高圧設備

【停復電】高圧受変電設備の停電復電操作2つの方法と手順

2022年4月22日

高圧受電設備は年に一度の年次点検や電気設備の更新工事の際に安全を確保するため停電をして作業を行います。

停電操作は手順が多く複雑ですので、この記事を参考にして手順書をしっかりと作成して計画していただきたいと思います。

改修工事になると電気工事屋さんでも電気主任技術者の立会いのもと作業を行うことが多いです。

また、手順を誤ると大きな事故となり設備故障だけではなく人命にも関わる重要な作業になります。

 

停電復電なぜ2パターン?

今回紹介するのは一般的な方法2パターンです。

なぜ2パターンかといいますと書籍や電気主任技術者によって負荷電流をどこで遮断するかの見解の違いです。

ブレーカーを含め負荷電流の開閉時に発生する開閉電圧サージが開閉機器に負担を与えてしまうということです。

「高圧側のが電流値が少なく開閉サージも小さいからPASで一発で開放する!」

「いやいやPASで全てを負担させずに負荷側のブレーカーで一個ずつ遮断するべきだ!」

といった二つの見解があります。

ただ、停電をするということは需要家側は停電をする準備ができているということであり、全ての設備は稼働していないということがほとんどです。

稼働していないので電流はほとんど流れてなく、流れていたとしても待機電力に対する電流値で微々たるものです。

ですので個人的にはどちらの方法が正とかではなく、手順を守れば停電操作者のやり易いほうでよいかと思います。

ただ、電流遮断の前に電流値のチェックは必要です。

年次点検等の保安業務に携わる電気主任技術者の方はどちらかの方法を決め、作業者に指示をします。

電気工事業者は勝手に停電を計画して行うことはできませんので、電気主任技術者立会いのもと指示に従って作業を行ってください。

また、停電作業を実施する前にヘルメット、高圧用絶縁手袋、高圧用絶縁長靴等の保護具をしっかりと着用してから作業に移ります。

 

停電の手順(PASやUGSで一発開放する方法)

手順の説明

PASで一発停電するパターンですね。

おおまかな手順

①低圧側の負荷が停電できる状態か確認する。

②主遮断機(VCB)の位置で負荷がないことを確認する。

③PAS(UGSの場合も)を開放する。

④検電器と電圧計で無電圧確認後、放電を実施する。

⑤VCB(遮断器)を開放する。

⑥DS(断路器、ディスコン)を開放する。

⑦短絡接地器具取り付け

⑧配電盤のブレーカーを全て開放する。

単線結線図 一発停電手順

上記がおおまかな手順となります。

一つずつ細かく説明します。

①低圧側の負荷が停電できる状態か確認する。

基本的には全ての設備が停止され、無負荷状態となっていることが理想となります。

また、パソコン等の急に電源が遮断すると困るものは事前に確認しておきます。

実際には客先に事前に停電日を伝えていると思いますので、客先へ今から設備が停止する旨を伝え停電開始をするといった手順です。

 

②主遮断器(VCB)の位置で負荷がないことを確認する。

停電の前に無負荷状態(電流値)を数字として確認します。

数字が確認できる一番上位の位置はVCBです。

VCBの盤面に大抵はマルチメーターや電流計がありますのでそちらが0またはそれに近い状態かを確認します。

 

③PAS(UGSの場合も)を開放する

架空引き込みの場合はPAS、地中引き込みの場合はUGSですね。

ここが電力会社の責任分界点なので建物の一番上位にあたる部分です。

ここを開放して一発で停電させます。

この状態で一応建物内の全ての場所が停電となりますが、まだ安全とはいえませんので引き続き安全防止措置等の作業は続きます。

 

④検電器と電圧計で無電圧確認後、放電を実施する。

PAS開放で停電が完了していますので、無電圧を確認します。

まず、主幹(VCB)のマルチメーターまたは電圧計で0が表示されていることを確認します。

さらにDS(断路器、ディスコン)で高圧検電器を使い無電圧を確認します。

高圧検電器についてはこちらを参照ください。↓

【高圧】高圧検電器の使い方と選び方!おすすめも紹介

無電圧の確認が確実にできたら、放電棒を使用し放電を実施します。

短絡接地器具を使用して放電することもできますが、放電棒のがより安全かと思います。

放電を実施しないと、仮に高圧電路に残留電荷が残っていると感電しますので安全のため必ず実施してください。

開放はPASのみのため、高圧電路は全て繋がっている状態ですので放電はDS一箇所で問題ありません。

 

⑤VCB(遮断器)を開放する。

ここが高圧回路の主幹となります。

VCBは箱状の内部に接点があり中は真空となっています。

真空部分で開放時のアークを消弧するため負荷電流を遮断することが可能です。

DSの負荷側に位置していますのでDSの操作の前段階として開放します。

 

⑥DS(断路器、ディスコン)を開放する。

DSは停電作業において、開放状況が目視で確認できるため回路の切り分けやメンテナンスをするという意味で大変重要な機器です。

接点部分が剥き出しになっていますので、ここが短絡接地器具の取り付けや絶縁抵抗測定をあたる部分になります。

DSを操作するにあたって絶対に守らなければならないルールがあります。

それは「DSは無負荷、無電圧で開放する」です。

DSは接点剥き出しなのでアークを消弧できない=負荷電流の遮断能力がないのです。

一応無負荷であれば有電圧でも開放可能ですが、安全を考慮して「無負荷、無電圧」での解放が原則となります。

ですのでDSの負荷側に位置するVCBを先に開放してからDSを開放するという手順となります。

注意

・DSは「無負荷・無電圧で開放」

・手順はVCB開放→DS開放が原則

 

⑦短絡接地器具取り付け

短絡接地器具は万が一高圧電路に送電された場合に、電流を大地に逃がすことにより作業者の安全を確保することができます。

PASを開放していますが二重の安全措置ということですね。

短絡接地器具の取り付け箇所はDSの一次側です。

また、取り付けの手順は接地側から先に取り付けそのあと電路側を取り付けます。

これは万が一残留電荷が電路に存在していても先に接地しておけば放電できるからです。

短絡接地器具はこちらで詳しく紹介しています。

【高圧】短絡接地器具とは?使い方紹介!【アースフック】

 

⑧配電盤のブレーカーを全て開放する。

建物内の各分電盤に送電しているブレーカーがある盤を配電盤といいます。

低圧側の絶縁抵抗測定を実施する際、ブレーカーがONの状態ですとトランスのB種接地と導通されているため正確な測定ができません。

そのため配電盤のブレーカーは一斉に遮断しておきます。

 

これで停電作業は終了です。

作業できる状態となりましたので、点検や工事作業に着手します。

 

停電操作、PAS一発開放のメリットデメリット

メリット

配電盤のブレーカーが開閉サージの影響を受けない

放電作業が一箇所で済む

デメリット

PASやUGSで一撃で全負荷を開放するのでPASやUGSに対する負担が大きい



停電の手順(負荷側から順番に開放する方法)

手順の説明

おおまかな手順

①低圧側の負荷が停電できる状態か確認する。

②主遮断機(VCB)の位置で負荷がないことを確認する。

③配電盤のブレーカーをGR電源以外全て開放する。

④VCBを開放する。

⑤PASまたはUGSを開放する。

⑥検電器と電圧計で無電圧確認後、放電を実施する。

⑦DSを開放する。

⑧短絡接地器具を取り付ける。

負荷から停電する手順 単線結線図

各操作の内容はPASで一発開放の方法と同じになりますので割愛します。

ただ、注意しなければならないポイントがありますので順番に説明します。

 

③配電盤のブレーカーをGR電源以外全て開放する。

配電盤のブレーカーを開放していくのですが、PASやUGSのGRの制御電源の回路のブレーカーのみは投入状態にしておきます。

なぜかというとGR(地絡継電器)の電源が喪失した時点で高圧ケーブルの地絡を検知できなくなります。

この後PASを開放した時点で電源が落ちるので結局検知はできなくなりますが、PAS開放までの時間に漏電する可能性はゼロではありません。

本当に短い時間ですが安全に対する配慮を怠ってはいけませんね。

なお、最近のPASやUGSはVTを内蔵しており、機器内部で制御電源を取れるので配電盤側に回路ブレーカーはありません。

古いタイプの機器の場合は要注意ですね。

注意

GRの制御電源ブレーカーは開放しない

 

⑤PASまたはUGSを開放する。

手順は負荷側から順番だったらDSが先じゃないの?と思われるかもしれませんが、先の説明で「DSは無負荷・無電圧で開放」が原則でしたよね。

無負荷であれば有電圧でも開放可能ですが、DSの開放操作は導通部が剥き出しなので大変危険です。

できるだけリスクは排除するという意味でもPASから先に開放しましょう。

 

⑥検電器と電圧計で無電圧確認後、放電を実施する。

無電圧確認は共通しているのですが、放電はPASで一発開放の時とわけが違います。

先にVCBを開放してしまっているのでVCBの電源側と負荷側の二箇所で放電をしないといけません。

おすすめはVCBの電源側はDS、VCBの負荷側はLBSです。

注意

放電はVCBの電源側と負荷側の二箇所で実施

 

停電操作、負荷側から順番に開放のメリットデメリット

メリット

負荷側から順次開放し、負荷がほぼゼロになるのでPASやUGSの負担が少ない

デメリット

配電盤ブレーカーで負荷電流を遮断することにより開閉サージの影響を受ける可能性がある

放電作業が最低2箇所となる

 

復電の手順

復電操作に入る前に

まず作業員が全員いることを確認します。

復旧の際に何かのトラブルに巻き込まれる可能性もあるので全員が安全な状態でいることを確認します。

次にキュービクル内を隅々まで観察し、作業者がいないことはもちろん、工具や計器の忘れ物がないかを確認します。

忘れ物が金属類である場合、復電の瞬間に短絡事故や地絡事故になる可能性があります。

工具・計器類はチェックリストを作成し、作業前と作業後で数量の相違がないかをチェックすることをおすすめします。

 

手順の説明

点検や作業が終了した後の復電操作に関して、安全に復電する注意ポイントも含め説明していきたいと思います。

おおまかな手順

①短絡接地器具を確実に取り外す。

②DSを投入する。

③VCBを投入する。

④絶縁抵抗測定を実施する。

⑤GR(地絡継電器)の制御電源ブレーカーが投入されているか確認する。

⑥PASを投入する。

⑦配電盤のブレーカーを投入する。

復電手順 単線結線図

①短絡接地器具を確実に取り外す。

短絡接地器具を取り外さないまま電源を投入すると、三相短絡となり大事故となります。

短絡接地器具の取り忘れによる事故は少なからず起きていますので十分注意が必要です。

DS投入前に気づくとは思いますが、PAS投入前に再度確認するとよいでしょう。

注意ポイント

復電時は短絡接地器具が外されていることを確認する

 

②DSを投入する。③VCBを投入する。

DS、VCBを開放する手順はVCB→DSでしたね。

復電の場合は逆でDS→VCBとなります。

「DSは無負荷・無電圧で開放」が原則ですので一番最初に投入するのが基本となります。

また、継電器の電源喪失防止のため、PASで受電する前にこれら二つを投入しておきます。

VCBまで投入しましたら高圧の電路が全て繋がり、電源はPASで切り離されているだけの状態となります。

 

④絶縁抵抗測定を実施する。

高圧の電路が全部繋がっている状態ですので、ここで一括絶縁抵抗測定を実施します。

高圧用のメガーを使い測定箇所はDSが測定しやすいです。

 

⑤GR(地絡継電器)の制御電源ブレーカーが投入されているか確認する。

PASの投入前にGR制御電源ブレーカーが投入されているか確認します。

先ほど記載のとおり受電時に地絡保護されていないというのは良い状況ではありません。

なおVT内蔵PASの場合は特に気にする必要はありません。

 

⑥PASを投入する。

ここでいよいよ受電です。

再度、短絡接地器具と取り外しとGRの電源、DSの投入などを確認してからPASを投入します。

 

⑦配電盤のブレーカーを投入する。

受電が完了しましたので、主幹VCBと各配電盤で正常な電圧が表示されているか確認し、配電盤のブレーカーを順次投入して復電完了です。

 

VT内蔵PASの場合

VT内蔵のPASの場合上記の手順でも大丈夫ですが、電源喪失の心配がないのでPASから順次下位に投入しても問題ありません。

DSだけは先に投入したほうが安全です。

また、SOG制御装置がある場合は電源表示ランプが点灯していることを確認し、地絡や短絡の状態でないことを確認しましょう。

 

まとめ

まとめ

  • 停電方法は2パターンあるがどちらも正解
  • DSは無負荷・無電圧で開放する
  • 継電器の電源喪失に注意
  • 短絡接地器具の取り忘れに注意
  • 停電手順によって放電回数は変わる

簡単にポイントをまとめました。

人それぞれの見解はあると思いますが、重要な要点は厳守しつつ手順書を作成して一つ一つチェックしながら作業を行えば事故による波及事故は防止できます。

高圧設備の点検・工事前の重要工程「停電作業」でした。

それではまた、ご安全に!

 

-高圧設備