今回はパットハンガーについて説明していきます。
壁や天井に機器を支持することが多い電気工事ではよく使用する材料になります。
そもそもパットハンガーとは何か、使用する際の注意事項から使い方まで紹介します。
パットハンガーとは?
パットハンガーとは主に中空壁(中が空洞になっている壁)に使用するハンガータイプのアンカーになります。
アンカーのイメージはコンクリートやALCなどの壁自体に食い込ませ効かせるものですが、パットハンガーは壁を挟み込むようにして使用します。
全ネジボルトの長さを調整することによって壁の厚さに対応できます。
パットハンガーは株式会社コーシンの製品名ですが、一般的にこのタイプのアンカーはパットハンガーと呼ばれています。
ジェフコム やユニカからも販売されていて、それぞれ製品名はパットアンカー、パットTアンカーになります。
似たような製品にジェフコムのハンガーアンカーやネグロスのITハンガーがありますが、パットハンガーの使いやすい部分は固着ワッシャーが付属していて取り付けてしまえば支えなくても外れないところです。
パットハンガーのおすすめはやはり一番現場で使用されてるイメージがあるコーシンです。
パットハンガーの用途は?どんな場面で使う?
パットハンガーは主にボード面にナットで機器等を支持したい場合に使用します。
中空壁になっていればALCにも使用できますが、ALCアンカーというものがあるのであまりALCには使用されません。
パットハンガーは天井、壁両方に使用できボードの面からボルトを突き出させ固定するイメージです。
例えば、ダクターや照明器具を壁に支持したいけどボードだとビスが効かない、そもそもビスだと耐荷重が心配といった場面で重宝します。
また、角鋼(角パイプ)に全ネジを吊るしたいといった場合、パイラックですと支持できないのでそのような場面でも使用されます。
押出成形セメント板も中空になっているので使用できますね。
電気工事ですとやはり分電盤を壁面に取り付ける場合に使用することが一番多いかと思います。
やはりメーカーはコーシンが圧倒的に多いイメージです。
パットハンガーを使う場面
- ボード面に分電盤、ダクター、照明器具等をナットで取り付けたい
- 天井のボード面に照明器具の設置や全ネジを吊るしたい
- 押出成形セメント板に機器等を取り付けたい
- 角パイプに全ネジを吊るしたい
パットハンガー使用時の注意事項。耐荷重は?
パットハンガーの素材ですがスチール製とSUS(ステンレス)製がありますので屋外や湿気を伴う場所では必ずSUS製を使用するようにしましょう。
次にパットハンガーの耐荷重ですが、ユニカの仕様では最大引張荷重1.2KNとなっています。
kgに変換すると約100kgの重量に耐えられることになります。
小さな金具ですが意外と耐えられますね。
しかし、注意していただきたいのがこれはパットハンガーの耐荷重であって壁材の耐荷重ではありません。
角材は成形板などでしたら心配はいりませんが、ボードという素材はとてももろいのであまり重たいものを支持してしまうとボードの損傷の原因となります。
実際に重たい盤を一枚貼りのボードに支持して、ボードが盛り上がってひびが入った事例もあります。
パットハンガーはボードに直接荷重をかけますのでボードの厚みと設置機器の重量を考慮して施工しなければなりません。
対策としてはボードを貼る前に鉄板やベニアの下地を入れるか、パットハンガー取り付け箇所はLGSのスタッドを狙って直接ボードに荷重をかけないことです。
実際にどのくらいの重量だったらボードに直接支持できるのか?これは感覚の話になってきますが、1枚貼りのボードに下地なしで支持できるのはせいぜい2〜3kgくらいまでです。
2枚貼りでしたら5〜6kg、それ以上の10kgやそれ以上になる場合は下地を入れたりLGSを狙って取り付けましょう。
数十kg、100kgとなる盤は自立盤を検討したほうが無難です。
ボード面に対するパットハンガー使用の検討
- 一般的な照明器具やE25くらいの細めの電線管を支持するダクター→ボード1枚貼りでも可
- 階段通路誘導灯や太めの配管→ボード2枚貼り又は下地を入れる
- 10〜20kgの小型の盤など→必ず下地を入れるかLGSを狙う
- それ以上の重量の大型の分電盤→自立盤を検討
パットハンガーの使用方法
これからはパットハンガーの使用方法の説明ですが、メーカーはコーシンでサイズは電気工事で一番使用する3/8のもので説明します。
まず以下のものを準備します。
準備するもの
- パットハンガー
- 全ネジボルト
- 全ネジカッター
- 径25mmくらいのホルソー
- マイナスドライバー
①取り付けたい位置に墨を出す。
全ネジボルトを突き出したい芯に墨を出します。
②墨を出した位置に穴を開ける
次にパットハンガーを挿入する丸い穴を開けます。
メーカー仕様の貫通穴径は22mmとなっていますが多少大きくても、固着ワッシャーが大きいので問題ありません。
電気工事では21mmと27mmのホルソーを使用することが多いですが、21mmだと少し小さいので27mmで問題ありません。
また、穴が開けばステップドリルでも木キリでもなんでも大丈夫ですが、ボード粉が散らからないホルソーをお勧めします。
③パットハンガーに全ネジボルトを取り付ける
全ネジボルトを適切な長さに切断して、パットハンガー本体にメスのネジになっている部分がありますのでそちらに全ネジボルトを取り付けます。
全ネジボルトの長さは、壁から出したい長さ+50mm程で問題ないです。
あまり短いと調整のときに持ち手がないのでやりにくいですし、長すぎると中空壁に収まらなくなります。
全ネジボルトの長さですが、取るつける壁厚+突き出すボルトの長さ+壁裏に突き出す長さです。
それからこの時点では全ネジボルトはパットハンガーの裏から出ないようにしましょう。
出してしまうとハンガーが固定されてしまいます。
④パットハンガーを穴に挿入します。
ハンガーを挿入していきますが、写真の向きで挿入します。
パットハンガーの短い側をボルトの上にかぶせるようにし長い側から挿入していきます。
長い側のが重いので壁裏に入るとハンガーが倒れ壁と同じ方向に向きます。
その後固着ワッシャーを軽くかけておくとやりやすいです。
下の写真は横から見た状況です。
⑤全ネジボルトを回してロックする
次に全ネジボルト回してパットハンガーを貫通させるようにしてロックし、併せて突き出したいボルト長さに調整します。
ポイントはボルトを引っ張り気味にしながら回します。
⑥固着ワッシャーを回して締め付ける
最後に固着ワッシャーの切れ目にマイナスドライバーを差し込み時計回りに回し締め付けます。
固着ワッシャーは出っ張りがある方が裏側、平らな方が表になります。
これで完成です。
ナットワッシャーを使って取り付けたい機器を支持しましょう。
最後に
パットハンガーは施工の難易度も高くなく、とても便利な材料である反面、ボードへの荷重を考慮しないと不具合へと繋がります。
電気工事では盤取り付け等では必ず使うものになりますので、注意事項に留意してしっかり施工していきましょう。
パットハンガーについての説明でした。みなさんの参考になれば幸いです。
それではまた、ご安全に!
今回紹介した材料