電気工事の地墨出し編となります。
必要なものから施工方法まで細かく説明していきます。
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【地墨出しとは】
照明や誘導灯を取り付ける前に最初にやる作業ですね。
器具台数が多いフロアですと数週間かかったりと意外と大変な作業です。
地墨出しとは天井に取り付ける器具下の床に墨を出して、その後の作業工程の目印にするものです。
今後、この墨にレーザーを設置して、LGSの開口墨、天井の墨出し、ボード開口などを行っていきます。
この作業で器具の取り付け位置が決定してしまいますので大変重要な工程となります。
また、このあとの工程は違う人が施工するかもしれません。その為、誰が見てもわかりやすく墨出ししていただきたいと思います。
図面を見て数字を追いながらの作業ですので最初は時間がかかりますが、作業を重ねることで慣れることが重要です。
建屋が何ヶ所もある現場や、大規模で工区順に工事が進められている現場などは割と墨出し作業のチャンスが長期間ありますので積極的に作業すれば早く覚えることができます。
他職の業者さんが入場して現場が錯綜する前にとっとと終わらせてしまいましょう。
それではやっていきます。
準備するもの
準備するモノ
- 天伏(天井伏せ図)
- レーザー墨出し機
- 墨つぼ又はチョークライン
- えんびつ
- 色付きマーカーペン
- スケール(コンベックス)
- 差し金
- ほうき又ははけ
- 相方
天伏とは天井の器具がプロットされた図面になります。基本的には天井と壁のプロット図は別々となっています。
今回は天井の墨出しなので天伏を施工管理の担当者からもらってください。
レーザーか墨つぼかは好みになりますのでやってみて自分に合ったものを使用してください。
個人的にはレーザーをセットするより墨つぼのが早いかなと思います。
えんぴつは下書き用、色付きマジックは本番になります。
差し金は後述しますがあると便利な瞬間が訪れます。
ほうきで床の埃を履きます。埃だらけのままですとすぐにマーカーペンがダメになってしまいますからね。
また、できれば二人作業が良いですね。二人でラインの墨をだして、一人が図面を見ながら寸法指示して、一人が墨出ししていく感じで。一人ですとかなりしんどいので相方を連れていきます。
これで準備は整いました。現場へ向かいましょう!
まずは現場状況の確認
他職は少ないと思いますが、設備屋さんのダクトだったり建築のALCだったりがあちこちに置いてある場合があるので、床に何もないところから優先して作業していきます。
どうしても材料のある場所を進めたい場合は、材料を管理している業者さんに一時的に移動することを伝えてから移動しましょう。
業者さんが現場にいない場合が結構ありますのでその時は後回しです。
もちろんいつまでも後回しではダメですよ。
内装の進行具合や他職との取り合いを気にしながら、材料がどいたタイミングで地墨出しを行います。
図面の確認、基準墨の確認
まず図面のシンボルの確認です。
ほとんどの場合は凡例というシンボルの説明がされた表が図面の脇に記載されていますが、下記表のものは最低限覚えるようにしてください。
この表は一般的なものですが会社によっては表現方法が異なっていますのでご了承ください。
ちなみに表は国土交通省から出版されている「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)」に記載されているものを主に使用しています。
次に図面の確認です。
このような図面があったとします。
まずどこからやりましょう。
基本的には基準墨から追って墨を出していきます。
基準墨とは垂直、水平方向に建物の基準となる墨です。
図面を見るとXの線とYの線があるかと思いますが、これが基準墨です。
X通り、Y通りと呼ばれます。基本的にXからいくつYからいくつで墨は出せるわけです。
しかし、基準墨は柱や壁を通っていますので、柱や壁を避けるために1000ミリなり1500ミリなりずらした返り墨を打っています。
現地にも墨出し屋さんが早い段階で返り墨を打ってくれています。
全ての業者はこの返り墨を基準に工事を進めていきます。
作業開始
さて、返り墨を基準に墨出ししていきますが、一回で多く墨を出したいですよね。
同じラインに器具が多く並んでいる場所を探します。そのラインに墨つぼで墨を打っていきます。
器具が多く並んでいる箇所にラインを打つことで、墨出ししたときに並びが綺麗に通るメリットもあります。
現場の状況はというと下の図面の感じですね。
内装に着手していない現場ですと柱と床しかありません。
そこに基準となる返り墨が打たれているだけです。
墨つぼラインの基準となる印をつける
どこのラインから墨を出してもいいですが、返り墨から近いところから順番に出していくほうがやりやすいです。
遠いほうからですと、図面の寸法を足し合わせていかなければならないので。
まず一番上の打ちたいラインの印をつけていきます。
寸法はX3通りから745の位置ですね。
返り墨はX3通りから1000の位置にありますので1000-745=255返り墨から上方向の位置に印をつけます。
または1000返りの返り墨にスケールの1000を当てて745の位置で印をしても大丈夫です。
印をした位置から順番に下方向に910→910と印をしていきます。
反対側にも同様に三箇所印をします。
ラインの印は返り墨の上で
ラインの印をするときに注意していただきたいのが、必ず返り墨の上に印をつけるということです。
何もないところでスケールを当たるとスケールが斜めに伸びて寸法に誤差がでるからです。
どうしても返り墨の上に印が出せない状況もありますがその際はレーザー墨出し機を使ったり、LGSの地墨があればそこから追うという手はありますが、基本は返り墨を基準とします。
現場で唯一信用できる墨は返り墨(基準墨)であることを良く覚えておきましょう。
墨つぼでラインを打ち縦方向を決める
印が付け終わりましたら墨つぼでラインを打っていきます。
やはりこの作業は二人作業のが効率良くできますね。
横方向の墨を出し器具位置を決定する
ラインが打ち終りましたら、縦方向の位置は決まりです。
次にライン上に横方向の位置を出して器具の墨出しをしていきます。
最初に左上の照明の寸法を出していきましょう。
Y1通りから1370ですので1000返りから370右側に印を付けます。
その印から順番に右方向です。
630+630=1260の位置
1365+1418=2783の位置
630+630=1260の位置
に墨を出していきます。
一番左の器具の墨を出し終わったところで、そこの墨からY2の1000返りまで1827-1000=827であることを必ず確認してください。
ここの寸法が合っていれば、途中の間違いがないことを確認できます。
同じ要領で中段と下段も墨出しします。
本番墨は器具の略称と開口寸法
墨は上の図面のように器具名称の略と開口寸法を書いておきましょう。
せっかく墨を出しても何の墨かわからないと意味がないですよね。
上の場合は直付けの照明は灯直、非常灯は非、スピーカーはSP、火災報知器は火、点検口は点としています。
略し方は特に決まりはありませんが誰でもわかりやすいように書きます。
点検口は建築用と電気設備用と機械設備用の点検口がありそれぞれの業者が墨を出します。
電気設備用の点検口であれば最初の図面のように、墨出しの対象という意味でシンボルに色がついています。
自信がない場合は、施工管理の担当者に確認してください。
今回は電気設備用の点検口ですのでしっかり墨を出します。
ラインから近いところは差し金を使用する
完成は近づいてきましたがまだ左下のドア近くに火災報知器が残っています。
横の寸法は真上に照明器具があるのでそれと同じですよね。
縦の寸法は一本墨つぼでラインを追加してもいいですが、ここは差し金を使用します。
真上の照明器具の墨に差し金の角を当ててラインを基準に直角を出します。
そしてそのまま451の寸法で印をすれば墨を出せます。
↓こんな感じ
この方法はラインから差し金の寸法が足りる箇所でしか使えないですが、こういった場面は何度も訪れるので差し金があるとかなり便利です。
これで全ての墨を出し終わりました。
基本的な要領は以上となります。
複雑な現場もありますが、これを基本として自分なりにやり易い方法を見つけていきましょう。
仕上がり天井がジプトーンの場合
天井仕上げがジプトーンの場合、天井に目地ができます。
器具は目地に入るかボードの芯に入るのが基本となります。
ずれがあると意匠的に違和感がありますのでほとんどの場合はこの2パターンとなります。
稀に目地を無視した設計もありますのでその場合は要確認です。
地墨出しの段階でボードとのずれがないか確認しましょう。
ボードの目地をどのように確認するかというと、建築側で天井割図を基に出している地墨を確認します。
ボード屋さんはこの墨を基準としてボードを貼っていきます。
目地を芯に割付している場合はこの墨がちょうど部屋の中心にきます。
ボードの割り付けの中心の墨が出してありますのでそこから455ごとの間隔に器具があれば目地に入ることになります。
ボード芯の場合は割り付け芯からボード寸法の半分の227.5ごとの間隔に器具があればOKとなります。
地墨出しの段階で確認できていない方が意外と多い印象で、LGDの墨出しやボード開口の段階で「あれ?」となりあわてて確認ということが良くあります。
現場をスムーズに進めるためにも、大きな手間ではないので確認しておくのが良いかと思います。
最後に他設備や設置基準にも意識を向ける
他設備の地墨とズレがあったら
最初の天伏にもありますが真ん中のパッケージエアコンや左の全熱交換器を見てみましょう。
スピーカーや非常灯と芯が通っていますね。
要は内装工事が進んで他の設備が仕上がってきたり、他設備の地墨と自分が出した墨がずれていたらどちらかが間違っているので確認するべきです。
他にはスプリンクラーもわかり易い設備です。
墨にずれがあった場合は他設備の墨を出している業者さんと会話をしてみましょう。
上手にコミュニケーションをとって、お互いに間違った箇所を指摘しながら是正していくことが重要です。
器具の設置基準を確認する
設置基準とは法令で定められた、建物の用途や規模で変わる設置個数や設置位置のことです。
誘導灯、非常灯、非常放送、火災報知器など建築基準法や消防法で定められています。
設置基準はかなり細かく規定されていますがおおよその基準は理解しておくことをおすすめします。
設置基準を満たしていないと消防検査で指摘を受け是正することになるからです。
図面で指示されていないからやらなくていいという考えかただとブーメランで自分に返ってきます。
結局是正するのは自分なのですから。
疑問に感じたことがあったらすぐに施工管理の担当者に確認してください。
「ここは部屋になっているけど火災報知器はいらないの?」
「スピーカーの設置間隔20m以上あるけど大丈夫?」
「ここの誘導灯はB級じゃなくて平気?」
などなど、設計図書及び施工図は完璧ではないので現地の人間が指摘してあげることも重要なのです。
以上となります。
みんなで協力して良い仕事をしましょう。
ご安全に!