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【設計】電線管のサイズ選定方法を解説!計算方法は電線とケーブルで違う?

工事計画をする際、電線類を収める配管である「電線管」のサイズ選定に迷ったことはないですか?

電線管は、電線に電流が流れることにより温度上昇しますので、周囲にスペースがないと更に熱を持ちやすくなります。

想定以上の熱を持った状態になると、許容電流の低下につながり、最悪の場合発火の原因となります。

そのため、電線管の中身はスペースが許す限り入線できるというわけではなく、しっかりと内線規程にて許容値が定められています。

電線管選定については、設備手帳や内線規程などに選定表があります。

しかし、実はこの選定表はほとんどがケーブルではなく絶縁電線に対するものです。

また、選定表は同一線が複数本ある場合に対応しますが、異種線が混在したり、違うサイズが混在する場合には対応していません。

その場合、計算ソフトを使うことはとても有効ですが、中身や計算内容を追えない場合がありますので、どのような根拠でどういった計算をしてこのサイズになったかというのを理解することが重要かと思います。

今回は、根拠規程をもとに、電線とケーブルの電線管の選定算出法が理解できるような内容となっていますので、ぜひご覧ください。

同一線、同サイズの絶縁電線は選定表から

電線管のサイズに関する規程は、内戦規程に記載があります。

絶縁電線とケーブルとで、規定している内容が異なりますので注意が必要です。

絶縁電線は露出配線できませんので、配管をすることで「金属管工事」や「合成樹脂管工事」として規程されます。

ケーブルの場合は、規程としては露出配線可能ですが、美観や保護としての「保護管」としての役割があります。

関連記事:電線とケーブルの違いについて

絶縁電線の管の太さについては、内線規程3110-5および3110-6に以下の記載があります。

3110-5[管の太さの選定]
1.同一太さの絶縁電線を同一管内に収める場合の金属管の太さは、次の各号によること。
①管内に収める絶縁電線の本数が10本以下の場合は、3110-2表から3110-4表によること。
②管内に収める絶縁電線の本数が10本を超える場合は、3110-5表によること。

内線規程

3110-5
2.管の屈曲が少なく、容易に電線を引き入れ及び引き替えることができる場合は、前項の規定にかかわらず、電線が同一太さで断面積8㎟以下にあっては3110-6表、その他の場合にあっては3110-7表から3110-11表により電線の被覆絶縁物を含む断面積の総和が管の断面積の48%以下とすることができる。

内線規程

3110-5
3.異なる太さの絶縁電線を同一管内に収める場合の金属管の太さは、3110-7表から3110-11表までにより電線の被覆絶縁物を含む断面積の総和が管の内断面積の32%以下となるように選定すること。

内線規程
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上記内容から、絶縁電線の場合は、同一太さであれば基本的に選定表から選定できます。

絶縁電線を収める電線管の選定

違う電線やサイズが違う電線を同一管に収める場合は、内線規程にも記載のある内断面積32%と48%を使用します。

内断面積32%及び48%

絶縁電線を電線管に収めた際に、電線管の断面積のうち絶縁電線が占める割合を「占積率」といいます。

この、占積率が32%または48%に収めなさいと規定されているわけです。

規程では、基本的には32%とし、「管の屈曲が少なく、容易に電線を引き入れ及び引き替えることができる場合」

は48%としてもよいとされています。

壁の貫通部分など管の長さが短い場合や、曲線がなく直線の場合は48%で問題ありません。

この32%か48%は感覚的なところで難しい部分ではありますが、基本的には安全側をみて32%にしましょう。

基本的には占積立32%で計算しましょう!

※管が長かったり、曲がりが多いと32%でも通線がきつい場合があります。

管の内断面積は「(管の内径÷2)×(管の内径÷2)×3.14」で求まります。

占積率の計算は「電線の断面積÷管の内断面積×100」で求められます。

面積を求める式「半径×半径×3.14」ですね。

電線管サイズの選定ですので、管の内断面積=の式に32%以上の条件で変形すると

電線の断面積÷管の内断面積×100<32

管の内断面積>電線の断面積×100÷32

となりこの式で求めた数字より大きい内断面積の電線管を選定します。

占積率の求め方:電線の断面積÷管の内断面積×100
内断面積の求め方:(管の内径÷2)×(管の内径÷2)×3.14

補正係数について

細い電線については、電線の断面積の合計に補正係数を乗じる必要があります。

下の表に当てはまる電線の場合は、計算時に補正係数をかけて計算します。

3110-8表 絶縁電線を金属管内に収めるときの補正係数

電線の太さ 補正係数
単線(㎟) より線(㎟)
1.6
2.0
  2.0
2.6
3.2
5.5
8
1.2
  14以上 1.0

計算例

実際に計算してみましょう。

【条件】
アースの幹線に使用する100㎟のIVを電線管に収める
屋内敷設のためE管を使用する

G管(厚鋼電線管)のサイズ表はこちら(参照:マルイチカタログ)

E管(薄鋼電線管)のサイズ表はこちら(参照:マルイチカタログ)

絶縁電線(IV線)のサイズ表(参照:住友電工カタログ)

100㎟のIVの断面積ですが、サイズ表より外径が14mmですので、半径は半分として

(14÷2)×(14÷2)×3.14≒132.6となります。

管の内断面積も同じように計算しますが、あらかじめ計算したものを上の表に記載してあります。

次に、上で求めた電線の断面積132.6を「管の内断面積>電線の断面積×100÷32」に代入します。

管の内断面積>132.6×100÷32

132.6×100÷32は414.3となりますので、これを満たす電線管サイズはサイズ表よりE31となります。

ケーブルを収める電線管の選定

ケーブルの場合は1.5倍に収まるように

ケーブルを電線管に収める場合は、絶縁電線とは異なる規程となります。

防護管の内径は、ケーブルの仕上がり外径の1.5倍以上必要である。ただし、防護管が短小で屈曲がなく、ケーブルの引き換えが容易なものは、ケーブルの仕上り外径の1.5倍未満のものを使用しても良い。

内線規程 3165-1①[注1]

ケーブルの外形を1.5倍し、その寸法より大きい内径の電線管を選定します。

計算例

実際に計算してみましょう。

【条件】
5.5㎟のCV-3Cを2本同じ配管に入線する
屋内敷設のためE管とする

G管(厚鋼電線管)のサイズ表はこちら(参照:マルイチカタログ)

E管(薄鋼電線管)のサイズ表はこちら(参照:マルイチカタログ)

ーブルのサイズ表はこちら(参照:住友電工カタログ)

5.5㎟のCVの外径はサイズ表より14.5mmで、2本ありますのでケーブルの外径は

14.5×2=29

となります。

さらに1.5倍すると

29×1.5=43.5

となり、これを満足するE管のサイズは、サイズ表よりE51となります。

さいごに

32%と48%はよく聞く数字で、電線管の選定に使用している人も多いかと思います。

実は勘違いしやすい部分で、絶縁電線の場合にしか適用できません。

実際に、配管の中に絶縁電線しか入れない場合はかなり稀で、ほとんどがケーブルですよね。

そのため、内線規程の選定表は実務ではほとんど使えないのかなと思います。

また、ケーブルの計算方法で選定した場合も、敷設状況によって臨機応変に電線管のサイズ増減をして問題ないです。

例えば、内線規程では「防護管が短小で屈曲がなく、ケーブルの引き換えが容易なものは、ケーブルの仕上り外径の1.5倍未満のものを使用しても良い。」と規定されていますので、単なる壁の貫通に使う電線管や直線の短い距離の電線管でしたら1サイズ落としてもよいかと思います。

逆に距離が長かったり、曲がりが多いような場合は通線がかなりきつくなりますので1サイズあげるのもありです。

1.5倍の計算方法をベースにして、最後は状況を考慮しながら選定しましょう。

それではまた、ご安全に!

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