今回は「接地端子盤」について解説していきたいと思います。
この記事では、「接地端子盤」の役割と施工上の注意点について説明しています。
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接地端子盤とは?
接地端子盤とは各種接地極の接地抵抗値を測定する盤です。
建物竣工後の主に電気設備の点検保守業務に使用される盤で、具体的には接地抵抗値の試験用です。
建物建築時に各接地極を地面に埋設しますが、その時接地抵抗値を測定し各基準以下であることを確認します。
竣工後の接地抵抗値は自然的な影響、または人為的な影響を受けて変動する可能性があるため、年に一度の年次点検で再測定し基準値以下であることを確認することが定められています。
接地端子盤の内部は各接地極の端子と測定用のP端子とC端子が設けられていて、接地極側の機器側を切り離せる構造となっています。
接地抵抗値を測定する際は補助極であるP端子とC端子を使用し、接地極側を測定していきます。
設置位置は電気室やキュービクルの内部に設置されます。
昔は電気室やキュービクルの近くに「接地端子盤」として個別に設けられていましたが、最近はキュービクル筐体の内部に組み込まれることが多くなりました。
接地抵抗値の測定方法
接地端子盤での接地抵抗値の測定方法は「接地抵抗測定器」を使用します。
おすすめの接地抵抗計については下記の記事を参照ください。
基本的には接地極埋設工事後の測定方法と変わりません。
本来は補助極を10m間隔で打ち込みますが、接地端子盤の場合は地面に打った補助極(赤と黄色の線)が盤まで配線されていますので、ワニグチクリップを補助極端子に挟むだけですね。
測定手順
①まず測定対象の端子台のナットを外しバー切り離します。
接地端子盤によっては切り離し方が異なる場合があります。
(切り離さないと機器接地が全て繋がり正確な値が出ません。)
②次に接地端子盤の補助接地極端子に接地抵抗測定器の補助接地プローブ(ワニグチ)を取り付けます。
P端子は黄色いプローブ、C端子は赤いプローブになります。
③接地抵抗測定器のレンジをバッテリーチェックに合わせたら、プッシュボタンを押しバッテリー残量が規定内であるかを確認します。「BATT.GOOD」まで針が触れれば問題ありません。
④測定用のプローブ(緑)を接地端子盤の測定したい接地極端子に取り付けます。
⑤レンジを「EARTH VOLTAGE」(地電圧チェック)に切り替え地電圧チェックが10V以下であることを確認します。10Vを超えていると正しく測定できません。これは接地線に電圧が流れていないか確認するものです。
⑥測定レンジに合わせます。
1,10,100と複数のレンジがあると思いますので最初は100の最大レンジから始め、測定スイッチを押します。
接地抵抗値が低い場合は順番に低いレンジに合わせ測定します。
接地抵抗値の基準
接地工事の種類 | 接地抵抗値 |
A種 | 10Ω以下 |
B種 | 計算値(注1) |
C種 | 10Ω以下(注2) |
D種 | 100Ω以下(注) |
ELB接地と共用 | 2Ω以下 |
注1変圧器の高圧側または特別高圧側の電路の1線地絡電流値で150を除した値以下
注2但し、地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは500Ω以下。
接地端子盤でやってはいけないこと
接地端子盤は接地極側と機器側を切り離せる構造となっていますが、充電状態(停電前)では絶対に切り離してはいけません。
必ず停電後に切り離すようにしましょう。
充電状態で切り離すと建物全体のアースがなくなったと同じことになり色々な弊害が生じます。
・A種接地の充電状態での切り離し
高圧機器に接続されたA種接地の機能がなくなり、漏電していなくても対地静電容量により各高圧機器、キュービクル筐体に電圧が誘起し人が触れた場合に感電してしまいます。
・B種接地の充電状態での切り離し
中性線の対地電圧が0でなくなるので負荷の対地電圧が変化します。線間電圧としては変化がありませんので一応使用上に問題はありません。
ただし、低圧と高圧が混触した場合、低圧側に異常電圧が発生します。
・C種、D種接地の充電状態での切り離し
各機器や金属体に漏電していた場合、地絡しないので漏電状態が継続します。そのため人が触れた場合に感電します。
また、ケーブルのシールド機能やクリーンアースの機能がなくなるため弱電設備にノイズが発生する可能性があります。
接地端子盤の施工上の注意点
接地端子盤を施工する上で守らなければいけないルールが2つあります。
盤の設置時や改修時の注意事項として覚えておきましょう。
接地極側の配線は分岐しない
埋設した接地極から接地端子盤までの間では分岐等してはいけません。
この間は他の盤や機器のアースに繋いではいけないということですね。
分岐して機器等につないでしまうと、接地端子盤で切り離す意味がなくなってしまします。
接地端子盤による接地抵抗値測定は接地極の純粋な接地抵抗値を測定しなければいけないので、他の機器等が繋がっていると正確な数値を測定できません。
接地極側配線の配管は金属管を使用しない
1350-3 A種、C種又はD種接地工事の施設方法
略
①接地線が外傷を受けるおそれがある場合は、合成樹脂管(厚さ2mm未満の合成樹脂製電線管及びCD管を除く。)などに収めること。ただし、人が触れるおそれがない場合、又はC種接地工事若しくはD種接地工事の接地線は、金属管(ガス鉄管を含む。)を用いて防護することができる
[注]避雷針、避雷器用の接地線は鋼製金属管内に納めないこと。
引用:内線規定
接地極から接地端子盤の間は合成樹脂管を使用するルールとなっています。
内線規程の「避雷針、避雷器用の接地線は鋼製金属管内に納めないこと。」の部分から避雷針用アースは他のアース線と一緒に配管するので、このようなルールとなります。
原理的な理由としては接地線の母線は漏れ電流が集約し多く流れている線ですので、そこから磁界が発生して発熱する恐れがあるためです。
まとめ
まとめ
- 接地端子盤は接地抵抗値を測定するもの
- 充電中は端子を切り離してはいけない
- 接地極から接地端子盤までの配線は分岐しない
- 接地極から接地端子盤までに使用する配管は合成樹脂管
接地工事は奥が深く面白い分野ですよね。
しかし、知識がない状態で操作してしまうと重大な事故へつながる場合もあります。
みなさんもこちらの記事を参考に安全作業していただけると幸いです。
それではまた、ご安全に!