電気工事の中でもトップレベルに使用頻度の高い絶縁抵抗測定器、通称メガーの使い方を今回は説明していきたいと思います。
電気使用前には必ず使用し品質に関わる重要な計器となります。
意外と間違った認識をされている方もいますのでしっかりと使い方をマスターしましょう。
絶縁抵抗測定とは
まずはなぜ絶縁抵抗測定をするのでしょう。
それは電路(ケーブル)に電気的な不具合がないかを調べるためです。
回路のブレーカー投入前の漏電や相間短絡、改修工事で漏電箇所の特定をする際に実施します。
絶縁抵抗測定には下記の2種類があります。
対地間絶縁抵抗測定
対地間絶縁抵抗測定とは漏電を調べる測定となります。
対地間の名前の通り大地(アース)との絶縁がどの程度あるかを測定します。
漏電とは電気が漏れ出すことですが、漏れた電気はアース(接地)へと流れます。これを地絡といいます。
電路とアースの絶縁が確保されていれば地絡は発生しません。
イメージとしては、電路(ケーブル)とアースの間にどの程度の絶縁があるかを測定するものです。
しっかりと絶縁されていれば高い数値がでますが、ケーブルが劣化し絶縁が悪くなるにつれ0に近い数値となります。完全に0の場合アースと電路が完全に導通し、完全地絡の状態ということです。
線間絶縁抵抗測定
線間絶縁抵抗測定は短絡を調べる測定となります。
線間とは名前の通り線と線なのですが、回路は単相でしたら2相(2本)、三相でしたら3相(3本)ケーブルがありますのでケーブル同士で測定します。
ケーブル同士が接触しますと、負荷(抵抗)を介していませんので短絡(ショート)といって大きな電流が流れます。
測定のイメージとしては相間(ケーブルとケーブル)の絶縁がどの程度あるかを測定するものです。
しかし、線間絶縁抵抗測定はあまり測定頻度が高くありません。
理由としてはコンセントに機器が接続されていたり照明器具の回路の場合、相間は抵抗がありますが導通された状態となっているため正確な絶縁抵抗測定値が計測できないからです。
従って機器が接続されていないコンセント回路(相間が解放状態)には有効となりますが、照明器具の回路には使用できません。
しっかりと短絡していないかを調べる場合はテスターの抵抗レンジで調べるのがおすすめです。
メモ
- 対地間は漏電を確認する
- 線間は短絡を確認する
絶縁抵抗測定器の種類
低圧用絶縁抵抗測定器
低圧用の一般的な測定器は測定レンジが50Vから1000Vの間のものが多いです。
使用電圧に応じてレンジを設定して使用します。
50Vレンジは弱電電路に使用したり、コンセントに繋がった機器を故障させないために使用電圧より低い電圧で印加する場合に使用します。
1000Vは高圧電路用のものですが、実際の高圧電路は6600Vなので印加電圧が足りず測定結果が良判定でもその後事故が起きるという事例が発生しています。そのため高圧電路には高圧用の測定器を使用することが推奨されています。
また、測定値の表示がデジタルのものアナログのものがあります。
デジタルタイプのメリットは高い数値を表示できる点です。逆にアナログタイプはほとんどのものが200MΩまでしか表示できず、それ以上は∞表示となります。
ただ、200MΩ以上であれば絶縁性は全く問題なく良判定となりますので個人的には針が触れるアナログのものがわかりやすく良く使われている印象です。
↓アナログタイプ
↓デジタルタイプ
高圧用絶縁抵抗測定器
高圧、特別高圧用の測定器は5000Vや10KVの電圧を印加可能です。
使用電圧に近い電圧を印加することができますので、正確な数値を出すことができます。
高圧用は電気設備保守の業種の方が使用するものですので一般の電気工事で使用することは少ないでしょう。
太陽光発電システム用絶縁抵抗測定器
活線状態の電路を測定できるものも存在します。
太陽光発電設備のパワコンの一次側は日中は直流電流が発電され常に活線状態となります。
そのため太陽光発電設備の直流電路には活線メガーが重宝します。
絶縁抵抗測定器の各部名称
使用方法の説明の前に各部の名称の説明です。
ラインテストリード
ラインテストリードは実際に電圧を印加するリード線になります。
使用電圧に応じて電圧を印加します。
アーステストリード
アーステストリードは対地間絶縁邸測定の際はアース端子に取り付けるものです。
線間の場合は電路に取り付けます。
簡単なイメージはラインテストリードから印加された電圧がアーステストリードに流れなければ絶縁性能が良く、逆に流れてしまえば絶縁性能が悪いということになります。
ラインテストリードとアーステストリード間の絶縁性能を調べるというわけです。
測定ボタン
測定ボタンは電圧を印加するボタンとなります。
このボタンを押している間だけ電圧が印加されます。
ラインテストリードに小さな測定ボタンがあるタイプもあり、そちらが測定しやすくおすすめです。
表示パネル
表示パネルは絶縁抵抗測定値の数値が表示される場所です。
こちらの数値を読み良否判定を行います。
レンジ切替スイッチ
レンジ切替スイッチで印加電圧を切り替えます。
電圧計の機能があるものやバッテリー確認機能がついた機種もあります。
共通の絶縁抵抗測定器の使用方法
実際の使用方法を説明します。
機種によっては多少異なりますが要領は同じですのでやっていきましょう。
まずはバッテリー確認
メガーのバッテリーが切れていないか確認します。
バッテリー用のレンジで確認できるものや、単純にバッテリーランプで確認するものなど機種によって様々ですので取扱説明書を良く確認して実施してください。
測定前に0チェック
測定前に必ず確認するのがゼロチェックです。
ゼロチェックとはメガーが正常に動作するか確認するものです。
ラインテストリードとアーステストリードを故意に短絡させ、表示パネルがゼロを表示しているか確認します。
ラインテストリードとアーステストリードが短絡(完全に接触)している状態=絶縁性能がゼロということです。
間違えないでいただきたいのがゼロチェックはアース端子が確実に接地されているかを確認するものではありません。
あくまでメガーの機能が正常か確認する行為です。
ゼロチェックの実施方法を説明します。
まずアースリードとラインリードをつなげます(短絡させる)。
レンジ切替スイッチを何ボルトでもいいので電圧印加の位置に合わせます。
この状態でテストボタンを押し、電圧を印加します。
表示パネルがゼロを表示させれば正常です。
対地絶縁抵抗測定をする際はよく次の方法でもチェックします。
まず、アースリードを接地端子に接続します。
よくアースリードを盤筐体の関係ない金属部分に接続する方がいますが必ず接地端子に接続してください。
確かに盤の筐体は安全面で接地されていることが通常ですが、稀に接地されていない場合があります。
対地間絶縁抵抗測定は接地との絶縁を測るものですから注意してください。
今度はラインリードを盤筐体の塗装されていない金属部分に接続してテストボタンを押します。
これでゼロが表示されればゼロチェックと盤が接地されていることが同時にわかります。
メモ
- ゼロチェックはメガーの動作確認をするもの
- アースリードは必ず接地端子へ接続する
測定箇所の電源を遮断する
まず、測定箇所が無電圧であることを確認します。
ブレーカーで測定するのであればブレーカーを遮断します。
負荷側(機器側)で測定するのであれば検電器やテスターの電圧測定レンジで無電圧を確認します。
活線状態ですと、メガーから印加した際に二つの電圧が混色した状態となり決して良い状態ではありません。
また、活線状態はトランスのB種接地と繋がった状態となりますので正確な数値が表示されません。
実際に活線状態で測定するとメガーは0MΩを表示します。
誤って活線状態で測定したからといってメガーが故障するようなことはありませんが、決して良い状態ではないので必ず無電圧を確認してください。
測定方法(対地間の場合)
先ほどゼロチェックの際にアースリードを接地端子に接続しましたので、ラインリードを測定したい箇所に接触させます。
ブレーカーの場合は必ず二次側に接触させてください。
接触させた状態でテストボタンを押し電圧を印加します。
印加させた時の表示パネルの数値を読みます。
新品のケーブルや全く問題のないケーブルですとメーターまマックスとなり∞を表示します。
しかし実際には無限ではないので測定値を記載する際は200以上などとしましょう。
測定方法(線間の場合)
線間の場合も対地間と要領はかわりません。
線と線の絶縁を測定したいのですからどちらも線路に接触させます。
ただアースリードはワニグチクリップになっていますのでプローブタイプに交換しましょう。
メガーに付属品として入っていると思います。
絶縁抵抗測定の判定基準
電気設備技術基準の判定基準
低圧電路について電気設備の技術基準では以下のように基準が定められています。
低圧における絶縁抵抗測定値
低圧の電路の絶縁性能
第58条 電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互 間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は,開閉器又は過電流遮断 器で区切ることのできる電路ごとに,次の表の左欄に掲げる電 路の使用電圧の区分に応じ,それぞれ同表の右欄に掲げる値以 上でなければならない。
引用:電気設備技術基準 第58条
300V以下の対地電圧が150V以下とは単相100V、単相200Vのものです。
その他の場合(対地電圧が150V以上となるもの)は三相200V(動力)のものです。
300Vを超えるものは三相400Vのものです。
ですのでまとめると
ポイント
- 単相は0,1MΩ以上
- 動力は0,2MΩ以上
- 400Vは0.4MΩ以上
メガーの測定値が上記数値を上回れば法的にはクリアとなります。
法的にクリアでも数値が低い場合は注意
上記の数値以上でしたら法的にはクリアですが、数値が低い場合は注意が必要です。
新品のケーブルや数十年経過したケーブルでも外傷や湿気等の被害がない場合はメガーは最大値(∞)を表示します。
新品のケーブルで最大値以外はまずあり得ません。
基本的に最大値を表示しないケーブルは少なからず劣化による漏電が発生してると見てよいでしょう。
屋外や風呂場、厨房等の水場では湿気による絶縁低下がよく起こります。
電気設備技術基準の数値は漏電ブレーカーがトリップしないギリギリの数値ぐらいです。
その数値に近いようでしたらかなり絶縁性能が低下し、安全に運用できる状態ではありません。
ですのでそのような電路を発見した際は、一旦は良判定としてもケーブル又は機器の改修工事をお客様に提案することをおすすめします。
最後に
最初にも言いましたが、絶縁抵抗測定は品質に関わる大変重要なことです。
新築のブレーカー投入前はもちろん、改修工事においても電路の工事前、工事後の測定は必ず行ってください。
電気工事の基本作業の一つですね。
ご安全に!