今回は、電気工事の三種の神器とも言われる接地抵抗計の使い方について解説していきます。
工事屋さんは接地工事の際に、保守点検をする方は屋内で使うことが多いと思います。
おすすめの接地抵抗計は下の記事で紹介しています。
色々なメーカーや機種が販売されていますが、基本的に使い方は変わりませんので、ポイントを押さえるようにしましょう。
測定したい接地極から10mおきに補助極を2箇所つないで測定!これが基本となります!
それではやっていきましょう!
クリックできる目次
接地抵抗測定とは?
説明の前に、接地抵抗測定とは何か簡単に説明します。
知っている人は読み飛ばしてくださいね。
まず、接地とは異常時の電位上昇や高電圧の侵入等により感電、火災、その他人体に危害を及ぼし設備等への損傷を発生させないように、電流を安全・確実に大地(地面)に逃がす電路となります。
その電路の抵抗値(電気の流れににくさ)を測ることを接地抵抗測定といいます。
例えば漏電が発生した場合、漏れた電気は人体よりも抵抗値の低い接地へと流れます。
よって、接地の抵抗値は低いほうが良好、そんなイメージですね!
安全に事故電流を流せるために、接地は規定の抵抗値以下にしなければいけません。
その抵抗値を確認するための測定試験が接地抵抗測定です。
各接地工事の詳しい抵抗値などは下の記事で解説していますので参照ください。
接地抵抗計の各部名称と機能
各部品の機能

接地抵抗計は5つの部品から構成されています。
各部の機能
- 接地抵抗計本体・・・接地抵抗値が表示される機器本体です。こちらで測定のスタートを行います。
- 測定コード・・・機種によって黒か緑のコードになります。測定したい接地極(アース線やアース棒)に接続します。
- 補助接地棒・・・測定に必要な補助極を地面に打ち込むための棒です。2本付属しています。
- 補助接地極用コード(C)・・・補助接地棒に接続します。約20mの赤色のコードです。
- 補助接地極用コード(P)・・・補助接地棒に接続します。約10mの黄色のコードです。
写真は表示部がデジタル式ですが、針が触れるタイプのアナログ式のものも販売されています。
また、写真のものはレンジが自動調整されますが、測定レンジを切り替えるタイプもあります。
測定レンジ切り替えタイプの場合、最初は100Ωなどの大きいレンジで測定し、アース棒を増やして打つにつれて接地抵抗が下がってきたら、小さいレンジに切り替え細かい値を読むようにしましょう。
接地抵抗計本体の各部機能

電源ボタンは接地抵抗計本体の電源を入れるボタンですが、測定レンジ切り替えのタイプはレンジのつまみをまわすことによって電源が入るようになっています。
高機能なものは、測定値データをBluetoothで飛ばすことができたりと他にもボタンがありますが、機種によって違いますのでそれぞれ取扱説明書を参考にしてみてください。
基本的には、電源を入れて測定ボタンをオンで測定はできます。
それから接地抵抗計本体には、各コードを接続する端子があります。
それぞれE、P、Cと表示がされています。
接地抵抗計の使い方(3電極法、精密測定)
3極法は、精密測定とも呼ばれ、正確な数値を測定することができます。
補助極を要するため、広い敷地が必要になりますが、新規に接地工事を行うような場合は、新築のようなさら地ですので問題となることは少ないでしょう。
測定手順①接地抵抗計にコードを接続する

まず、接地抵抗計の三つの端子にそれぞれのコードを接続します。
Eは接地極に接続する「測定コード」(黒または緑)を接続します。
Pには補助接地極用コード(黄色)を接続します。
Cには補助接地極用コード(赤色)を接続します。
基本的に接地抵抗計本体の端子部の色と同じ色のコードを接続すれば問題ありません。
E・・・接地極(黒または緑)
P・・・補助極(黄色)
C・・・補助極(赤色)
測定手順②接地抵抗計の機能試験
接地抵抗計が正常に機能するかチェックします。
以下の各項目のチェックが必要になりますが、各チェックの操作は機種ごとに違いますので、取扱説明書を確認することをおすすめします。
・バッテリーチェックをする
デジタル表示でバッテリー表示があるものは、画面を見てバッテリーがあるか確認しましょう。
アナログなどの表示がないタイプは、レンジ切り替えスイッチをBATT(電池チェック)に切り替え、測定ボタンを押します。
針がBATTの帯内にあれば問題ありません。
・コードの機能確認
接地抵抗計の本体に接続した「E」「P」「C」のコードの先端を3本同時に短絡(接触させる)します。
この状態で測定ボタンを押し測定します。
測定値が0Ωを表示していればコードは正常です。
0Ωを表示していない場合は、コードに異常がありますので、接続端子にしっかりと挿さっているか確認しましょう。
また、0Ωを表示しない場合は断線している可能性もあります。
測定手順③測定物に測定コードを接続する

測定したい対象物(アース棒やアース線)に測定コードを接続します。
ワニグチクリップになってない場合はワニグチに取り替えましょう。
測定手順④補助接地極用コードを配線する

黄色と赤、2本のコードを配線します。
配線の長さは黄色(P)が10m、赤(C)が20m、になるように、測定したい対象物から一直線になるように配線します。
要は、測定したい接地極を0mとし「接地極→P極→C極」の順に10m間隔になるようにします。
ただし、距離を測って配線しなくても大丈夫ですよ。
付属の2本の補助接地極用コードは、それぞれ元々10m、20mの長さになっていますので、気にせず全部引き伸ばしてしまいましょう。
20mの距離が必要になりますので、障害物がない広いところを狙って引き伸ばします。
一直線が理想ですが、どうしても障害物がある場合は、図のようにP極の角度が100度以上であれば、ほとんど測定値に誤差なく測定することができます。

測定手順⑤

引き伸ばしたコードの位置に、補助接地棒を打ち込みます。
セットハンマーなどでトントンし、ある程度打ち込めればOKです。

補助接地棒を打ち込みましたら、それぞれのコードのワニグチクリップを補助接地棒に取り付けます。
これで配線準備は完了です。
測定手順⑥地電圧チェック
配線、接続準備が完了しましたら、測定前に地電圧のチェックをします。
地電圧とは、通常大地は0Vですが、周囲の影響により電位上昇が発生している状況です。
これが高いと、測定した接地抵抗値に大きな誤差が生じます。
ほとんどの接地抵抗計は10Ω以下で良判定としています。
地電圧上昇は、既設の接地が機器に繋がっていて、漏れ電流が発生していると起きる現象ですので、新規で接地工事をする場合は問題ないことが多いですが、一応チェックすると良いでしょう。
デジタルタイプの場合は、電源を入れると自動的にディスプレイに地電圧が表示されます。
アナログタイプの場合は、切り替えスイッチを「Vマーク」に切り替えると測定することができます。
測定手順⑦測定ボタンを押し測定開始

ここまできたら、あとは測定するだけです。
デジタルタイプの場合は「MEASURA」ボタンを押し、測定値を読みます。
アナログタイプの場合は「MEASURA」ボタンを押しながら、切り替えレンジを100Ω、10Ωなど適当なレンジに合わせ、表示値を読みます。
接地抵抗値は下表に示す値以下であることを確認してください。
測定対象の接地がどの種類であるかを確認しましょう。
接地工事の種類 | 接地抵抗値 |
A種 | 10Ω |
B種 | 電力会社と協議により決定 |
C種 | 10Ω |
D種 | 100Ω |
接地抵抗計の使い方(2電極法、簡易測定法)
2電極法のメリット、デメリット
2電極法とは簡易測定法とも呼ばれ、補助接地極がいらないので狭い場所でも測定できる手法です。
ただし、対象はD種接地に限られます。
また、既存のB種接地を使用しなければ測定できず、B種接地抵抗値の合算値が表示されますので、3電極法に比べ正確な数値ではなく限定されたシチュエーションのみで使える手法です。
既存のB種接地は、コンセントのニュートラル側、またはブレーカーの中性線を一般的に使用します。
水道管でも代用できます。
例えば、住宅のアース付きコンセントでD種接地の抵抗値を測定したい場合に利用されます。
2電極法のメリット
・補助極がいらないので狭い場所でも測定できる
・作業手順が簡素なので時間がかからない
2電極法のデメリット
・対象がD種に限られる
・既存のB種接地または水道管が必要
・B種との合成抵抗になるので正確でない
2電極法専用の小型の接地抵抗計が販売されています。

2電極法の測定方法

小型のものは持ち運びに便利ですが、一般の接地抵抗計でももちろん2電極法で測定可能ですよ!
以下に手順を説明していきます。
各手順の詳細やチェック作業は3電極法と重複しますので割愛させていただきます。
測定手順①接地抵抗計の設定で2電極法に設定する。
測定手順②測定したい対象物に測定コードを接続します。
測定手順④補助接地極コード(C)をB種接地または水道管に接続します。
※補助接地極用コード(P)は使用しません。機種によってはCのコードとPのコードを短絡させる必要があります。
測定手順⑤測定ボタンを押し測定し、表示値を読みます。
測定手順⑥B種接地を使用した場合は、表示値からB種接地抵抗値の値を引きます。この時B種接地抵抗値がいくつかは正確にはわからないかと思います。数十Ωであることが多いので、数十Ω引いてだいたい規定値であることが確認できれば良いかと思います。
※コンセントにて測定する場合は、コード先端をワニグチではなくプローブタイプに付け替えます。
2電極法の注意点
2電極法で測定する場合は、必ず2電極法の設定に切り替えてください。
接地抵抗を測定する際、接地抵抗計から電流を流します。
この電流は交流ですので、3電極法の設定のままですと、電流値が高く測定することによって漏電遮断器をトリップさせてしまう可能性があります。
例えば、コンセントのニュートラルを使用する場合、ニュートラルに電流が流れることになります。
このとき、コンセント回路の相間の電流値の差異を検知して、漏電遮断器が作動する場合があります。
2電極法に設定すると、流す電流値が4mA程度となりますので、漏電遮断器が作動する可能性が低くなります。
しかし、感度電流が低い漏電遮断器ですと作動する場合がありますので、2電極法で測定する際は回路負荷に何があるかなどの状況判断を確実に行ってから実施することをおすすめします。
補助極棒が打てない時は接地網を使おう!

補助極棒が打てないという状況が稀にあるかと思います。
新築のような建屋がまだ建っていなく、平地もまだ仕上がってない状況でしたら問題ありませんが、例えば既存の物件に新規で単独接地をするようなことがあると困ってしまいますよね。
敷地内の駐車場や道路は全てアスファルトで仕上がってしまっている状況です。
このような場合は、「接地網」を使用します。
接地網を本来接地極棒を打ち込む大地と見立てて使用するのです。
使い方ですが、3電極法の地面を接地網に変えただけです。
接地極用コードを10m間隔で配線し、接地極棒を打ちたい場所に接地網をセットします。
接地網はアスファルトと一体化させるために十分に水で濡らしてください。
接地網の上に接地極棒を置いて接地極リードを接続して測定します。
注意点としては、コンクリートは水を浸透させないので接地網が使用できません。
補助極が打てない際は、2電極法の選択肢もありますが、「2電極法は対象がD種のみ・既存のB種接地や水道管が必要」といった制限がありますので、接地工事の際は接地網を使用する方法が一番現実的となります。
まとめ
- 接地抵抗測定は3電極法が基本!
- 2電極法は、状況が限定される
- 接地極が打てない時は接地網を使おう!
アースの大元、接地工事の機能を測定する「接地抵抗測定」の説明でした。
3電極法が一番正確ですが、色々な測定方法がありますので、状況に応じて使い分けてみましょう。
この記事が現場のお役に立てれば幸いです。
それではまた、ご安全に!