断路器は、受変電設備を構成する重要設備の一つです。
受変電設備とは高圧受電する建物には必ず設けられています。
キュービクルのような箱体のものや、電気室のような部屋が設備となっている場所もあります。
断路器はその中の一つの機器として重要な役割を担っています。
断路器は、どこに設置され、どのような役割があるのでしょうか。
今回は断路器について解説していきます。
クリックできる目次
断路器とは?
断路器は、高圧受変電設備を構成する機器の一つです。
DSやディスコンなどと呼ばれ、キュービクルの内部や開放型であれば電気室内に設置されています。
工事や法定点検の停電の際に開放し、高圧電路を確実に切り離す目的で使用されます。
設置場所は主にVCB(遮断器)の一次側(受電側に最も近い部分)に設置されています。
下図は一般的な受変電設備の単線結線図です。
特徴としては、VCBと違い開閉部分がむき出しとなっていて、消弧能力がないため負荷電流や故障電流の遮断ができません。
つまり、電流が流れている場合は切り離しできないということです。
電気を遮断する時、開閉部(接点)が切り離されます。
接点が切り離される時、高圧の場合、電圧が高いので電気を流そうとする力が強く、空気が絶縁破壊されて接点間の空気を流れてしまいます。
これをアークというのですが、VCBやLBSはアークを消弧する能力がありますが、断路器はただの接点ですのでそのような機能がありません。
そのため、無負荷状態での操作が原則となります。
一応、無負荷であれば有電圧(電圧がかかった状態)は切り離すことができます。
また、VCBのように継電器による地絡や短絡電流の保護機能もありません。
回路の切り分け機能しか持たない単なる開閉器ですので、開閉部が三つあるという非常にシンプルな作りです。
断路器の具体的な役割は?
断路器は、負荷の遮断能力がないのでVCBの下位互換では?
そんなことはありません!断路器はメンテナンスにおいて重要な機器なのです。
以下に役割を説明していきます。
切り離しが目視でわかる!
断路器は、開閉部分がむき出しなので、電路が切り離されているかが目視でわかります。
VCBなどの遮断器は、消弧能力を有するが故に、箱体で開閉部が隠れてしまっています。
やはり、外部から開閉状況が容易にわかりますので、安全上でも安心感がありますよね!
電路の確実な開閉を必要とするような受変電設備では重要です。
断路器を切って二重の安全対策
もちろんVCBで遮断が基本ですが、断路器があることによって切り離し部分が2段構えとなります。
高圧電路は活線部分に誤って触れれば死傷事故に繋がる大変危険な設備です。
より安全に留意するといった意味で断路器は重要な役割があるのです。
短絡接地器具の取り付け場所
停電作業の際は、必ず「短絡接地器具」という器具を保安接地という目的で取り付けます。
基本的に短絡接地器具の取り付けは断路器の一次側にて行います。
断路器がない場合、適切な取り付け場所がありません。
断路器は開閉部分がむき出しているので簡単に取り付けできます。
また、断路器はキュービクルの引き込みの回路的に上部に設置されますので、より送電側に近い部分で短絡接地器具を取り付けることにより、万が一の誤送電があった場合に短絡により継電器を作動します。
上部で送電を保護しますので、誤送電した電気が送電され続けるという心配がありません。
短絡接地器具については下記の記事を参照ください。
絶縁抵抗測定の際の切り分けに
工事完了後や法定点検時に、電路の機能試験として高圧絶縁抵抗測定試験を実施します。
その際、断路器を切り離した状態で、引き込み部と機器一括に分けて測定します。
VCBで測定することもできなくはないですが、VCBを投入した状態でVCBの内部も含めた絶縁抵抗測定をする必要があるため、断路器は重要な存在となります。
また、キュービクル式の場合は断路器が操作扉から手の届く場所にありますので、測定しやすいですよね!
断路器の操作方法と注意点
断路器の生切りは絶対にダメ!
断路器は負荷電流の遮断能力がありません。
負荷電流が流れている状態で開閉してしまうとアークが飛び散り、機器の焼損だけではなく、人体も大火傷してしまい大変なことになります。
「生切り」とは負荷電流がかかった状態で断路器を切ることです。
生切りは絶対に行ってはならない禁止事項なのです。
そのため、停電操作の際は、遮断能力のあるVCBで先に遮断してから、負荷電流が流れていないことを確認して、断路器を開放という手順となります。
逆に復電時は、先に断路器を投入してから、VCBを投入します。
PASやUGSで完全に停電状態であればよいのですが、その辺の手順は手順書を作成してしっかりと準備をしましょう。
また、VCBが遮断していないと断路器を開閉できないようなインターロックを組まれている設備もありますが、そのような場所ばかりではありません。
しっかりと手順を先に決めておく必要があります。
停電の詳しい手順は下記の記事を参照ください。
開放・投入はディスコン棒で勢いよく!
断路器の操作はディスコン棒を使用します。
キュービクルや電気室の高圧受電盤の近くに備えられていますので探してみてください。
ディスコン棒は長さ1mくらいで、先端に断路器の刃をひっかける突起が付いたものとなります。
・断路器開放手順
操作の前に必ず高圧絶縁ゴム手袋を着用しましょう。
そして、VCBが開放されているか確認しましょう。
開放の操作方法ですが、まず、ディスコン棒の先端の突起を断路器の先の丸い穴(フック穴)に引っ掛けます。
引っ掛けたら開閉部がほんの少し離れるまで引き、そこで止めます。
この時、少し離すのがポイントです。
少し接触していると、有電圧の場合に、バチバチと火花が散ります。
この少し離して様子を見るのは、負荷電流が流れていなことが前提ですが、万が一流れていた場合に被害を少なくするためです。(2段切り)
開閉部が少し離れた状態で、負荷状態を確認し(アークが飛ばないか確認)、この状態で一気に手前に引きます。
高圧断路器は一括開放できないので、この作業を3回繰り返します。
これで開放操作は完了です。
開放手順
①高圧絶縁手袋着用
②VCB開放確認
③ディスコン棒を断路器に引っ掛ける
④開閉部が少し離れるまで引き、一旦止める
⑤アークが飛ばないことを確認し一気に引く
・断路器投入手順
断路器を投入する前に、VCBが開放されているか確認します。
開放のときと同じように、断路器の穴にディスコン棒の突起を入れ一気に投入します。
この時、ゆっくり投入すると有電圧の場合、接触した部分がバチバチ火花をたてますので勢いよく入れましょう。
また、勢いが足りないと開閉部がロックされず、接触不良になる可能性があります。
しっかりと投入されていれば、「ガチャ」とはまった感覚があります。
投入が完了しましたら、そのまま念のためディスコン棒をコンコンと投入方向につつき、完全に投入されているかを確認します。
この作業を3回繰り返したら完了です。
投入手順
①高圧絶縁手袋着用
②VCB開放確認
③ディスコン棒を引っ掛け勢いよく投入
④投入方向に「コンコン」とつつき確認する
まとめ
まとめ
- 断路器は遮断能力のない単なる開閉器
- 開閉部がむき出しが故の色々な利点がある
- 断路器の生切りは厳禁
- 開放操作は2段切りがポイント
- 投入操作は勢いよく!
断路器は受変電設備を構築するにあたって大変重要な設備というのがわかりましたね!
全く脇役なんかではありません。
操作に関しては、記載の通り注意しなければいけない事項がありますので、正しい知識を持って操作するようにしましょう。
それではまた、ご安全に!