今回は主にケーブルのジョイント部分(終端接続部分)のビニルテープの巻き方について紹介します。
ビニルテープは絶縁テープやビニテなどとも呼ばれるもので、絶縁性能のある電気を通さないテープです。
絶縁キャップなどのビニテを使わなくても絶縁できる便利なものがあるので必要ないか?
そのようなことはありません。絶縁キャップははずれてしまった事例があり禁止の現場もありますし、屋外のケーブル処理では絶縁キャップは使用できません。
テープ巻きは現場では頻繁に行いますので電気工事士必須の作業になります。
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電気工事で使用するビニテは主にこの3つ
アセテートテープ
電気工事の超定番テープ。これが一般的に現場でビニテと呼ばれているものです。
一番使用頻度の高いテープになります。
電気工事士の腰道具には最低1個は常備しておきたいですね。
アセテート布に粘着剤を塗布した絶縁用のテープです。
柔軟性と作業性に優れ少し伸びますので、ジョイントだけではなく通線ワイヤーとケーブルを巻いたりケーブルを束ねるなどあらゆる場面で使用されます。
おすすめはデンカのビニテープ
自己融着テープ
自己融着テープは古河電工のエフコテープがよく使われますので現場ではエフコとも呼ばれます。
普通のビニテよりも厚手に作られており防水性、絶縁性に優れています。
粘着剤を使用していないので何かを貼り付けるという用途には使用できません。
強く引っ張り伸ばしながら巻きつけることにより、テープ同士が密着し時間が経つにつれて隙間を埋め尽くす性質があります。
隙間がなくなるという性質から防水性に優れ、屋外のジョイント部分はかならず自己融着テープを使用することになります。
また、一般の電気絶縁テープよりも絶縁性能に優れているため大容量の低圧幹線や高圧ケーブルにも使用されます。
やはりおすすめは古河電工のエフコテープ
ガラスクロス電気絶縁テープ
シリコーン系粘着剤の下にガラスクロスを重ねた構造となっており、機械的強度と耐熱性に優れています。
一般的な電気工事で使用頻度は高くありませんが、火災報知器や受信器などの消防設備に使われる耐熱・耐火ケーブルの絶縁に使用されます。
HPやFPケーブルがそれに該当します。ジョイントの際、被覆を剥きますので芯線部分は耐熱・耐火の性能を失っている状態になるため、ガラステープでしっかりと巻きつけた上にビニテを巻きます。
消防設備は消防屋さんではと思いますが、新築現場では配線は電気工事の範囲となります。
また、電気工事では馴染みがありませんがコイルの絶縁にも使用されます。
おすすめは3Mのガラスクロステープ
ポイント
・アセテートテープ→VVF,CV等の低圧小容量のジョイントケーブルを束ねる等あらゆる場面
・自己融着テープ→屋外でのジョイント、高圧ケーブルやCVTなどの低圧大容量のジョイント
・ガラスクロス電気絶縁テープ→HPやFPなどの耐熱・耐火ケーブルのジョイント
ジョイント部分にビニテをなぜまく?規定は?
電気設備技術基準第7条に電線の接続に関しての記載があります。
接続部分において下記のように定められています。
①電線の電気抵抗を増加させない。
②電線の絶縁性能を低下させない。
③通常の使用状態において断線のおそれがないようにする。
②の絶縁性能を低下させないことがポイントになるのですが、この条文を受けて内線規定の1335-7では下記のように規定しています。
「接続部分をその部分の絶縁電線の絶縁物と同等以上の絶縁効力のあるもので十分に被覆すること」
引用:内線規定
当たり前なのですが裸線だと危険なので絶縁物で被覆してくださいねということです。
また、同等以上ということで電線の絶縁被覆以上の厚さでビニテを巻かなければいけません。
そして1335-1表にテープ巻きの方法が記載されています。
絶縁テープの種類 黒色点着生ポリエチレン絶縁テープを用いる場合 ビニルテープを用いる場合 テープの巻き方 黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープを半幅以上重ねて1回以上巻く。(2層以上) ビニルテープを半幅以上重ねて2回以上巻く。(4層以上) 引用:内線規定
半幅以上重ねて巻くことをハーフラップともいいますがテープ巻きの基本となります。
上記からわかったこと
ビニテは電線の絶縁被覆以上の厚さで巻く
ビニテを半幅以上重ねて2回以上巻く
内線規定の資料に各種の電線の構造表が掲載されています。
それを基にテープの層数を割り出したものが下記表となります。
ちなみに、ビニルテープの寸法は、JISC2326により、幅19mm、厚さ0.2mmとなってます。
絶縁電線の太さ | 絶縁電線の厚さ | テープの層数 | 備考 |
1.6mm | 0.8mm | 4層(2回) | 0.2mm×4層=0.8mm |
2.0mm | 0.8mm | ||
2.6mm/5.5sq | 1.0mm | 6層(3回) | 0.2mm×6層=1.2mm |
8sq | 1.2mm | ||
14sq | 1.4mm | 8層(4回) | 0.2mm×8層=1.6mm |
22sq | 1.6mm |
2層で一回となるのは半分以上重ねているからですね。
一番ジョイントの頻度の高い1.6mmや2.0mmは4層なので1往復でいいことになります。
表のケーブルより太い場合は接続材を使用するのでビニテを巻くことは少ないですね。太物は接地線くらいかと思います。
100sqなどになると被覆がかなり厚くなってきますので巻く回数というよりは被覆の厚さより太く巻けていれば問題ありません。
ビニルテープの巻き方
一般的なビニテの巻き方
いよいよ巻き方になりますが、巻き方には絶対にこれといった正解はありません。
個人個人で違いがありますが、上記の巻く回数とハーフラップなどを最低限守れば内線規定的にはクリアとなります。
次のものは一例となりますが、一般的な注意事項も含めて説明していきたいと思います。
①巻きはじめ
最初の巻き始めはスリーブの先端から3〜5cmくらいの位置からです。
裸線が必ず隠れる位置から自分が巻きやすい位置でかまいません。
1巻目は電線と直角に巻きつけます。
これはビニテの仕上がりが直角になるという理由で絶対ではありませんが綺麗に仕上がります。
巻く向きですが上から見て手前から奥に巻く方がやりやすいかと思います。
②ハーフラップで巻き上げる
次にビニテの輪っかに指を入れ、斜めに(45度くらい)引っ張りながら巻いていきます。
コツはテープを出しすぎない点です。
出しすぎるとテープに力を入れにくくなり巻きが弱くなりシワができます。
シワができた場合は引っ張りながら上手く密着させて巻いていきます。
③折り返し
スリーブの先端まで到達したら、スリーブの上の何もない部分まで余分に巻きスリーブの先端を被せるように折り返し、今度は逆に巻いていきます。
巻き始めの位置まで巻いていきます。
規定では1往復なのでこの状態で問題ないのですが、2往復巻くのが一般的かなと感じます。
④最後は工具を使ってテープを切る
最後のテープを切りますが力を入れて手で切る方法でも問題ないのですが、ニッパーやナイフなどで切ってあげるとより丁寧で綺麗かなと思います。
手で切るとビニテの切れ目がシワになり美観的によくないので工具を使って切ることをおすすめします。
最後に切ったテープをびったりと貼れば完成です。
自己融着テープの巻き方
基本的には上記のテープの巻き方と同じです。
テープの側面に保護シートのようなものが貼ってありますが、その日使いきらない場合はとらないでください。
自己融着なので側面が色々なものに張り付いてしまって使い物にならなくなってしまします。
ただ、自己融着テープは粘着性がありませんので強く引っ張りながら巻いていきます。
テープの幅が少し狭くなったなくらいの感覚で引っ張ります。
防水の目的がありますから隙間を開けないということを意識して巻いてください。
巻き終わったら普通のビニテ(アセテートテープ)で一周巻きます。
内線規定の1335-1表の〔備考2〕の記載によると
自己融着性絶縁テープを使用する場合は、黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープを用いる場合と同様にテープを巻き、かつ、その上に保護テープを半幅以上重ねて1回以上まくこと。
引用:内線規定
これは自己融着テープは粘着性がないので時間が経つまでは剥がれる可能性があります。
そのためテープを巻いて剥がれないようにするということです。
また、先ほども言いましたが自己融着テープは時間が経つとそこら中にくっついてしまいます。
それを防ぐためにビニテで覆ってしまうということです。
最後に
ビニテ巻き一つにしても規定があり根拠があるので知識として頭の片隅にあってもよいのかなと思います。
また、ビニテ巻きも品質に関わる部分です。
特に自己融着テープを巻く際は慎重に巻かなければなりません。
たかがビニテ巻きと思うかもしれませんが、電気工事士の必須スキルです。
それではまた、ご安全に!