みなさんが使っている照明のスイッチですが、実は片切りと両切りが存在します。
名前の通り、相の片方切るか両方切るかの違いなのですが、それぞれに用途やメリットデメリットがあります。
使い分けですが、結論としては「原則100V回路には片切りスイッチを使用し、200V回路には両切りスイッチを使用する。ただし、コスト面、点滅仕様などを総合的に勘案し、やむを得ない場合は200V回路にも片切りスイッチを使用する」です。
今回は、片切りスイッチと両切りスイッチの違いと、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。
クリックできる目次
片切スイッチと両切スイッチの説明
電源ケーブルは一つの回路に2本の電線があります。
この2本のうち、1本のみ遮断するスイッチを片切りスイッチ、2本とも遮断するスイッチを両切りスイッチといいます。
片切スイッチ
片切りスイッチは最も一般的に使用されているスイッチです。
照明のスイッチのほとんどは片切りスイッチとなります。
片切りスイッチは片線のみに接点があります。
100V回路の場合、L相(ライブ)側をスイッチで入切することが内線規程により義務付けられています。
100V回路は接地相であるN相(ニュートラル)と、非接地相であるL相(ライブ)の2本で配線されます。
N相は一般的に白線、L相は一般的に黒線です。
N相はトランスによりB種接地されていますので対地電圧0Vとなりますので、誤って触れても感電する可能性が低いですが、L相は感電する可能性があります。
そのため、電圧が100VであるL相を切ることで安全に使用できます。
両切スイッチ
両切りスイッチは、主に200V回路で使用されるスイッチです。
100V回路にも使用可能ですが、コスト面と使い勝手から使用されることはないでしょう。
電源の両相をスイッチに入力し、スイッチには2つの接点がありますので同時に両相を遮断することが可能です。
200V回路は、二つの線がどちらも非接地相なので、対地電圧100Vがかかった状態です。
そのため、片切りスイッチの場合は、スイッチを切った状態でも片相の100Vを遮断できませんので、両切りスイッチによって安全に切り離します。
200V回路は、内線規程により両切りスイッチが推奨されています。
片切りスイッチと両切りスイッチの使い分け
コストの違い(スイッチ代、ケーブル代)
スイッチ本体の値段ですが、両切りスイッチの方が片切りスイッチに比べて2倍以上高値になります。
高価な器具ではありませんが、現場で大量に使うようなことがあると、かなりコストに差がでてくるでしょう。
また、配線図を見ていただけるとわかりますが、スイッチへ繋ぐ配線は両切りスイッチの方が多くなります。
両相の配線が必要になりますので、単純に2倍の芯線数です。
また、スイッチが同じボックス内に複数個ある場合で同じ電源であれば、片切りスイッチの場合は、入力側の線をスイッチ間で渡らせ、出力線のみ増やせば問題なく、電線を省力化できます。
例えば、スイッチ2個の場合3芯、3個の場合は4芯といった具合です。
両切りの場合は1個のスイッチに対して必ず4芯必要なので、スイッチが増えれば増える程コストに差が出てきます。
このように両切スイッチは片切スイッチに比べてコストがかかります。
100V、200Vの回路電圧による使い分け
100V回路は、片側にしか電圧がかからないので片切スイッチを使用します。
200V回路についても一般的には片切スイッチで問題ないのですが、洗面所や外部などの水場で利用する場合は感電の危険性が高まりますので、両切スイッチを使用しましょう。
もちろん200V回路は両切スイッチのが安全ですので、コストの兼ね合いを見て、場所を問わず設置しても問題ありません。
3路スイッチや4路スイッチに使えるかの違い
実は、両切スイッチは3路や、4路スイッチに使用できません。
3路や4路とは、複数箇所のスイッチから同じ照明をONOFFできるものですね。
階段や広い部屋、長い廊下などに使われます。
3路スイッチの両切りタイプは、電子機器や制御機器に使用するようなスイッチは存在しますが、照明などの一般的に壁スイッチとして電源をONOFFするようなものは販売されていません。
そのため、3路や4路で使う場合は片切スイッチに限定されます。
両切りスイッチはスイッチ結線しなくていい?
両切りスイッチは、片切スイッチと違いスイッチ結線をわざわざしなくても使うことができます。
片切スイッチはどうしても接続箇所が発生しますが、両切スイッチの場合は、「電源→スイッチ→器具」と配線し、それぞれに電線を接続するだけで問題ありません。
ただし、今後のメンテナンス性を考慮して、点検口などに接続点を設けることが多いです。
配線をやり直したり、照明を増設することがありますからね。
その場合は結線が必要になりますが、片切りスイッチよりもシンプルです。
先程のスイッチ結線をせずに配線をした場合から、途中のケーブルを切ってそのまま繋げたというようなイメージです。
「電源→スイッチ→照明」と両相を色通り結線するだけです。
200V回路に両切りスイッチの取り付け義務はあるの?
200V回路は両方の相に電圧がかかりますので、両切スイッチであるほうが好ましいです。
しかし、200V回路であるからといって、両切スイッチを義務付けられているわけではありません。
3202-6 点滅器の取付け(対応省令:第59条)
略
[注]点滅器は、電路の電圧側に施設(単相3線式の200V回路の場合は、両切りを使用)するのがよい。
実際に、ビルや大型施設では200Vの照明回路が多く使われますが、片切スイッチと両切スイッチがまちまちな状態です。
コスト面や施工性を考慮するとやはり片切スイッチのが使い勝手がよいのですね。
しかし、安全性を考慮し、原則200V回路は両切りを使うといった意識のが良いです。
使用場所、コスト、スイッチ点滅の仕様などの全ての要素を勘案し、どうしてもの場合のみ片切スイッチを検討するようにしましょう。
片切りスイッチと両切りスイッチの見分け方
片切りスイッチと両切りスイッチは、取り付けてある状態ですと見分けがつきません。
裏側を見てみると、片切りは接点のシンボルが一つ、両切りは接点のシンボルが一つ記載されています。
ブレーカーやリモコンリレーについて
両切り、片切りとは一般的にスイッチに対して使用されますが、ブレーカーやリモコンリレーはどうでしょう。
ブレーカーについては、私の知る限り片切りは存在しません。
下の記事でも解説していますが、極数全てを遮断できないとブレーカーとしての役割をはたせないからです。
リモコンリレーは、片切り両切りどちらもあります。
リモコンリレーは、事故電流は上位のブレーカーで保護しますのでスイッチと同じ役割です。
リモコンリレーは基本的に100Vは片切り、200Vは両切りを使用しましょう。
片切スイッチ、両切スイッチの使い方まとめ
片切りスイッチと、両切りスイッチを比較するとそれぞれに特徴がありましたね。
総合的に見ると両切りスイッチのデメリットのが多い印象であると思います。
ということで、使い分けについてはメリットデメリットで判断するのではなく「原則100V回路には片切りスイッチを使用し、200V回路には両切りスイッチを使用する。ただし、コスト面、点滅仕様などを総合的に勘案し、やむを得ない場合は200V回路にも片切りスイッチを使用する」という結論です。
といっても、さすがに200V回路の水場で片切りは問題であると思いますが。
スイッチを選定する際や、現場で施工する際に参考にしていただければと思います。
それではまた、ご安全に!