分電盤やプルボックスに電線管を接続する際、避けて通れないのが「穴あけ作業」です。
ホルソーでの穴あけも一般的ですが、現場でより「速く」「綺麗に」「静かに」作業を完結させるなら、ノックアウトパンチ(ノックパン)の右に出るものはありません。
油圧の力で大きな穴も楽々開けられ、私も最初に使用したときは感動した覚えがあります。
しかし、一歩間違えると「下穴がズレた」「刃を痛めてしまった」という失敗も起こりがちです。
今回は、ノックアウトパンチの基本的な使い方から、現場で差がつくプロのコツまで詳しく解説していきます。
おすすめのノックアウトパンチについては下記記事を参照ください。
盤、ボックス加工の強い味方!おすすめのノックアウトパンチと選び方のポイントを解説
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1. 作業前の準備:サイズ選定の根拠
ノックアウトパンチを使用する際は、接続する電線管のサイズに合った「ダイス」を選定します。
現場では「コマ」と呼ぶかとが多いです。
電気設備技術基準や内線規程では、電線管の接続部は「電気的・機械的に完全に接続すること」と定められています。穴が大きすぎるとボックスコネクタの掛かりが甘くなり、強度が不足するため、適切な刃の選定が必須です。
| 電線管サイズ | 呼び | 外径目安(mm) | ノックパン刃(コマ)のサイズ |
| 厚鋼 G16 / 薄鋼 C19 | 19用 | 約19〜21 | 19(3/4"相当) |
| 厚鋼 G22 / 薄鋼 C25 | 25用 | 約25〜27 | 25(1"相当) |
| 厚鋼 G28 / 薄鋼 C31 | 31用 | 約31〜33 | 31(1-1/4"相当) |
ノックアウトパンチのコマにはサイズの数字が刻印されていますので、サイズについては見てすぐわかります。
基本的にはコマのサイズは、電線管のコネクターのサイズとなっていますので、使用する電線管のサイズを選定すれば問題ありません。
2. ノックアウトパンチの基本的な使い方(5ステップ)
手動油圧式(分離型)を例に、正しい手順を確認しましょう。
今回はその辺の鉄板に、ノックアウトパンチを使って穴あけしてみました。
① 墨出し(ケガキ)
穴をあける中心位置に十字の印を付けます。
この穴あけ作業で位置が決まるので重要な部分です。
大型のプルボックスなど、高額の材料の穴あけをミスるとかなり痛手になるので慎重にいきましょう。
- コツ①:まずは高さを決めていきます。
プルボックスに電線管を接続する際は、電線を支持するためにダクターを使いますね。
このダクターの高さ分を考慮した寸法出しをします。
プルボックスの底から「ダクターの高さ+電線管の外径の半分」が墨出し位置になります。 - コツ②: 次は横方向の寸法です。コネクタの「つば」の大きさを考慮し、隣の管や盤の角と干渉しないか事前に確認しましょう。
状況によりますが、基本的に電線管が1本の場合はプルボックスの芯で問題ないかと思います。
しかし2本3本と接続される場合は、隣同士のコネクターの干渉を考慮する必要があります。
墨出しをしたら、十字の位置にコネクターの芯を置いて並べ、干渉しないか確認しましょう。
② 下穴あけ
シャフト(芯棒)を通すための下穴をあけます。
- 使用工具: ステップドリル(タケノコ)や20mm程度のホルソー。
- 注意: 下穴が大きすぎるとボルトがガタつき、芯がズレる原因になります。ボルト径よりわずかに大きい程度に留めます。
21mmのホルソーがぴったりサイズです。24mmや27mmでも一応いけますが、ずれる可能性がありますので、ノックアウトパンチと21mmのホルソーはセットで揃えておきましょう。


③ 刃(ダイ・パンチ)のセット
- まずレバーの右上にあるバルブ(つまみ)が完全に緩まっていることを確認します。(反時計回り)
- シリンダー側のボルトに「ダイ(受け刃)」をセットします。
- 下穴にボルトを通します。
- 反対側から「パンチ(切り刃)」をねじ込み、手で締まるところまで密着させます。




④ ポンピング(穴あけ)
油圧ポンプのレバーを操作します。
- まず、バルブ(つまみ)を時計回りに回転させて最後まで締めこみます。
- 次にレバーを何度も押し引きして刃を押し込んでいきます。
- 最初は重いですが、ある一点で「パチン!」という音とともに手応えが軽くなります。これが貫通の合図です。
- 重要: 貫通した瞬間に操作をやめてください。無理に押し続けると刃やボルトを痛めます。




⑤ 取り外しと清掃
穴あけが完了したら、バルブをゆるめます。
ボルトを緩めて刃を取り外し、中の切り屑(抜きカス)を捨てます。
パンチにカスが噛み込んでいる場合は、無理に叩かず丁寧に除去しましょう。

3. 現場で失敗しないためのコツ
油圧ボルトの「ネジ山」を守る
一番多い故障が、ボルトのネジ山を潰してしまうことです。
パンチ(切り刃)をセットする際、最後まできっちり締め込まない状態で加圧すると、ネジ山に過度な負担がかかり、一発でボルトがダメになります。 「手で止まるまで確実に回し入れる」のが鉄則です。
塗装剥がれ・バリへの配慮
ノックアウトパンチはバリが出にくい工具ですが、刃が摩耗していると、穴の縁の塗装が大きく剥がれることがあります。
- 対策: 錆止め(タッチアップ)を塗布することで、内線規程が求める「耐食性能の維持」を確保しましょう。
厚板への無理な使用は禁物
標準的なノックアウトパンチは、鋼板であれば3.2mm程度までが限界です。ステンレス(SUS)などの硬い素材に無理に使うと、刃が欠ける原因になります。ステンレスには必ず「ステンレス専用刃」を使用してください。
4. メンテナンスの重要性
使い終わったら、シリンダーやボルトに付着した鉄粉を拭き取り、薄く油を差しておきましょう。
特に油圧ホースの接続部(カプラ)のゴミ噛みは、油漏れの原因になります。
5. まとめ
- 下穴は最小限のサイズであけ、ボルトのガタつきを抑える。
- パンチのねじ込みは最後まで確実に。隙間があるとボルトが折れる原因に。
- 貫通の感触を逃さず、余計な加圧を避ける。
- 切り屑はこまめに捨て、刃のコンディションを保つ。
ノックアウトパンチを正しく使いこなせば、盤加工のスピードは劇的に上がります。道具を大切に扱い、常に精度の高い施工を心がけましょう!
それではまた、ご安全に!