施工要領

【施工】メタルラス(ワイヤラス)壁における電気工事の施工方法と注意点を解説!

2023年8月12日

メタルラス壁は、現在では少なくなりましたが、壁に絡む電気工事をする上で注意するポイントがあります。

知識がない状態で施工すると、火災等の原因となりますのでしっかりとポイントを押さえましょう。

今回は、メタルラス壁の概要と、電気工事の施工上の注意点をまとめました。

メタルラス壁とは?

モルタル壁の構造

メタルラスとは、モルタル仕上げの外壁に使用される金網材料のことをいいます。

メッシュとも呼ばれ、見た目は網状の金属です。

外壁にモルタルを塗る際に下地として使用され、メタルラスとモルタルを絡ませることによって、ひび割れ防止や補強としての機能があります。

建物の構造物として使用されるコンクリートには、補強材として「鉄筋」が使用されますが、厚みのないモルタル壁にはメタルラスが使用されるのです。

工程としては、ラス板という木板に防水シートを貼り付け、その上にメタルラス等を貼り付けて、さらにその上にモルタルを左官職人が塗っていきます。

近年は、安価で施工期間が短いといった理由で「サイディング仕上げ」の壁が主流になっていますね。

昔の建物では「モルタル仕上げ」が主流でしたので、メタルラスが使用されています。

モルタル仕上げの壁は、サイディングと違い継ぎ目のない仕上がりにできることや、アール(曲線)の壁に対応できること、それからデザイン性が豊富ということから、現在でも特殊な仕様の建物や、こだわりの強い建物には採用されている印象です。

モルタル仕上げは少なくなったとはいえ、現在でも新築工事、改修工事ともにお目にかかることがあるかと思いますので、電気工事を施工する際は留意する必要があります。

また、モルタル仕上げの見極めですが、基本的には目地がない壁はモルタルと判断して問題ないかと思います。

・モルタル壁は、メタルラスを下地としている
・目地のない壁は注意

電気工事の際は電線と壁の絶縁を!

内線規程を確認

3102-8 メタルラス張りなどとの絶縁

1.メタルラス張り、ワイヤラス貼り又は金属板張りの木造の造営材に施設する次の各号のものは、木材(絶縁性能を有する防腐塗料を施した堅ろうなものに限る。)、合成樹脂、磁器など耐久性のあるもので絶縁すること。

各号略

2.絶縁電線がメタルラス張り、ワイヤラス張り又は金属板張りの木造の造営材を貫通する場合は、がい管、合成樹脂管などを使用し、かつ、がい菅、合成樹脂管などが移動しないようにすること。この場合においてがい管を使用するときは、機械的損傷を受けないようにがい管を木管その他で保護して、施設すること。ただし、引き込み用つば付きがい管または肉厚4mm以上のがい管を使用する場合は、この限りでない。

引用:内戦規定

このように内線規程では、メタルラス張り、ワイヤラス張り、金属板張り(以下メタルラス等)と配線や器具とを絶縁することを規定しています。

メタルラス等の壁に器具等を設置する場合は、ボルトやビスを打ち込むことになりますので、メタルラス等とビスやボルトが接触した場合に、しっかりと絶縁してメタルラスに地絡電流が流れないようにする必要があります。

また、壁を貫通して配線する場合も同様に、合成樹脂管等の絶縁性がある配管で貫通部を保護する必要があります。

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なぜ絶縁が必要か

メタルラス壁の地絡経路

メタルラス等と器具等を絶縁する理由は、上の図のように器具等の絶縁不良で地絡が生じた際に、メタルラス等が地絡経路となり、接触抵抗からメタルラスが加熱され火災になる可能性があるためです。

上の図の場合は、水道管が地中に埋設されているためそこが接地極となり、さらにメタルラスと水道管と器具(ビス)に接触し、地絡経路が形成されています。

メタルラスや鉄筋、LGSなどの建物の金属部分全般に該当することですが、建物の金属部分は故意に接地していなくても、どこかしらで接地と繋がったいたり、水道管などの地中を通る水道管に接触していることで水道管が接地極となって、地絡経路となることがあります。

特にメタルラス等は、接地経路としては細すぎであり、正規の接地線のような銅線と比べ導電率が低いため、許容電流としては低くなるため発熱しやすいといえます。

実際には、過去にもメタルラスとビスが絶縁されていなかったことが原因で火災が発生した事例がありますので、施工の際はしっかりと対策をする必要があります。

メタルラス壁における電気工事の施工

照明器具の取り付け

メタルラスと器具の絶縁方法

メタルラス壁に、照明器具や配線器具を取り付ける際に最も注意しなければいけないポイントは、器具を取り付けるビスと器具を電気的に絶縁することです。

壁にビスを打ち付けるということは、ビスがメタルラスに接触する可能性が十分高く、漏電が発生した場合は「器具→ビス→メタルラス」という経路で地絡します。

それを防止するためには、器具の下地として壁に木板等を取り付け、木板に器具を取り付けます。

そうすることによって、器具を取り付けるビスは木板にもむわけですから、ビスが壁に到達することがなく絶縁することが可能です。

さらに注意ポイントとして、木板を壁に取り付けたビスと器具を取り付けたビスが接触していたり、木板を取り付けたビスが器具の下にあると器具と接触する可能性がありますので、しっかりとビス同士を離隔し、器具とも離隔する必要があります。

電線の壁貫通

メタルラス壁の外壁貫通処理

ケーブルの場合はあまり問題になりませんが、特に絶縁電線を貫通する場合は注意が必要です。

絶縁電線は露出配線不可なので必ず配管などで保護する必要がありますが、配管の壁貫通の際は合成樹脂製のものを使用しましょう。

合成樹脂製は、PF管や塩ビ管(VE管)が該当します。

合成樹脂管は、絶縁性がありますので仮に絶縁電線が漏電しても、メタルラス経由の地絡を防止することができます。

くれぐれも金属製の電線管を使わないようにしましょう。

換気扇やレンジフードの取り付け

換気扇、レンジフードのメタルラストの絶縁

換気扇やレンジフードも器具自体が金属製のため、メタルラス壁に設置する場合は絶縁を考慮する必要があります。

換気扇やレンジフードが、外壁の開口に直接接触しないようにします。

木製等の絶縁性があるものを、機器と壁の間に施設します。

機器自体の壁貫通部分に接触する部分が、プラスチックなどの絶縁性のある素材であれば特に木枠等を設ける必要はありません。

機器の金属部分とメタルラス等を接触させないことが重要となります。

配線器具の取り付け

絶縁取付枠

メタルラス壁に、コンセントやスイッチなどの配線器具を取り付ける際は、「絶縁取付枠」を使用します。

取付枠によって、配線器具と壁が絶縁されますので、壁からの地絡の可能性が低くなります。

プラスチック素材の取付枠の存在は知っていたけど、なんとなく絶縁されて安全なイメージという認識の方も多いのではないでしょうか。

基本的には、テレビやLAN、電話などのノイズを嫌う弱電機器と同じボックスにコンセントを設置する場合に、電磁誘導を防止するために使用されますが、実はメタルラス壁の地絡対策でも用途があるんですね。

漏電火災警報器の設置について

建物を設計する段階の検討事項となりますが、ワイヤレス壁の建物は一定の条件により「漏電火災警報器」を設置する必要があります。

第二十二条 漏電火災警報器は、次に掲げる防火対象物で、間柱若しくは下地を準不燃材料(建築基準法施行令第一条五号に規定する準不燃材料をいう。以下この項において同じ。)以外の材料で造った鉄鋼入りの壁、根太若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造った鉄鋼入りの床又は天井野縁若しくは下地を準不燃材料以外の材料で作った鉄鋼入りの天井を有する物に設置するものとする。

引用:消防法施行令

漏電火災警報器は、B種接地線や電路に変流器を取り付け、低圧回路に漏電が発生した際に受信機に信号を送ることによって、発報する機器です。

主な設置基準を以下にまとめます。

・ワイヤレス網等が使用された壁、床、天井がある。

・下地材(間柱、根太、天井野縁)に、準不燃材料以外の材料が使用されている。

・防火対象物ごとに延べ面積が基準以上のもの、または、防火対象物ごとに契約電流容量が基準を超えるものが、漏電火災警報器の設置対象となる。(詳細は割愛)

これら全てに該当する場合、漏電火災警報器を設置する必要があります。

漏電火災警報器は、消防法で設置が定められているもので、消防設備士乙種7類の有資格者が定期的に点検します。

消防法の対象として設置されている物件もありますが、よくキュービクルに設置されているELR(漏電リレー)も漏電火災警報器と同じものです。

キュービクルに設置されているものは、絶縁監視として自主的に設置されている場合がありますので、その場合は点検の対象外となります。

まとめ

まとめ

  • メタルラス壁は、地絡によって火災になる可能性がある。
  • 外壁に電気器具設置の際は、メタルラスと絶縁する必要がある。
  • メタルラス壁の物件は、漏電火災警報器の設置対象となる場合がある。

外壁に器具を設置する際には、あまり気にすることがなかったと思いますが、この機会にメタルラス壁の施工に注意してみてくださいね。

自分が施工した物件で、数年後に火災なんてことも最悪の場合あり得ますので、正しい知識をもってしっかりと施工しましょう。

それではまた、ご安全に!

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