この記事では、内線規程に度々記載される「金属製可とう電線管」とは何かについて解説します。
また、1種、2種の違いが曖昧な方もいるのではないでしょうか。
他には現場での用途なども含めて説明していきます。
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金属製可とう電線管とは?
金属製可とう電線管とは名前の通り可とう性のある金属製の管です。
用途としては中に電線を通し、電線の保護材として使用します。
内線規程では「金属製可とう電線管配線」として規定し、配線方法の一種としています。
ただし、管の中が電線の場合に限り、ケーブルの場合はケーブル工事に分類されます。
現在はプリカチューブという製品名で販売されており、現場では金属製可とう電線菅のことを単に「プリカ」と呼びます。
PF菅の金属製バージョンとイメージすればわかりやすいですね。
金属製可とう電線管の用途は?
使用する状況としては自在に屈曲することが可能なため、基本的には配管工事と組み合わせて、一部柔軟性を要する場所に使用されます。
例えば金属管をベンダー加工では限界のある複雑な曲がりがある場所、機器の接続部などです。
また、電動機、空調機、コンプレッサなどの振動するような機器の取り込み部分は、機械的な縁切りとして使用されます。
機械の振動を配管に与えてしまうと、長期的に見ると破損へと繋がりますのでプリカ部分で縁を切り振動を吸収するといったイメージですね。
このように、配管工事の補助としてポイントポイントで使用されます。
一種と二種の違いは?
施設可能場所の違い
配線方法 屋内 屋側 屋外 露出場所 隠蔽場所 点検できる 点検できない 乾燥 湿気、水気 乾燥 湿気、水気 乾燥 湿気、水気 雨線内 雨線外 一種 C × C × × × × × 二種 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ※Cは、電動機に接続する短小な部分で、可とう性を必要とする部分の配線に限り、施設することができる。
参考:内線規程
内線規程により施設可能場所が規定されています。
一種金属製可とう電線管配線の特徴
結論として一種金属製可とう電線管は現在、JIS規格が改定され廃止となっています。
生産もされていませんので今後はお目にかかることはないでしょう。
以前は一種と二種で規格が分類されていて、内線規定や電気用品安全法では現在も一種、二種の区別をしています。
そのため、実際の現場で使用することはありませんが、一応法で区別されているので電気工事士試験では出題されますね。
一種金属製可とう電線管はフレキシブルコンジットとも呼ばれます。
表より、屋内の露出された乾燥した場所と屋内の隠蔽された場所は乾燥して点検できる場所でしか使用することができません。
また、金属管と比べて電気抵抗が大きく、屈曲等による電気抵抗の変化も著しいことから、裸軟銅線を全長に渡り添加して電気的に接続する方法で施設しなければいけないことも特徴です。
このような施工性の悪さも廃止になった原因かと思われます。
二種金属製可とう電線管配線の特徴
二種金属製可とう電線管はプライアブルコンジットとも呼ばれます。
プリカチューブとして販売されています。現在は一種が廃止され二種のみとなりますので金属製可とう電線管=プリカチューブということになります。
二種金属製可とう電線管は上表のとおり全ての場所で使用可能です。ただし、屋外等の雨にさらされる場所は防水仕様のものを使用しなければいけません。
そのため、二種金属製可とう電線管には「プリカチューブ」と「防水プリカチューブ」の2種類が販売されています。
プリカチューブと防水プリカチューブの違いは「防湿性があるかないか」です。
プリカチューブは防湿性がなく防水プリカチューブは防湿性があるため、一般的にプリカは「屋内用」、防水プリカは「屋外用」という認識で問題ありません。
現場でも一般的に上記の区分けで使用されています。
プリカチューブ
出典:三桂製作所
構造は内側から耐水紙、鋼板、亜鉛めっき鋼板と三層構造となります。
防湿性がないため主に屋内で使用され、E管(薄鋼管)と組み合わせて使用されます。
防湿性がないことから屋外では使用することができません。
防水プリカチューブ
出典:三桂製作所
現場では「防水プリカ」と呼ばれます。
プリカは三層構造でしたが、防水プリカは最外装に軟質ポリ塩化ビニル (PVC)を被覆した四層構造です。
そのため防湿性のため、屋外で使用することができます。
ただし、重量物等の機械的衝撃を受けるおそれのある箇所に施設する場合は、適当な防護措置を設ける必要があります。
見た目は金属ではなくビニルぽいのでプリカとは一目で違いがわかります。
プリカと比べ高価なため、主に屋外のみに使用されG管(厚鋼管)と組み合わせて使用されます。
金属製可とう電線管の施工方法
基本的には金属管に必要な箇所で接続して使用します。
必要な長さに切断しますが、切断方法はプリカナイフを使用します。
こちらはパンナイフのような感覚で切れ、切り口がとても綺麗に仕上がります。
カッターですと時間がかかる上に、切り口にバリがでてコネクター等の接続がし難くなりますのでプリカナイフの使用をおすすめします。
配管とプリカの接続には異種接続部材を使用します。
現場では「プリカコンビ」なんて呼ばれたりしますね。
金属管側は差し込んだり、ネジをまわしていくだけです。
プリカ側は通常のプリカはネジになっていますが、防水プリカは一回バラしてから順番に組み込んでいく手順です。
出典:三桂製作所カタログ
ボックスや機器の接続にはコネクターを使用します。
現場では「プリカコネクター」なんて呼ばれたりします。
こちらもプリカへの取り付けはプリカコンビと変わりません。
ボックス、機器側への接続は一度ロックナットを外してからコネクターを穴に差し込み、裏からロックナットを締め込みます。
出典:三桂製作所カタログ
金属製可とう電線管の施工条件
使用できる電線
当然ですが裸電線は通線できません。
必ず絶縁電線またはケーブルを使用するようにします。
単線または、直径3.2mm(アルミ線にあっては、4.0mm)を超えるものはより線で配線します。
曲げ半径
・一種金属製可とう電線管
一種金属製可とう電線管の曲げ半径は、一種金属製可とう電線管内径の6倍以上としなければいけません。
・二種金属製可とう電線管
二種金属製可とう電線管の場合、露出場所または点検できる隠蔽場所であって管の取り外しができる場所では、管の内径の3倍以上とします。
露出場所または点検できる隠蔽場所であって管の取り外しができない場所及び点検できない隠蔽場所では、管の内径の6倍以上とします。
(内線規程より)
連結及び支持
電線管相互の接続は、専用のカップリングにより行わなければなりません。
ボックスまたはキャビネットへの接続は専用のコネクタにより行わなければなりません。
また、支持点間の距離は下表となります。
支持点間の距離
施設の区分 支持点間の距離[m] 造営材の側面又は下面において水平方向に施設するもの 1以下 接触防護措置を施していないもの 1以下 金属製可とう電線管相互及び金属製可とう電線管とボックス、器具との接続箇所 接続箇所から、0.3以下 その他のもの 2以下 引用:内線規程
ボックス、機器等へコネクタで接続した箇所から300mm以内に支持し、それ以降は条件により1000mmまたは2000mm以内に支持するということです。
接地
4mを超える金属製可とう電線管には接地を施さなくてはいけません。
使用電圧300V以下の場合はD種接地工事を施します。
300Vを超える場合はC種接地工事を施します。この場合、接触防護措置を施す場合は、D種接地工事によることができます。
一種金属製可とう電線管には1.6mm以上の裸軟銅線を接地線として全長に渡り添加して電気的に接続する方法で施設することとなっています。
(内線規程より)
まとめ
まとめ
- 配管と組み合わせて機器接続部等に使用する
- 一種は現在廃止されている
- プリカ→屋内用 防水プリカ→屋外用
- 決められた付属品を使用する
- 切断はプリカチューブ
- その他細かい施工条件がある
金属管と合わせて使用頻度の高い配線方法ですので、是非知識として覚えていただければと思います。
それではまた、ご安全に!