施工要領

【施工】電力量計(電力メーター)更新工事の施工方法と留意事項、注意事項を解説

電力量計は、名前の通り電力量を計測する機器ですが、単に電力監視だけではなく、電気料金を請求する(課金)ための機器でもあります。

課金に使用する電力量計は、計量法により検定に合格した電力量計を使用するよう定められており、検定付き電力量計の更新期間は最長でも10年となります。

有効期限を過ぎた電力量計を使用しての課金は、計量法違反となりますので、有効期限が切れる前に更新する必要があります。

今回は、電力量計の更新における施工方法および留意事項、注意事項解説していきます。

電力量計取り替えの前に

新設機器の初期値の確認(バッテリー活用)

新品の電力量計の初期値は、工場出荷前の試験等で負荷がかかるため0ということはありません。

物件の電力量計の管理運用によりますが、ほとんどの場合電力量計の初期値を控えます。

電子式の場合は、電源が入らないと数値が表示されないので、通常は更新後のブレーカー投入後の確認になります。

三菱電機製のものに限りますが、電池モジュールを使用することによって事前に初期値を控えることができます。

電池モジュールの用途は停電時によるバックアップ電源なので用途としては異なりますが、数値の事前確認用で活用している人は多いです。

初期値の記録を現地で行う場合、現場でバタバタしますが、事前に納入した機器を現場乗り込み前に電源モジュールを使用して確認することによってかなり現場での業務負荷が軽減されます。

また、回路によっては電力量の進みが早いので、電源投入後すぐに数値が変動してしまい正確に記録できないので事前確認をおすすめします。

電池モジュールの取り付け方法

既設機器の最終指針値を控える

更新工事を施工する施工業者の確認ルールや物件の施設管理者の運用によりますが、一般的には撤去した時点での最終指針値を控えます。

撤去してしまうのであまり関係ないといえば関係ないのですが、この状態で撤去しましたという記録を残しておきましょう。

誘導型のものでしたら撤去後でも数値を控えることができますが、電子式のタイプは電源がないと表示されないので、電源を落とす直前に数値を控えます。

記録として写真を撮影し写真台帳にして施主に提出すると尚よいです。

施工前試験関係の実施

施工前の試験関係は、電力量計更新に限ったことではなく、電路を施工する電気工事全般に共通する部分です。

電力量計の場合は、更新する回路の事前の電圧チェック、三相回路であれば検相チェック、電源を落とした後に絶縁抵抗測定を実施し、施工前の状態を記録します。

電力量計の取り替え方法

更新にあたって、施主や会社のしがらみがなければ同メーカーを選定すると、更新互換があることが多いのでスムーズに施工が進みます。

また、特に仕様の変更がなければ同型機種を選定しましょう。

機器本体の取り付け自体は、ビスで固定されているだけですので特に難しいことはありません。

※おおまかな概要を説明しますが、機種によって設置方法、電線接続方法が異なりますので、必ずメーカーの取扱説明書や設置要領書を確認してくださいね。

同型機種への更新の場合

同型機種の場合は、基本的に電線の接続も同じ位置ですので難しくなく、もとの位置に接続し直せば問題ないです。

電線を離線→機器を取り外し→機器設置→電線接続といった要領です。

CTがないタイプは、6つの端子があり左から「1S、2S、3S、3L、2L、1L」となっています。

Sが一次側でLが二次側になります。

番号のとおり、一次側と二次側で配列が逆になっていますので注意です。

左から一次側のRST、二次側のTSRの順ですね。

メーカーによらず端子の配列は共通していますが、必ず取扱説明書に目を通して結線方法は確認してくださいね。

電力量計の結線1

下の写真のものは、120A超えの場合でもCTがいらず電線をダイレクトに接続できるタイプです。

このタイプはブレーカーと同じく、上部が一次側、下部が二次側になっています。

上下とも左からRSTですね。

電力量計の結線2

CTがあるタイプのものは、3線であれば端子が7つあります。

3線の電圧要素(電源)取得部の3つと、CTから電流要素を取得しますので4つの合計7つです。

電力量計の結線3

アタッチメントの活用

三菱電機製のM2PMシリーズは、旧機種から更新する場合、機器設置の際オプション品のアタッチメントを使用することにより、既存のビス穴をそのまま使用できます。

新機種の方が若干サイズが小さくなりますが、アタッチメントの利用で新たにビスをもむ必要がなくなります。

ビスもみは対した作業ではないですが、盤内ということですので、切り粉を落とす心配をしなくていよいのでおすすめです。

電力量計のアタッチメント使用状況

導体が銅バーの場合は更新互換の確認を

電力量計に接続されている導体部分が、電線ではなく銅バーが直接接続されている場合は、そのまま更新できるかを確認します。

銅バーの場合は、電線と違い移動ができないので全く同サイズのものでないと取り替えできません。

更新互換があるかを購入先の代理店や電材屋に確認しましょう。

三菱電機製のM8FMシリーズは端子の部分が微調整できるようになってますので、更新互換があれば若干のズレであれば問題ありません。

自動検針の場合はパルス線も繋ぎかえる

自動検針をしている場合は、パルス線のつなぎ換えも忘れずに実施しましょう。

新機種は接続位置が変わる場合があるので、パルス線を延長または引き換えが発生する場合があります。

パルス線についての留意事項は下で説明いたします。

パルス線接続位置

自動検針している場合は要注意

パルス設定の確認

電力量計の値を使用して、テナントなどに電気料金を請求している場合は、必ず検針をしています。

電力量計のその月の積算値と前月の積算値の差分から、一月の電力量を割り出して料金を決定しています。

昔は、現物の電力量計の値を控えて管理していましたが、現在は中央監視設備を使用した自動検針が一般的です。

中央監視とは、建物のあらゆる設備の警報や状態を確認し、機器の自動制御を行う機器です。

電力量計も中央監視で管理しており、電力量計に設定された電力量に達すると電力量計内の接点(スイッチ)が1回閉じてパルス信号を中央監視に送ることで、中央監視側でも電力量計の数値を確認することができます。

例えば1pulse/1kwhで設定されていれば、電力量計の数値が1kwh増えるごとに一回中央監視に信号を送信します。

ほとんどの機器は1pulse/1kwhで設定されていますが、負荷(使用量)が大きい回路は10pulse/1kwhで設定されています。

既設が10pulse/1kwhだったものを、誤って電力量計の設定を1pulse/1kwhに設定してしまうと、請求金額が1/10になってしまいます。

誤課金の不具合は非常に多いので、パルス設定はしっかりと確認しましょう。

機種によっては、パルス設定を変更できますが、基本的に設定は機器出荷時に決定されてしまいますので、既存の仕様を確認し購入先に同じ仕様で依頼をかけます。

プリセットを中央監視メーカーに依頼

電力量計更新後は、当然ですが新設機器の数値はリセットされます。(実際には0ではなく、工場出荷時の試験負荷などで数kwh進んでいます)

そうすると、中央監視に表示されている数値と、電力量計の数値が一致しなくなります。

電気料金の請求は、当月と先月の積算値の差分で請求するので運用的には問題ないのですが、管理上中央監視値と電力量計値は一致させておいた方が好ましいです。

一致させる場合、中央監視の数値をプリセットすることになりますが、一般の業者では操作が困難になりますので中央監視メーカーに依頼します。

メーカーの対応費用は安くはないので、一致させるさせないは、施主もしくは現地の施設管理の方に事前に確認し、判断していただきましょう。

誤パルスによる誤課金防止

電力量計から中央監視に電力量を送る信号線は、接点タイプのパルス信号か通信タイプがあります。

一般的にはパルス信号の物件が多いですが、このパルス線は2芯のケーブルになってまして、接点ですので短絡すると信号が送られてしまいます。

機器更新時は、電力量計の回路は遮断して無電圧にしますが、中央監視の電源は活きていいる状態の場合、施工中に誤って短絡してしまうと電気料金請求先にその分多く請求することになります。

そのため、施工中は短絡させないように注意することはもちろんですが、物理的な対策としてパルス線が接続されている外部端子の外線側で全て離線し、ビニテなどで絶縁処理することをおすすめします。

そうすれば気兼ねなくパルス線をさわれますよね。

中央監視の値をプリセットする場合は、施工による誤パルスもリセットしますのであまり気にしなくても問題ないです。

パルス線外部端子

メーターチェックの実施

パルス設定の設定ミスや、電線接続の際の誤結線による不具合は非常に多く発生しています。

そのため、正しく自動検針されているかを確認するために最低1回はメーターチェックの実施を推奨します。

メーターチェックの方法は、機器更新後にメーターの数値が進んだ段階で、電力量計に表示されている数値と中央監視に表示されている数値が一致しているかを確認します。(中央監視をプリセットしない場合は差分値と差異がないか確認)

ここで正しい乗率でパルス設定をしていないと、一致しないので発見することができます。

CT(変流器)に関する注意事項

電力量計は一部の機種を除き、120Aを超える容量(250A〜)の機器はCTが付属します。

容量が大きくなると電線が太くなりますので、CTにより電流値を変流し細い電線にする形です。

テナント等に課金をしている電力量計は、このCTが関係する不具合も多く発生しているため注意が必要です。

取り付け位置(電流取得位置)と向きを十分に確認する

CTは電流要素を取得する部分ですので、CTを設置した回路の電流値を測定し、それをもとに電力量が電力量計で測定されます。

CTを設置する位置を間違えてしまうと、正しい電力量が計測できず、結果誤課金となります。

例えば、分電盤内にはテナントごとにブレーカーがあるとして、それぞれのブレーカーの二次側にCTが設置されているとします。

極端な話、CTを幹線に設置してしまうと、そのテナントに盤内全ての電気料金を請求することになり大変なことになります。

CT更新の場合は、基本的に元の位置に設置すればよく間違いは起こりにくいですが、電力量計を新規で設置する場合は注意が必要です。

どのブレーカーが計測対象(課金対象)かをよく確認し、CTを設置しましょう。

また、CTの向きを間違えると逆電流となりますので正しく計測できません。

現行の機器は、逆電流の場合エラー表示が出るのでミスが少なくなりましたが、昔の誘導型のタイプは円盤が逆向きに回るといった不具合が発生しています。

CTにKとLの表示がありますので、Kが一次側、Lが二次側で貫通させます。

・CTは計測対象の電路に確実に取り付ける
・CTはK→Lの向きに貫通させる

合番号の確認

CT付きの電力量計には、合番号票が取り付けられています。

合番号とは機器を管理する番号ですが、CTと電力量計で同じ番号ですのでセット番号にもなっています。

電力量計とCTは同じ合番号となっていますので、この合番号を確認して組み合わせを間違えないようにします。

CTにはCT比というものがあり、実際の電流値をどのくらいの割合で変流するかが決まっています。

例えば、250/5のCTであれば250÷5で実際の電流値よりも1/50の電流がCT二次側に流れます。

電力量計にもCT比が設定されていますので、合番号の組み合わせを間違えるとCT比が合わず正しい計測ができません。

設置の際は必ず合番号を確認しましょう。

不要CTは撤去もしくは二次側短絡

電力量計自体を撤去したり、CTが付属しないダイレクトタイプに更新する場合は、CTが不要になります。

ダイレクトタイプは、250A以上でもCTが必要なく、回路を直接電力量計に接続するタイプです。

下記の記事でも紹介していますが、 活線状態のCT二次側を開放状態にすることは厳禁です。

CT(変流器)は開放NG、VT(変圧器)は短絡NGの理由を解説!

電力量計のCTは、貫通タイプが主流になりますが、活きたケーブルにCTを貫通させた状態でCTの二次側を開放してしまうと、開放部分で高電圧が発生し大変危険です。

焼損事故になりますのでCT二次側の開放にならないような処置が必要です。

そのため、CTが不要となった場合は原則撤去するようにします。

盤内や現地の状況によりやむを得ずCT撤去できない場合は、二次側端子を電線等で短絡するようにしてください。

・不要となったCTは原則撤去
・撤去できない場合はCT二次側を短絡する

CT短絡位置

施工後のチェックは怠らずに

仕様のチェック

当然のことですが、機器更新後に既存の電力量計と更新後の電力量計が同一の仕様であるかを確認しましょう。

確認すべき項目は以下です。

【電力量計の確認項目】
・型式
・電気方式(相線式)
・容量
・パルス単位

型式はもちろんですが、相線式を間違えると正しい計測ができませんので単相か三相かの確認を行います。

容量は、だいたいブレーカーの容量に合わせているかと思います。

容量が少ないと機器が損傷してしましますので、しっかりと確認しましょう。

パルス単位も自動検針をしている場合は重要な項目ですので間違えがないようにします。

試験関係の実施

更新工事の施工が完了しましたら試験関係を実施します。

試験項目は以下です。

【施工後の試験】
・絶縁抵抗測定
・回路の短絡チェック
・電圧測定
・検相確認(三相回路)
・トルクチェック
・模擬パルスによるパルスチェック

施工した回路のブレーカーを投入する前に対地間絶縁抵抗測定と、線間の抵抗値をはかり短絡がないかを確認します。

問題なければブレーカーを投入しテスターで電圧を測定します。

三相回路は各相間で使用電圧の200Vが出ていること、単相回路はR-Tで200V、R-N・T-Nで100Vになっていることを確認します。

三相回路の場合は、更新前に確認した相順と同じかを検相器を使用して確認します。

電力量計の電線接続部分は規定のトルクで締め付けられているかを、トルクレンチを使用して確認します。

トルク値は電力量計の取扱説明書に記載してありますので目を通しておきましょう。

自動検針をしている場合は、パルス線の接続変えを行なっているので、しっかりとパルスが出るかを確認します。

これは中央監視側でプリセットすることが前提となりますが、パルスの端子部分で短絡し(模擬パルス出力)、中央監視側で表示値が増えるかを確認します。

まとめ

電力量計の設置や更新自体は、ビスで取り付けて電線を接続する程度ですので、そこまで難易度の高いものではないですが、課金しているものは料金が発生しますので不具合のもととなります。

たくさんの留意事項がありますのでこの記事を参考に施工していただければと思います。

それではまた、ご安全に!

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