今回は、三相3線回路の使用前点検の必須計器、検相器のおすすめと使い方を紹介いたします。
コンセントの測定に便利な接触式と、安心で簡単計測の非接触式のメリット・デメリットなどもあわせて説明していきます。
また、なかなか教えてもらえることがないちょっとした小技まで紹介していきますので是非ご覧ください。
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検相器とは?
検相器とは、三相3線式(動力)電路の相回転の順番を確認する計測器になります。
三相3線式は、3本の線の位相を120度ずつずらすことによって回転力を生み出しています。
エレベーターやポンプ、空調機などの回転機(モーター)を使用する機器に供給する電気方式ですね。
三相3線式の相回転は正相と逆相があり、一般的に正相はR→S→T(赤、白、青)となり逆相はT→S→R(青、白、赤)となります。
動力機器は、機器の配置向きなどの状況により、正相で使用されるものと逆相で使用されるものがあります。
正相か逆相かは、モーターのケーブル接続部分に表示されていますが、この相順を逆にして送電してしまうと、モーターが逆回転し不具合の原因となり、最悪の場合モーターの故障へとつながります。
そのため、三相3線式の電路は使用前点検として必ず検相確認の実施が必須事項となるのです。
検相器の選び方
非接触式
非接触式は、測定部分が絶縁性のプラスチック素材のワニグチクリップとなっており、活線部分が露出していなくても計測できます。
ケーブルを被覆の上から挟み込むだけですので簡単ですし、活線部分に近づかなくてもよいので安全です。
もちろん活線部分を直接挟み込んでも使用できますよ!
デメリットとしては、動力コンセントなど、挟める部分がない場所では使えません。
また、キュービクルにあるバックスタッド式のブレーカーは、盤の表面にケーブルが露出してないのでキュービクル内部に入らないといけないため大変危険となります。
ただし、後述しますが電線を活用することでそういった場所でも非接触式で測定することができます。
このようにちょっとした小技でクリアできたり、上記のような状況が少ないことから非接触式が主流となっています。
動力コンセントの場合も少し手間ですが、一度取り外せば非接触式で電線を挟むことができますね。
メリット
・挟むだけで簡単
・被覆の上から測定できるので安全
デメリット
・動力コンセントの測定は面倒
・バックスタッドのブレーカーは活線近接で危険
接触式(プローブタイプ)
接触式は、計測部分がテスターのようにプローブタイプとなっており、活線部分に接触させることにより計測することができます。
非接触式と異なり、活線部分に直接プローブを当てる必要があります。
動力コンセントなど小さな穴に差し込む必要がある場合などは接触式が便利です。
また、バックスタッド式のブレーカーの場合も表面の端子部分にプローブを接触させることで測定できますね。
プローブタイプもあると便利な場面があります。
メリット
・コンセントや端子台などの狭い部分に便利
デメリット
・活線に近づくため危険
・3本とも接触させる必要があるため測定しづらい
おすすめの検相器
HIOKI(日置電機) PD3129-10 (非接触式)
日置電機の非接触式検相器です。
一番定番の検相器で、電機屋さん、電気主任技術者さんなど、現場ではみなさんかなり使われてる印象です。
機器本体の裏にマグネットが付いてますので、盤に貼り付けることができ使いやすいです。
ランプによる相順確認に加え、ブザー音で正相・逆相で違う音を出してくれるので一瞬で判断できます。
こちらはワイドタイプとなり、外形40mmのケーブルはクランプできますので、一般的に現場でよくでる最大サイズ325SQも測定可能です。
これ一つでおおよその電路は対応可能ですね!
共立電気計器 KEW8033 (接触式)
共立電気計器から接触式の検相器です。
接触式ですので、活線部分に直接接触させることで測定できます。
測定部分は、ブローブとワニグチクリップのを付け替えることができますので、動力コンセントの場合はプローブ、端子台やブレーカーはワニグチクリップと状況によって選択できます。
検相器の使い方
※非接触式の使い方で説明します。接触式も測定部分の形状が違うだけで基本的に使用方法は同じとなります。
手順①検相器のONボタンを押し電源を入れます。
検相器本体の裏にマグネットが付いたタイプもありますので、盤に貼り付けると測定しやすいです。
手順②ケーブルや端子部分をクランプします。
基本的にブレーカーや端子台はケーブルが左から赤、白、黒(チップは青)となっているはずですので、検相器も同じ色でクランプします。
手順③相順を確認します。
ランプが点滅しますので、左から時計回りに点滅したら正相です。
逆にランプが右から反時計回りになったら逆相となります。
手順④相順が確認できたら、クリップを外し電源をオフにしておきましょう。
バックスタッドタイプのブレーカーでも端子がクランプできるサイズであれば非接触式でも問題なく検相できます。
検相作業の注意点
三相3線式の電源を投入する前には必ず検相確認をしましょう。
機器の仕様により正相の機器と逆相の機器があります。
正相の場合はブレーカーから機器の接続までRST(機器側はUVW)の順で赤、白、黒のケーブルが接続されます。
逆相の場合は、基本的にはブレーカーでは正相で送り、機器の接続部分でRとTをひっくり返して接続して逆相とします。
そのため、「検相確認」と「ケーブルの色」と「ケーブル接続の順番」の3つをしっかりと確認する必要があります。
例えば、逆相機器の回路ブレーカーで検相して正相だったからといって、ブレーカーでケーブルを逆に接続しなおして、逆相機器に正相で送るといったことにならないようにしましょう。
特に新設の場合は、機器側の接続確認までしっかりと行ってからブレーカーを投入します。
改修工事で機器やキュービクルを更新する際も同様です。
改修工事の場合は、離線してからつなぎ直すといった作業になるかと思います。
更新前に検相確認を行い、元の色通りに接続し、更新後は更新前と同じ順で検相確認し、相順が更新前と同じことが確認できたらブレーカーを投入しましょう。
ちょっとした小技
低圧検相器で高圧電路を検相する方法
基本的に低圧検相器で高圧電路を直接に検相することはできません。
危険ですので、くれぐれも高圧ケーブルやKIP電線などを低圧検相器で検相しないようにしてください。
しかし、VTT(電圧試験用端子)を利用すれば低圧検相器で検相することができます。
VTTとは、キュービクル内部の各種保護継電器を試験するための端子です。
VT(計器用変圧器)で高圧から低圧に高圧された電源がVTTにはきています。
だいたいキュービクルの「高圧受電盤」を開けた下の方に設置してあります。
左からU、V、Wと表示してありますので、その順番で赤、白、青と検相すれば相順が確認できます。
この方法で、高圧部分を触らずに、安全に高圧の検相確認ができます。
検相器のクリップが小さくて挟めない場合は、試験端子のキャップを外して計測しましょう。
その際は、もちろん端子の金属部分は活線となっていますので、感電しないように注意です。
非接触式で接触式の使い方をする
非接触式の場合、挟めるサイズのものがないと測定が困難ですが、電線を活用することで問題を解決できます。
VVFケーブルやCVケーブルなどのIV線を下の写真のように挟み、電線の先端を活線部分に接触させます。
活線に接触させない側の電線の先端は、安全のためビニルテープで絶縁しておきましょう。
手作り感がすごいですが、これでしっかりと検相できますよ!
動力コンセントも同様の方法で検相可能です。
是非試してみてください。
まとめ
動力ケーブルの相回転を確認する検相器の紹介でした。
シチュエーションによっては、接触式があると便利ですが、工夫をすることによって非接触式でも対応することがわかりましたね!
検相確認は動力ブレーカー投入前の必須事項ですので、確実に実施して高品質の施工に心がけましょう。
それではまた、ご安全に!