容量増設等で、ケーブル2条引きでお悩みになったことはないでしょうか?
状況によっては、とても有効な配線方法ですが、内線規程で細かく規程されています。
今回は、ダブル配線について注意事項も含めて詳しく解説していきます。
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ダブル配線とは?
ダブル配線とは、ケーブルの「2条引き」などと呼ばれ、内線規程では「電線の並列使用」として規定されています。
同じサイズのケーブルを2本並列に配線し接続することで、単純にケーブルの許容電流が2倍となるため、大電流の送電や容量増設の際に使用される手法です。
並列というと回路っぽく聞こえますが、単純に同回路にケーブルを2本配線してケーブルのサイズを太くしているというイメージです。
大電流が必要なプラントの物件や、一般的な施設でも非常用発電機回路や高圧変圧器の2次側低圧幹線など割と見られます。
新設時に大電流を送電するために計画される場合と、改修工事の際に容量増設のために計画される場合の2パターンがあります。
どんな場面で施工される?
大電流回路に使用される
これは、新設時に設計されるパターンです。
使用される幹線ケーブルのサイズは、重量や施工性を考慮して、一般的にはCVTの325SQまどとなります。
325SQの許容電流は600A程度ですので、例えば800Aや1000Aとなる大電流回路や、その容量で送電する必要がある場合は、それ以上のケーブルを使うか、バスダクトを使用する必要があります。
太いケーブルやバスダクトは、材料や施工単価が高くコストがかかる上に時間も要するため、施工とコストの省力化ということでダブル配線を使用します。
ダブル配線は、単純にケーブルの許容電流が2倍になりますので、例えば、800Aの電流を送電したい場合は、200SQのCVTを2条引きで検討します。
200SQの許容電流は465Aですので、
465×2=930A
これで800A以上になりますね。
(ここから、低減率や電圧降下も検討する必要があります。)
回路容量増量に使用される
これは、改修工事の際に、追加並列配線で計画されるパターンです。
分電盤を更新して分電盤容量が増えたり、機器更新でモーターが大きいものに入れ替わったりなど、改修工事ではケーブルの容量を増やす必要がある場合があります。
そういった場合にダブル配線を使用します。
例えば、主幹ブレーカー150Aの分電盤の幹線にCVT60SQを使用していて、300A主幹の分電盤に更新する場合、既存の幹線ルートにCVT60SQを並列に配線して接続すればOKとなります。
ダブル配線を使わない場合、60SQを一度撤去して、新しく許容電流300Aを満たす150SQのケーブルを引き直す必要があります。
この場合、ケーブル代も高くなりますし、手間も増えますよね。
ダブル配線でしたら、コストと手間を大幅に削減できます。
内線規程を確認
内線規程では次のように規程されています。
現時点では、義務事項ではなく勧告事項となっています。
1335-9 [電線の並列使用]
屋内において、電線を並列にしようする場合は、次の各号により施設する。(勧告)
①並列に使用する各電線の太さは、銅線にあっては断面積50㎟以上、アルミ線にあっては断面積80㎟以上であること。
②並列に使用する電線は、同一導体、同一太さ及び同一長さであること。
③供給点及び受電点における電線の接続は、次のいずれかによること。
a.同極の各電線は、同一ターミナルラグに完全に接続すること(ろう付けによる場合のターミナルラグは、各電線ごとに挿入穴を備えたものであること。)。
b.同極の各電線のターミナルラグは、同一の導体に2個以上のリベット又は2個以上のねじでゆるまないように確実に接続すること。
c.その他電流の不平衡をきたさないこと。
④並列に使用する電線は、おのおのにヒューズを装着しないこと(共用ヒューズは、差し支えない。)
引用:内線規程
それぞれの項目について説明していきます。
①電線の太さについて
銅線の場合は、50㎟とありますのでSQ(スケア)単位に変換すると60SQ以上のケーブルを使用する必要があります。
アルミ線の場合は、80㎟とありますので100SQ以上のケーブルを使用する必要があります。
太さを規程している理由は、万が一並列ケーブルの両線で不平衡が起きた場合、両線に流れる電流値に差が出ます。
その際に、細いケーブルですと許容電流を簡単に超えてしまう可能性があるため、余裕のあるケーブルサイズとし発熱の危険性を低減させるためです。
銅線は60SQ以上
アルミ線は100SQ以上
②両電線の種類と太さと長さについて
並列に配線するケーブルの、種類と太さと長さは同一にしなければいけません。
これは、並列したケーブルのインピーダンス(抵抗)を同一にすることによって、流れる電流値を同じにするためです。
インピーダンスが同一ではなく、流れる電流値に差が出てバランスが悪くなると、片方のケーブルに多く電流が流れ許容電流を超え、発熱に至る可能性があります。
ケーブルの「種類」を同一にするというのは、ケーブルの種類やメーカーによって、同一サイズでも若干インピーダンスが変わってくるためです。
また、ケーブルの「太さ」と「長さ」を同一にするというのも同様で、太さと長さが変わることでインピーダンスも変化します。
電線の抵抗は、長さに比例し、太さに反比例します。
ケーブルの種類と太さと長さを同一にする
③接続に使う端子について
内線規程に記載のある、ターミナルラグとは端子のことです。
③-aにて「同極の各電線は、同一ターミナルラグに完全に接続すること」とありますが、同じ相の電線2本を同じ端子に圧着するということです。
しかし、現実的には実践できていなというのが現状です。(一応、勧告事項ですので、物理的に不可能な部分については許容しましょう)
ケーブルの太さの規程で、銅線では60SQ以上ですが、ケーブルが太くなればなるほど端子サイズも大きくなります。
それを2本同時に圧着となるとかなり厳しいのが現実です。
そのため、各ケーブルをそれぞれ端子に圧着し、端子を背中合わせにして接続することが多いです。
次に、③-aには「同一の導体に2個以上のリベット又は2個以上のねじでゆるまないように確実に接続すること。」とあります。
これは、端子を2つ以上のボルトで固定しなさいよということですので「二つ穴端子」を使用する必要があります。
二つ穴端子を、各ケーブルに圧着して、背中合わせにして接続します。
ブレーカーの接続の場合は、二つ穴端子で接続することはできませんので、盤やキュービクルを制作する際に、銅バーで接続できるようにしましょう。
この部分も、もちろん規程通りに施工することが望ましいですが、既存の盤やブレーカーの場合は厳しかったりしますので、状況を見て判断してみてください。
二つ穴端子を使用し、背面を合わせて接続する
④ヒューズについて
特定の回路には、短絡保護としてヒューズをつけることがあります。
当然の話ですが、ヒューズを取り付ける場合は並列した両方のケーブルに取り付ける必要があります。
一つの電線にのみヒューズを取り付けると、短絡や過負荷があった際にヒューズを取り付けたケーブルだけが遮断されます。
ヒューズを取り付けていないケーブルは過負荷保護されず、片側のケーブルは遮断されているので単純に回路の許容電流が半分になります。
並列接続する回路は低圧幹線が多いので、ブレーカーの取り付けが一般的でヒューズで保護ということは少ないと思いますが、頭の片隅に入れておきましょう。
まとめ
「電線の並列使用」については、内戦規程において現時点は勧告事項ですので、絶対ではないです。
ただし、できる部分についてはなるべく規程どうりに施工してみましょう。
端子についての規定は厳しい状況もありますが、電線の「同一種類・太さ・長さ」については最低限守るべきかと思います。
万が一の不具合にも説明がつきますのでしっかりと施工しましょう。
それではまた、ご安全に!