今回は、電気工事において、単線の電線を機器などに接続する際に、端子を圧着しても問題ないか否かについて解説していきます。
おそらく、ほとんどの電気工事士のみなさんは、先輩などから、「単線に端子を圧着すると芯線が折れるからNG」と教わる方がほとんどだと思います。
その割には、機器に端子が付属されていたりするので、使用してもいいのかな?とも思いますよね。
実際にはどうなのでしょう?
結論としては、規程としては問題ないがやらないほうが無難となります。
どういうことなのか、規程やメーカー仕様などを追いながら説明していきます。
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単線に端子圧着がNGと言われる理由
単線に端子を圧着してはいけないと言われる理由として、端子の根元で芯線が折れるためです。
確かに、単線の場合は、導体部分が1本の太い銅線となっていますので、傷が入ったり、細くなると折れやすくなります。
端子を圧着すると潰されるため導体が平たくなり、更に端子の角が折り曲がりの支点となるためです。
対して、拠り線の場合は何本も細い銅線が何本も拠り合わせてあるため、折れる可能性はかなり低いです。
折れるというよりも、千切れるという表現が適切かもしれません。
接続した電線が機器内で大きく動くことはほぼないですが、電動機などの振動する機器については長年の動きで、電線が折れるといった不具合も想定されます。
・単線に端子をあてると、根元で折れやすくなる
・特に振動機器においては不具合が想定される
規程等の確認
ここからは、規程や規格が単線に端子を使用してはいけないかの確認です。
電気工事を施工する上で、様々な規定がありますので順番に確認していきたいと思います。
電気設備技術基準の解釈
「電気設備に関する技術基準を定める省令」のわかりやすく解釈している「電気設備技術基準の解釈」をみていきます。
【電線の接続法】(省令第7条)
電気設備技術基準の解釈
第12条 電線を接続する場合は、第181条、第182条又は第192条の規定により施設する場合を除き、電線の電気抵抗を増加させないように接続するとともに、次の各号によること。
イ.電線の引張強さの20%以上減少させないこと。ただし、ジャンパー線を接続する場合の他電線に加わる張力が電線の引張強さに比べて著しく小さい場合は、この限りでない。
ロ.接続部分には、接続菅その他の器具を使用し、又はろう付けすること。
以下略
「電線の接続法」という部分で規定していますが、特に端子について規定していません。
また、上記規定は電線同士の接続(ジョイント)に対するものですので、機器接続ということになると明確に規定がありません。
電気設備技術基準の解釈
・機器接続の明確な規定なし
・端子についても記載なし
内線規程
民間自主規格の電気工事のバイブル的存在である内線規程はどうでしょう。
3102-6 電線と器具端子との接続
引用:内線規程
1.銅電線と電気機械器具の端子との接続は、接触が完全で緩むおそれがないように、次の各号によること。
④器具端子が押ねじ形、クランプ形、差込形又はこれらに類する構造のものである場合を除き、直径3.2mmを超える単線又は断面積5.5㎟を超えるより線には、ターミナルラグを付けること。
ターミナルラグとは端子のことですね。
内線規程では、単線であれより線であれ、電線が一定のサイズ以上は端子を使いなさいとなっています。
肝心の電気工事で一番使用する単線サイズの1.6mmと2.0mmは3.2mm以下となりますが、端子を使用してはいけないと記載はありませんし、3.2mm以上に使用を規程しているのであればそれ以下も問題ないと解釈できます。
内線規程
・3.2mm以上の単線は端子を使用しなければならない。
・それ以下については記載がないので、問題ないと解釈できる。
公共建築工事標準仕様書(電気設備編)
公共工事で必須の、通称赤本には「電線と機器端子との接続」という項目があります。
ここでもやはり、単線に端子接続はNGという明確な記載はありません。
2.1.2電線と機器端子との接続
引用:公共建築工事標準仕様書(電気設備編)
(4)機器の端子にターミナルラグを用いる場合(押ねじ形及びクランプ形を除く。)は、端子に適合するターミナルラグを使用して電線をするほか、次による。
(ウ)ターミナルラグは、JIS C 2805「銅線用圧着端子」による。
端子を使う場合は「JIS C 2805」の規格に適合する必要があります。
公共建築工事標準仕様書
・単線に対する明確な記載なし。
・端子についてはJIS C 2805によることとなっている。
JIS C 2805
内線規程と公共建築工事標準仕様書には、端子を使用する場合はJIS C 2805に準ずるものを使用するとなっていますので確認していきます。
適用範囲
JIS C 2805
この規格は、主として電力用機器内部及び機器相互の電線に用いる軟銅のより線又は単線の電線を接続するために、JIS C 9711に規定する接続工具又は圧着端子の製造業者が指定する接続工具を用いて、その電線の末端に圧着接続する裸圧着端子及び絶縁体の上から圧着接続する絶縁被覆付圧着端子について規定する。
最初の適用範囲の部分に「単線の電線を接続するため」と記載があることから、単線に端子を使用することは問題ないことがわかります。
JIS C 2805
・「単線の電線を接続」と明記されているため、単線の端子使用は問題ないとわかる。
端子メーカーの仕様
端子メーカーの仕様を確認すると、対応表に単線の記載がありますので使用できることになります。
主なメーカーのカタログを下にリンクしますので確認してみてください。
L字の端子や絶縁被覆付き端子は、単線の記載がないので使用できませんので注意が必要です。
また、ニチフについては、14SQ以上の電線はメーカー相談となります。
(そこまで太い単線は使用することはないと思いますが)
以上のことから、電気工事で一般的に使用する単線のサイズ1.6mmや2.0mmで、特殊なものでなければメーカーとしては使用できることがわかります。
メーカー仕様
・基本的には使用可
・特殊な端子は使用できない場合も
・メーカーによってはサイズにより使用不可
業界通念上はNGのため、単線はのの字が無難
以上のことから、単線に端子をあてることについて、規程等は問題ないので、仕様適合しているメーカーのものを使用すれば問題ないことになります。
しかし、建設業の施工品質チェックというのは様々な人間が関与し、その人たちの一声によって左右される部分が大きいです。
具体的には、自分の会社の自主検査から始まり、サブコンの検査、ゼネコンの検査、設計監理チェック、施主検査等々、たくさんの人が品質チェックを行います。
品質チェックの際に、上記のような根拠を提示して問題ないことを証明できても、チェックする人が「NO」と言えば是正することになります。
特に、電気サブコンなどの電気工事を専門とする会社は、「単線に端子あげをNG」とする認識の方も多く、過去に芯線が折れた事例もあるせいか、自社ルールとしてNGとしている会社もあります。
もちろん、自分の会社が元請けで顧客に問題ないことをしっかりと説明できればいいのですが、竣工後の不具合が発生するリスクはゼロではありません。
規程では問題ない部分でも、通念的にNGとされている施工は、不具合があった際に真っ先につつかれます。
そのため、個人的には単線を接続する際は、しっかりとのの字をかくことを推奨したいです。
施工箇所によっては、どうしても共ばさみが必要な部分などあるでしょう。
その場合は、自己責任で行うということと、大きな声では言えませんが、品質チェックから目が届かない隠蔽部分などにしておきましょう。
まとめ
まとめ
- 単線に端子を圧着すると根元で折れる可能性がある
- 法や規程、規格については、単線に端子を圧着しても問題ない
- 依然として業界では、単線に端子を圧着することはNGとされる
- 規程等は問題ないが、単線は輪っかを作ることを推奨する
単線に端子を圧着することについて、規程や規格では問題なくても、単線は輪っかを作ることが無難といことが結論となります。
しかし、規程や規格で問題がないという知識を持ち合わせることはとても重要です。
仮に施工上どうしても端子を使用せざるを得ない場合、「これこれこういった理由で端子を使用させていただきます。規程上は問題ありません」としっかりと説明することができれば、検査員を納得させることもできるかもしれません。
この記事が現場でお役にたてれば幸いです。
それではまた、ご安全に!