感電防止や電位安定の目的で施される接地線には種類があり、抵抗値や太さが規定されています。
接地工事を施工するにあたり前提の知識となりますのでしっかりと習得しましょう。
また、この記事では接地線の太さの選定方法も説明しています。
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接地工事とは
接地とは「アース」とも呼ばれるもので、異常時の電位上昇や高電圧の侵入等により感電、火災、その他人体に危害を及ぼし設備等への損傷を発生させないように、電流を安全・確実に大地(地面)に逃がす電路となります。
その電路を構築するために電線を地面に接続する工事を「接地工事」といいます。
接地工事の施工方法についてはこちらの記事を参照ください。
接地工事の種類
接地工事の種類は大きく分けて4種類あります。
電気設備基準の解釈にそれぞれの接地工事について規定されています。
その他にも現場によってはELCB専用接地や弱電用のクリーンアースなどの接地があります。
A種接地工事
A種接地は高圧以上の電圧を扱う物件で工事することになります。
高圧受電している場合ですので、住宅以上の工事はA種接地が必要となります。
電気設備技術基準の解釈によると、主な接地箇所は下記となります。
・変圧器によって特別高圧電路に結合される高圧電路に施設する放電装置の接地
・特別高圧計器用変成器の2次側電路
・高圧または特別高圧用機器の鉄台(ベース)および金属製外箱の接地
・高圧および特別高圧電路にしようする管その他のケーブルを収める防護装置の金属製部分、金属製の電線接続箱およびケーブルの被覆に使用する金属体の接地
要は高圧ケーブルのシールドや高圧電路の金属管、ケーブルラック、プルボックス等の金属部、キューブクル筐体や高圧機器等に接続されます。
高圧に絡む部分には接続するという認識で問題ありません。
B種接地工事
高圧または特別高圧が低圧と混蝕する恐れがある場合に、低圧電路の保護のために敷設します。
特別高圧同士や高圧同士、特別高圧と高圧の変圧器には施す必要はありません。
電気設備技術基準の解釈によると、主な接地箇所は下記となります。
・高圧電路または特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器の低圧側の中性点、または1端子に施す接地
・高圧電路と低圧電路を結合する変圧器であって、高圧巻線と低圧巻線との間に儲ける金属製の混蝕防止板に施す接地
キュービクル内の高圧変圧器の中性線に緑色の電線が接続されていますよね。
電力会社の送電線から住宅に低圧を供給するために変圧する柱上トランスにも施されています。
B種接地についてはこちらの記事もご覧ください。
C種接地工事
C種接地工事は300Vを超える低圧用機器の機械器具の金属製の台及び外箱などに敷設します。
主な接地工事箇所は下記となります。
・使用電圧300Vを低圧電路に使用する金属管、ケーブルラック、金属ダクト、バスダクトなどの接地
使用電圧300Vを低圧電路に使用する金属管、ケーブルラック、金属ダクト、バスダクトなどの接地があります。
C種接地は接地抵抗値を10Ω以下にできればA種接地と共用できますので共用されている現場が多いです。
また、使用電圧300V以上は動力の400V系統が該当しますが、物件数としては多くはありません。
太陽光設備がある現場ですと直流側がの開放電圧が300Vを超えることが多いので、接続箱や金属管にはC種またはA種との共用接地を施さないといけませんので注意が必要です。
強電と弱電の離隔の際にC種接地を施す場合は例外とされる場合があります。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
D種接地工事
D種接地工事は300V以下の低圧用機器の機械器具の金属製の台及び外箱などに敷設します。
主な接地工事箇所は以下となります。
・高圧計器用変成器の2次電路の接地
・使用電圧300V以下の低圧配線に使用する金属管、金属製可とう電線管、金属線ぴ、金属ダクト、バスダクト、フロアダクト、セルラダクト、ライティングダクトの接地
D種接地工事も大規模現場ですとA種と共用されることが多いです。
戸建の住宅の場合は低圧受電で400V系統も使用しませんので、ほぼD種接地工事になります。
その他、単独接地するもの
接地工事の分類としては上記4種類ですが、単独で接地工事を行う場合があります。
ELCB(漏電遮断器)回路に施す接地は、回り込み防止のため単独で接地工事したものを使う必要があります。
ただし、接地抵抗値が2Ω以下を確保できる場合は共用接地することが可能です。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
次に弱電線のノイズ防止のために単独で接地する場合があります。
他の接地が混じっていない綺麗な接地ということから「クリーンアース」と呼ばれます。
精密機器等の敏感な機器が多くある物件では弱電用に単独接地が求められることがあります。
接地抵抗値
接地抵抗値の上限値は下表の値となります。
接地工事を施工する際の接地抵抗値測定時はこちらを基準とします。
接地工事の種類 | 接地抵抗値 |
A種接地工事 | 10Ω |
C種接地工事 | 10Ω(低圧電路において、地絡を生じた場合に0.5秒以内に該当電路を自動的に遮断する装置を施設するときは500Ω) |
D種接地工事 | 100Ω(低圧電路において、地絡を生じた場合に0.5秒以内に該当電路を自動的に遮断する装置を施設するときは500Ω) |
B種接地工事のみ特殊で、何Ωと規定されているわけではなく計算式により算出するので、物件毎に数値が違います。
電力会社から1線地絡電流を教えてもらって計算をします。
B種接地の接地抵抗値は下表も元に算出します。
接地工事を施す変圧器の種類 当該変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路と低圧側の電路との混蝕により、低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合に、自動的に高圧又は特別高圧の電路を遮断する装置を設ける場合の遮断時間 接地抵抗値(Ω) 下記以外の場合 150/Ig 高圧又は35000V以下の特別高圧の電路と低圧電路を結合するもの 1秒を超え2秒以下 300/Ig 1秒以下 600/Ig (備考) Ig は、当該変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流(単位:A)
引用:電気設備技術基準の解釈
接地線の太さ
接地線は最小の太さが規定されています。
具体的な太さは電気設備技術基準の解釈第17条で規定されています。
まとめると下表となります。
接地工事の種類 | 接地線の種類 |
A種接地工事 | 引張強さ1.0kN以上の容易に腐食しにくい金属線または直径2.6mm以上の軟銅線 |
B種接地工事 | 引張強さ2.46kN以上の容易に腐食しにくい金属線または直径4mm以上の軟銅線(高圧電路または電技解釈第108条に規定する特別高圧架空電線路とを変圧器により結合する場合は、引張強さ1.04kN以上の金属線または直径2.6mm以上の軟銅線 |
C種接地工事・D種接地工事 | 引張強さ0.39kN以上の容易に腐食しにくい金属線または直径1.6mm以上の軟銅線 |
接地線の種類と断面積
接地線は電線の種類に応じて最小断面積が規定されています。
まとめると下表となります。
接地工事の種類 | 接地線の種類 | 接地線の断面積 |
A種接地工事・B種接地工事 | 3種クロロプレンキャブタイヤケーブル、3種クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブル、3種耐熱性エチレンゴムキャプタイヤケーブル、4種クロロプレンキャブタイヤケーブルもしくは4種クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブルの1芯または多芯キャブタイヤケーブルの遮蔽その他の金属体 | 8㎟ |
C種接地工事・D種接地工事 | 多芯コードまたは多心キャブタイヤケーブルの1芯 | 0.75㎟ |
可とう性を有する軟銅より線 | 1.25㎟ |
接地線の太さ選定方法
接地線の太さの算定は内線規定の資料1-3-6に記載されています。
A(断面積)=0.052×In(過電流遮断器の定格電流)の式で求めることができます。
つまり、ブレーカーに定格電流(AT)に0.052をかけます。
例えばブレーカーの主幹ブレーカーが60Aの場合は0.052×60=3.12ですので直近上位の3.5sqを選定します。
ブレーカーが200Aの場合は0.052×200=10.4ですので直近上位の14sqを選定します。
このサイズは最低値ですのでもちろんこれ以上太くなっても問題ありません。
下記の記事では、ここのサイズ選定の部分に関して深掘りし、詳しく解説しています。
最後に
接地の知識は奥が深く電気を理解するにあたり重要な分野になります。
誤った知識のまま施工すると、感電や機器の損傷など様々な災害や不具合へと繋がります。
安全、品質に直結する重要な部分ですので正しい知識を身につけ確実に施工しましょう。
この記事が現場のお役に立てれば幸いです。
それではまた、ご安全に!