが鉄則です。
電気工事の特筆すべき仕様
公共建築工事標準仕様書の内容は、ほとんどが内線規程や電気設備技術基準と大きく変わりません。
なぜなら、内線規程や電気設備技術基準といった民間規格や法令を元に作成しているからです。
そのため、常日頃から内線規程に基づいた施工をしていれば特段問題になることはありませんが、下記については、公共工事の電気工事で特筆する部分となります。
ケーブルラックの施工方法
ケーブルラックの技術基準は、実は内線規程などに記載がありません。
公共工事標準仕様書にはケーブルラックの施工方法等が記載されていますので、しっかりと確認して施工するようにしましょう。
エコケーブルを使用
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)のにおいて、電線・ケーブルの材料選定に関する規定があります。
第2編1.1.1及び第6編1.1.1において、指定する規格でエコケーブル及びエコ電線としています。
エコケーブルは2001年8月に改定された「電気設備工事共通仕様書」が大きな契機となり、今では公共工事では当たり前の仕様となりました。
公共物件では、環境への配慮や火災時の防災安全性を高める目的として標準仕様となっています。
分電盤の仕様
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編) では、分電盤の仕様についても詳細に規定しています。
筐体の材質と構造: 鋼板製を原則とし、筐体の厚み、防錆処理が施されていること。また、扉の構造や開閉の容易さ、表示灯の設置などが規定されています。
遮断器(ブレーカー)の性能: JIS規格に適合したものであること、また分電盤内に収める遮断器の配置や、絶縁性能に関する厳しい要件が記載されています。
内部配線と端子: 回路ごとの識別(分電盤内での相表示や回路番号)を明確にすること、また端子台の仕様や電線の接続方法(圧着端子の使用など)が細かく定められています。
安全措置:感電防止のための絶縁被覆や、充電部への接触防止措置(中板の設置など)が求められています。
既製品の盤筐体は、公共工事仕様に適合していない可能性がありますので、盤製作は専門の盤業者に依頼することをおすすめします。
盤屋さんに公共工事に使用する旨を伝えれば、適合した盤を製作してもらえます。
必要であれば、「公共工事仕様のチェック表」や「耐震計算書」も併せて作成依頼するとよいです。
施工前の提出書類
公共工事で提出する書類は膨大です。
【提出書類】
・施工体制台帳(安全書類)
・設計図及び施工図
・施工計画書
・仮設計画
・施工要領書
「施工体制台帳」及び「施工体系図」は必須
建築基準法で定められている「施工体制台帳」の作成要件ですが、民間工事においては工事の下請け発注額により決定し、下請契約の総額が5,000万円以上、建築一式工事は8,000万円以上(2026年7月時点)の場合は作成義務が発生します。(建築基準法第24条)
しかし、公共工事の場合は、下請け発注額に関係なく作成する必要がありますので注意しましょう。(公共工事入札契約適正化法第15条)
しかも、民間工事の場合、施工体制台帳は現場に保管しておけばOKですが、公共工事の場合は発注者に提出する必要があります。
また、「施工体系図」についても上記の施工体制台帳と同様の条件で作成義務が発生します。
施工体系図は、民間工事の場合「工事関係者の見やすい場所に掲示」する必要があり、公共工事の場合はこれに加え「公衆の見やすい場所に掲示」する必要があります。
施工体制台帳、施工体系図共に公共工事においては民間工事よりも厳しい要件となっています。
【施工体制台帳及び施工体系図作成義務】
民間・・・下請け発注額による(現場に保管)
公共・・・金額関係なく(提出)
【施工体系図掲示場所】
民間・・・工事関係者の見やすい場所
公共・・・公衆の見やすい場所
施工要領書と施工計画書は慎重に
民間工事にも当てはまることですが、工事は施工計画書に記載した内容で進めていく必要があり、施工方法は施工要領書に記載する内容と同様にする必要があります。
つまり、この二つの書類は内容によっては自分の首を絞めることになりますので、できないことは記載しないようにしましょう。
施工段階で留意すべきポイント
公共工事では、施工のプロセスを可視化することが求められます。
写真管理の徹底
「施工前・施工中・施工後」の記録は必須です。特に埋設配管や隠蔽部など、後から確認できない箇所は、スケールを当てて寸法がわかるように撮影するのが基本です。
単なる機器等の施工写真だけではなく、安全管理や品質管理に関する写真撮影も必要です。
詳しくは下記書籍に細かく記載されています。
こちらも公共建築工事標準仕様書と同じく国土交通省監修のもので、営繕工事写真撮影要領にもとづいたものとなります。
もちろん民間の工事写真の参考にもなりますので、ぜひチェックしてみてください。
材料の承認申請
使用する材料(ケーブル、スイッチ、照明器具など)は、仕様に適合していることを証明するため、事前に材料承認願を提出し、承諾を得る必要があります。
勝手に別メーカーや別グレードの製品に変更することはできません。
使用する機器の「納入仕様書」を提出して承認を得る必要があります。
分電盤や照明器具などのメインどころだけではなく、雑材についても承認が必要な場合がありますので、発注者側の担当者に確認しましょう。
また、納入時の写真撮影を求められることもあります。
私の経験上は、メイン機器は納入仕様書、雑材は出荷証明書のパターンが多いです。
計測器の校正証明書
電気工事では、電流、電圧、検相、絶縁抵抗、抵抗値、照度など、とても計測する項目が多いです。
これらの計測器の校正証明書の提出を試験成績書と一緒に求められることが多いので、準備しておく必要があります。
特に改修工事の場合は、工事の初期段階で計測器を使用しますので「校正が間に合わない」といったことがないようにしましょう。
校正には一か月程かかることがありますので、間に合わない場合は校正証明書付きの計測器をレンタルする等の対応がよいです。
検査への備え
公共工事では、「竣工検査」を「完成図書」をもとに実施することが多いです。
つまり、竣工と同時に完成図書を提出しなければならない場合があります。
完成図書とは、完了した際に作成し、施工内容や仕様等を詳細に記録した書類一式で、施主に提出するものです。
完成図書は一日二日で作成できるものではありませんので、現場監督は工事期間中も現場事務所で完成図書の準備で大忙しです。
特に、写真帳の整理や機器の仕様書及び取説、試験成績書の作成は時間がかかるので、工事期間中に少しずつ準備していきましょう。
さいごに
正直に言って公共工事は民間工事に比べ、全てにおいて厳しい要件となります。
公共工事を請け負うという時点で、いつもより気合を入れて臨む覚悟が必要です!
公共工事を何度も経験すれば、多少は慣れで余裕が生まれますが、慣れていないうちは民間工事との違いに戸惑ってしまいますよね。
事前予習としてこの記事がお役に立てれば幸いです。
それではまた、ご安全に!