住宅などの木造建築に対し、金属管いわゆる鉄管を使った電気工事を施工してよいかについて話題になることありますよね。
「木造に金属管は禁止!」というのは規程上どうなのでしょうか?
結論としては、基本的に問題ないが一部はNGとなります。
今回は、木造建築に対する金属管施工について電技や内線規程を紐解きながら解説していきます。
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「木造に金属管禁止」といわれるようになった根拠規程
木造に金属管がNGというとよく言われることがありますが、確かに電技や内戦規程にそのような規程がありますので下に紹介します。
電気設備技術基準の解釈では下のように記載されています。
第5節 屋側電線路、屋上電線路、架空引込線および連接引込線
110条
・・・
2 低圧屋側電線路は、次の各号のいずれかにより施設すること。
三 金属管工事により、次に適合するように施設すること。
イ 木造以外の造営物に施設すること。
ロ 第159条の規定に準じて施設すること。
引用:電気設備技術基準の解釈
次に内線規程では次のように規定しています。
2300-1 低圧屋側電線路の施設
・・・
2.低圧屋側電線路は、次の各号のいずれかにより施設すること。
・・・
③金属管工事により、次に適合するように施設すること。
a.木造以外の造営物に施設すること。
引用:内線規程
このように、確かに低圧の屋側電線路に対して金属管工事を施工する場合は、木造以外とすることと明確に規程しています。
屋側とは建物の壁や屋根などに沿わせて支持するような場合です。
それなら、屋内の場合だったらいいのかなんて言われたりしますが、そうではないんですね。
着目すべきは「電線路」の部分です。
上記、木造の電線管を禁止している規程は「電線路」に対してのものです。
電線路と配線の定義は区別されるので問題ない
電線路と配線については、内線規程で明確に区別して定義されています。
1100-1 用語
〔回路に関する用語〕
22 電線路とは、発電所、変電所、開閉所及びこれらの類する場所並びに電気使用場所相互間の電線(電車線、小勢力回路及び出退表示灯回路の電線を除く。)並びにこれを支持し、又は保蔵する工作物をいう。
24 配線とは、電気使用場所において固定して施設する電線をいい、機械器具内(配電盤及び分電盤を含む。)にその一部分として施設された電線(機械器具に付属する電線を含む。)、特別定電圧証明回路の電線、小勢力回路の電線などは含まない。
引用:内線規程
上記の文言から、「電線路」は発電所や変電所などから引かれる送電線や、建物から建物に引かれる幹線ケーブルなどと解釈できます。
一方、「配線」については、電気使用場所(建物)の中で引かれる電線や、器具に引かれる電線と解釈できます。
つまり、「電線路」は送電線などの高電圧または高電流の、幹線または電気事業者が送電する類の電線で、「配線」は建物内や屋外の負荷(器具など)に配線される一般的な電線となります。
そのため、一般的な木造住宅の「電線路」に該当する電線というと、電力会社の送電線から引き込まれる引き込みケーブルのみとなります。
その他は「配線」に分類されますので、例えば外壁のコンセントへの配管は金属管でも問題ないということになります。
木造への金属管工事を禁止している規程は「屋側電線路」についてですが、「屋内配線」についての規程もありますので、しっかり区別されていることがわかります。
電線路と配線の区別のイメージ
・「電線路」・・・送電線などの大容量電線
・「配線」・・・機器などへの一般的な電線
他の規程に「金属管NG」は見当たらない
上記にて、木造への金属管禁止の規程は電線路に対するものなので、一般的な配線は問題ないとわかりましたが、他の規程についても特に木造NGという記載はありません。
金属管については、内線規程は「3110節 金属管配線」、電技では「159条 金属管工事」として規定していますが、施設する場所の建物の構造については特に規程していません。
木造の屋側電線路に金属管はなぜNG?
一般的な配線については、基本的に木造でも金属管施工は問題ありません。
しかし、電線路についてはNGとなりますので注意が必要です。(住宅の近くを大電流電線の管路にすることはほぼないですが)
住宅のモルタル仕上げの外壁には、メタルラスやワイヤラスなどの金網が使用されています。
ラスに漏電などにより誤って電気が流れると、抵抗値の高いラスが発熱し火災の原因となります。
このような理由から、木造建築には大容量電線の金属管を禁止しています。
関連記事:【施工】メタルラス(ワイヤラス)壁における電気工事の施工方法と注意点を解説!
結論
結論として、木造住宅への金属管工事は、一般的な配線は問題ありませんが、送電線や建屋の渡り幹線のような大容量電線はNGとなります。
ただ、一般的に木造住宅に施工されている電線管はほとんどが合成樹脂管です。
大規模物件に使用する電線管は、見た目や耐久性を考慮して金属管を使用することが多いですが、一般住宅においてはそこまでの品質とコストを求めないためです。
そのため、規程うんぬんではなく住宅では合成樹脂管がメインとなるのが実情です。
今回のテーマとしました「木造への金属管工事」はよく議論されるはっきりとしない部分ではなかったでしょうか?
あくまで解釈となりますのでご意見がございましたら是非コメントください。
それではまた、ご安全に!