コンセントを取り付けた後、問題なく使用できるか確認するために必ず使用前点検を実施する必要があります。
今回は使用前点検の正しい手順と方法を解説していきたいと思います。
工事に従事されている方はもちろん、電気工事士の資格を持ってDIYされた方にも役立つかと思いますので是非参考にしてください。
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手順①回路の絶縁抵抗測定の実施
まず、取り付けたコンセントの対象となる回路のブレーカーで絶縁抵抗測定を実施します。
絶縁抵抗測定は回路(ケーブルとコンセント)の地絡状態と短絡状態を確認することができます。
回路が地絡していれば漏電による感電の危険がありますし、短絡状態であればショートしていますのでブレーカーを投入することができません。
絶縁抵抗測定には2種類あり、「対地間絶縁抵抗測定」により地絡状態を確認し、「線間絶縁抵抗測定」により短絡状態を確認できます。
コンセントの場合は照明などとは違い機器が繋がっていなければ回路が開放状態となりますので「線間絶縁抵抗測定」も有効です。
絶縁抵抗測定の結果が問題ないことを確認して初めてブレーカーを投入することができます。
絶縁抵抗測定の詳しい方法はこちらを参照ください。↓
手順②電圧測定の実施
ブレーカーを投入しましたら、コンセント側で電圧測定を実施します。
コンセントにしっかり電圧がきているか、正しい使用電圧の値となっているかをテスターで確認します。
電圧がきていないとコンセントに差し込んでも機器を使用することができません。
また、ブレーカー回路を誤って100Vのコンセントに200Vが印加されているようなことがあれば機器を破損させてしまします。
おすすめマルチテスターはこちらで紹介していますので参照ください。↓
【計器】電気工事のおすすめマルチテスター5選!使い方も紹介!
電圧測定のタイミングでブレーカーとコンセントで対向試験を実施できれば尚よいかと思います。
どのコンセントがどのブレーカー回路かの確認を二人一組で実施し、ブレーカーのONOFFとコンセントの電圧測定にて行います。
施工図と照らし合わせながら実施し、回路が間違っていれば図面を修正するか配線を是正するかしなければなりません。
竣工図にも残るものですから、しっかりと行います。
使用電圧の種類
一般的な使用電圧は以下の3種類です。
・単相100V
普段目にするコンセントのほとんどが単相100Vのコンセントです。
・単相200V
大型のエアコンやIHクッキングヒーターなどの大きな電力を使用するものは単相200Vです。
・三相200V
工場や大規模物件などモーター機器を駆動するような場合は三相200Vを使用します。
テスターを使った電圧の測定方法
まずテスターのレンジを交流の電圧測定レンジに合わせます。
機種によって表示は違いますがACV、V〜と表示されています。
〜は正弦波交流の波と覚えるといいですね。
ACも交流、Vは電圧(ボルト)を意味しています。
次にテスターの2本のプローブ(赤と黒)がありますので、コンセントの電源部分に差し込んで表示値を読みます。
プローブに絶縁キャップが付いているとコンセントの奥まで届かないので外します。
先端をしっかりと奥まで差し込んでださい。
交流ですのでプローブの極性はどちらでも問題ありません。
テスター使用上の注意点ですが、感電しますのでテスタープローブの金属部分に絶対に触れないようにします。
また、短絡事故になりますのでプローブ同士の金属部分は接触しないように配慮してください。
抵抗レンジになっていなことを確認します。テスター故障の原因となります。
以上が基本的な電圧測定の方法です。
これはどのコンセントにも共通する部分です。
次にそれぞれのコンセントの測定部分の説明をしていきます。
単相100Vコンセントの電圧測定方法
100Vコンセントも色々な形状があります。
一般的なアースなしタイプのコンセントは穴が二つですのでわかりやすいですね。
アースありのタイプは穴が三つありますが下の穴はアースになります。
上の二つの穴が電源になりますのでそちらで測定します。
二口コンセントの場合は念のため両方とも測定しましょう。
30Aコンセントは少しわかりづらいですが、三つの穴のうち一つだけ形状が違う穴がアースになります。
電圧の表示値は正常であれば105Vあたりを表示するはずです。
電圧の許容範囲について電気事業法施行規則に次のように定められています。
(電圧及び周波数の値)
第三十八条 法第二十六条第一項(法第二十七条の二十六第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の経済産業省令で定める電圧の値は、その電気を供給する場所において次の表の上欄に掲げる標準電圧に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。
標準電圧 維持すべき値 百ボルト 百一ボルトの上下六ボルトを超えない値 二百ボルト 二百二ボルトの上下二十ボルトを超えない値 引用:電気事業施行規則
100Vの場合は101V±6Vですので95V〜107Vの間でしたら法的には問題ないことになります。
単相200Vコンセントの電圧測定方法
単相200Vは100Vと形状が全く違いますし、200Vの表示がありますのですぐにわかると思います。
エアコンなどに使われる200Vコンセントはアースを入れて3つ穴がありますが、上の図の赤丸の部分で測定します。
30Aコンセントも100V同様、一つだけ違う形状の穴がアースになります。
電圧の表示値は正常であれば200V以上を表示します。
電気事業法施行規則では202V±20Vと定められてますので、182Vから222Vの間でしたら法的には問題ないことになります。
三相200Vコンセント(動力)の電圧測定方法
三相200Vコンセントの場合は相が3つありアースもありますので、穴は全部で4つあります。
アースを除いた三つの穴の第1相を①、第2相を②、第3相を③とします。
それぞれの相間の電圧が200Vでなければいけませんので、①ー②、②ー③、①ー③と三箇所で電圧を測定します。
アースはわかりにくいですが、一つだけ形状の違う穴がアースになります。
形状の違うストレートタイプの場合は一番下の縦穴がアースになります。
手順③極性を確認する
絶縁抵抗による回路確認が問題なく電圧も正常の値ときたら最後は極性の確認です。
コンセントは回路が開放状態ですので、絶縁抵抗測定による極性間違えに気付くことができません。
コンセント設置時に誤結線により極性がずれてしますことがあります。
極性が間違っていると機器が接続されていない状態では何も起きませんが、機器を繋ぐと地絡してしまったり、機器を破損させてしまうといった危険性がありますので必ず確認するようにしましょう。
単相100Vコンセントの極性確認方法
・アースなしコンセントの場合
アースなしコンセントは穴は二つですので間違えた場合はL相とN相がひっくり返った状態となります。
実はこの場合そのまま機器を繋いでも問題はなく、直接的に品質に影響することはありません。
みなさんコンセントを挿す時わざわざ左右の向きを気にしたことはありませんよね。
しかし、コンセント取り付け施工において両相の接続箇所はしっかりと決められています。
コンセント穴の短い方がLIVE側(対地電圧100V)、長い方がニュートラル側(対地電圧0V)となっています。
間違った接続されていても問題なく運用可能ですが、例えば電気工事屋さんが工事に入った場合など短い穴に100Vがかかっていると思い込んでいます。
思い込みによる不慮の事故を防止するため、電圧の違う相はしっかりと位置を定めておくことが重要かと思います。
アースなしコンセントの極性確認方法ですが検電器を使用します。
短い方の穴に検電器を挿したときに反応すればOKです。
逆に長い方の穴はニュートラルですので検電器は反応しません。
・アース付き単相100Vコンセントの場合
アース付コンセントの場合は穴が三つありますね。
ライブ相は100V、ニュートラルは0V、アースは0Vであるためテスターの相間電圧測定では確認することができません。
検電器を使用してもニュートラルとアースがひっくり返ってる場合はどちらも0Vですから確認できませんよね。
その場合はコンセントテスターを使用します。
N-Eテスターとも呼ばれるもので、アース付コンセントの形状になっていますのでコンセントに差し込んで測定ボタンを長押しするだけの簡単操作です。
極性が間違っている場合はエラー表示されます。
また、電圧表示もされますので電圧測定の手順を省略できます。
コンセントの使用前点検には必須の計器となります。
単相200Vコンセントの極性確認方法
単相200Vの場合はテスターを使用して確認することができます。
電源相の2相(アース以外のR相とT相)で相間電圧確認をして200Vが表示されれば問題ありません。
単相200Vは対地電圧100VのR相とT相の電位差が200Vとなっています。
ですので対地電圧0Vのアースとの相間電圧は100Vとなりますので仮にアースに電源を間違えて挿入してしまった場合は電源が100Vとなりますので発見できます。
また、R相とT相の極性はというと決まりはなくどっちがどっちでも問題ありません。
R相とT相は対地電圧がどちらも100Vですので全く同じものと捉えてもらって大丈夫です。(厳密には違いますが電圧が同じなのでヒューマンエラー等の事故の心配はありません)
一応各現場のルールで統一性を持たせることがあると思いますので現場ルールに従いましょう。
三相200Vコンセント(動力)の極性確認方法
三相200Vの極性確認は検相器を使用します。
三相200Vの場合は相回転というものがあります。
R→S→Tの順が正相、RとTをひっくり返したT→S→Rが逆相となります。
正相か逆相かは接続する機器仕様によって変わりますので確認が必要です。
接続する機器が決まっていなければ正相で接続するのが基本です。
相回転の確認方法ですが、使用する検相器はコンセントに差し込めるようにプローブの接触タイプ検相器を使用しましょう。
三相コンセントを正面から見て正相であれば左からRーSーTですので検相器のプローブを順番に差し込んでいきます。
プローブの色は赤がR相、白がS相、青がT相です。
検相器が正相の表示をすれば問題ありません。
最後に
使用前点検は絶縁抵抗測定、電圧測定、極性確認と確認事項が多いですが、この作業を怠ることによって事故や不具合の原因になりますので絶対に実施するようにしましょう。
新築現場や大規模改修工事になりますと何百何千という量のコンセントをチェックしなければいけませんので大変な作業ですが、本記事が作業の手助けになれば幸いです。
それではまた、ご安全に!