木造の電気工事では必須の材料、ステップルについて解説していきます。
今は木造でも施工性を考慮してFVラックにインシュロックが多くなってきてますが、まだまだコンセントの立ち上がりや細かいところには使われていますね。
天井裏配線、露出配線共にステップルでの配線は美観に直結する部分です。
丁寧な人はとっても綺麗に配線します。
また、打ち方によって漏電や火災などの品質にも関わってくるので正しい知識で施工する必要があります。
そんなステップルとは何かから使い方まで解説していきたいと思います。
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ステップルとは?
ステップルとは絶縁ステップルやビニールステップルといった商品名で販売されていて、多く普及しているメーカーは川口電機のステップルが有名です。
木造建築の柱や梁の部分にケーブルを支持、固定する目的で使用されます。
形状はコの字型の釘のようになっていて、ケーブルをくわえるような形で木部に打ちつけます。
金属製の釘ですので、絶縁を目的にケーブルの接触部分はビニール素材の被覆で覆われています。
ステップルの規格は?
川口電機の規格で説明します。
ステップルは撚り線ですと0.5m㎡から14m㎡、単線ですと1.6mmから2.6のサイズまで規格が存在します。
それぞれのケーブルサイズに適応したステップルを使用します。
適応サイズがない場合はひと回り大きいサイズを使用して対応します。
色は基本的にはグレー、一部のサイズに赤、青、オレンジ、などの色が存在します。
規格は多くありますが、実際に現場ではNo.1(1.6×2 、2.0×2)とNo.2(1.6×3、2.6×2) でほとんど対応できてしまいますのでこの2種類が使われている印象です。
たまにNo.3(2.0×3)を使うくらいでしょうか。
ステップルを使用する際の注意点
電線ではなくケーブルを使用する
ステップルによる配線は電気設備技術基準や内線規程でいうところのケーブル工事に該当します。
壁裏にしても天井裏にしても何も保護されていない状態ですので、保護層のない電線によるステップル配線は不可となります。(接地線は除く)
ステップルによる工事は必ずケーブルを使用しなければいけません。
ケーブルであれば同軸ケーブルやLANケーブルなどの弱電線にも使用できます。
また、電線を使用する場合は必ず配管工事やモールによる施工をしましょう。
ステップルを強く打ち込みすぎない
ステップルの打ち込み専用工具を使用する場合は問題ありませんが、ハンマーで打ち込む場合は注意が必要です。
被覆に食い込むように打ち付けてしまうと、施工当初は問題なかったとしても、時間が経過したあとに絶縁が低下し、漏電や短絡による火災の原因となります。
弱電の場合でも、同軸ケーブルであれば芯線の折れ、LANケーブルであれば通信異常の原因となります。
ステップルを打ち込む際は、軽く支持されている程度で問題ないので強く打ち込まないように注意しましょう。
ケーブルが固定されていればいいので、引っ張ると抜けてしまうくらいの緩さで問題ないです。
ケーブルがよじれた状態で打ち込まない
特にVVFケーブルなどの平形のケーブルは、よじれると立つような形になるので平たくよじれがない状態に比べて盛り上がるようになります。
そのためステップルに押さえられる力が一点に集中するため、より絶縁低下のリスクが高まります。
このように品質面でもそうですが美観にも影響するのでよじれを直して綺麗に配線しましょう。
ステップルでコード類を支持しない
3203-1 コードの使用制限
コードは、電球線および移動電線として使用する場合に限るものとし、固定した配線として施設しないこと。ただし、3205-7(ショウウィンドー、ショウケース及びこれらに類するもんの内部配線)に規定するショウウィンドーショウケースなどの内部に配線する場合は、固定した配線として使用することができる。以下略
引用:内線規程
内線規程に規定されているようにコード類は固定してはいけません。
コードは電線に該当するため、被覆が損傷しやすい構造となっています。
コードが損傷してしまうと漏電や発熱による火災の原因となります。
ステップルに限った話ではありませんが、コード類はあくまで機器の移動として使用するので固定はできません。
ステップルの打ち方
ハンマーを使って打つ方法
ステップル打設の専用工具がありますが、ハンマーを使うのは従来の方法で、頻繁にステップルを使用しない方や施工範囲が狭い場合はハンマーで十分対応できます。
ケーブルとステップルを支えながらハンマーを打つ作業は最初は苦戦すると思いますが、慣れてしまえば素早くできます。
おすすめの電工ハンマーはこちらを参照ください↓
①ケーブルとステップルを支える
利き手でハンマーを持ちますのでケーブルとステップルを片手で支えます。
人差指と親指でステップルをつまみその他の指と手の平でケーブルを支えるイメージです。
ハンマーで叩くスペースを作るのでステップルの下の方をつまむのがポイントです。
②ハンマーで軽く叩く
ステップルの上の方を軽く叩き仮止めをします。
指を打たないように気をつけてくださいね。
ステップルとケーブルが落ちない状態になりましたら、手を離して大丈夫です。
③勢いよくたたく
仮止めされた状態で指も気にする必要はありませんので、勢いよくケーブルが固定されるまで叩きます。
しっかりと固定されたことが確認できたら完成です。
ステップルタッカーを使う場合
未来工業のケーブルタッカーを使えば効率よくステップルを打つことができます。
常にステップルを使う木造を施工する電気屋さんには必須の工具です。
ケーブルに当ててトリガーを引くだけで簡単に打ち込めます。
大きなホッチキスみたいなイメージですね。
ハンマーで手を打つリスクもないですし、ステップルを押さえる必要もないのでかなりの効率アップです。
市販のステップルではなく専用品のみの対応ですが、2芯用と3芯用がありますので十分対応できますね!
出典:未来工業
ステップルの抜き方
ニッパーを使用して抜く
配線をやり直したいという場合、ステップルを抜かないといけませんが、ニッパーを使用して抜くことができます。
おすすめのニッパーはこちらの記事を参照ください。↓
【工具】電工ニッパーおすすめ3つに厳選!迷ったらこれ!購入後のメンテナンス方法も!
ニッパーを使った抜き方の説明ですが、まずステップルの根元をニッパーの先でつまみ、そのままテコの原理を利用して下に下ろします。
そうするとググッと出てきますので簡単に抜くことができます。
ニッパーの先端に角度のついたものですとより抜きやすいかと思います。
ステップルヌッキーを使用して抜く
もろいニッパーですと刃を痛めてしまいますので頻繁に抜く作業が発生する場合は専用工具がおすすめです。
ジェフコム のステップルヌッキーはステップルや釘を抜く専用工具です。
使い方はニッパーと同じでテコの原理を利用して抜きます。
やはり工具は適材適所を心がけることで長持ちさせることができますね。
出典:ジェフコム
最後に
ステップルはたかが小さなコの字の釘ですが、打ち方一つで品質や安全に関わってくることがわかりました。
また、便利な工具も販売されていますが、腰道具に装備している工具でも十分対応できますね。
自分の現場状況に応じて準備して正しい施工を心がけることが重要です。
ステップルの概要と打ち方、抜き方の説明でしたが少しでも現場に役立てていただければ幸いです。
それではまた、ご安全に!