冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機など、漏電した場合に危険が伴う家電にはアース線がついています。
コンセントプラグからちょろっと出ている緑色の線ですね。
このアース線はコンセントのアースターミナルに接続します。
家電が置かれる場所のコンセントは設計段階でしっかりとアースターミナル付きのものになっています。
あまり意識しないとアース線を処理しないということもあるかもしれません。
その場合どうなるのでしょう。
なんとなく感電を防止するために設置される漏電遮断器が動作しないのではないかと考えそうですよね。
結論としては、アース線をアースターミナルに接続しなくても、地絡することにより動作します。
今回は、漏電遮断器とアースの関係について解説していきます。
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漏電遮断機の仕組み

漏電遮断機の役割
まず漏電遮断器の役割ですが、名前の通り漏電した地絡電流を検知し、安全に回路を遮断することにより感電を防止することができます。
水場や水を使用する機器は、漏電する可能性が高いため、アース線がついていたり、漏電遮断器の回路にしたりします。
配線用遮断器は過電流を遮断することができるブレーカーですが、漏電遮断機はそれに加えて地絡保護の役割があります。
漏電遮断器トリップのメカニズム

漏電遮断器とアース線の関係を理解するためには、漏電遮断器が地絡電流を検知するメカニズムを理解する必要があります。
漏電遮断器の内部には、零相変流器(ZCT)が組み込まれています。
零相変流器は輪っか状をしており、そこに回路の相がまとめて貫通しています。
100Vの回路の場合は黒線と白線がまとめて通っています。
回路の各相には通常同じ大きさの電流値が流れます。
しかし、漏電し地絡が発生した場合は、地絡した相に漏れ電流の電流値が加わりますので、各相の電流値のバランスが崩れます。
この電流値の差異を零相変流器が検知し、トリップコイルに信号を送ることにより接点を開きます。
漏れ電流は大地を負荷とした電流
ここで少し余談ですが、漏れ電流は名前から漏れている電流となりますが、通常時流れている電流の一部が大地に流れてしまうという意味ではありません。
通常時流れている電流に漏れ電流分が加わります。
仮に漏電遮断器が設置されていなくて、漏電が続いていても普通に機器は使用できます。
機器に必要な一部の電流が大地に流れ出て行ってしまったら機器は使用できなくなってしまいますよね。
機器が動くために電流を必要としているように、大地も電流を消費するというイメージをするとわかりやすいかもです。
大地も機器と同じ抵抗ですので、接地抵抗値が仮に40Ωとして100Vの回路が完全地絡した場合は、オームの法則の単純計算ですと
100V÷40Ω=2.5Aの漏れ電流が流れることになります。
漏電遮断機はアースを繋がなくても動作する?
漏電遮断器は漏電しただけでは動作しない

実は漏電遮断機は漏電しただけではトリップしません。
上記のメカニズムのように、漏電し地絡(大地に電流が流れる)しなければ漏れ電流が発生しないのでトリップしないのです。
漏電と地絡の意味の違いはややこしいですが、漏電は「流れてはいけない場所に電気が流れる」、地絡は「大地に電気が流れる」といったイメージです。
地絡・・・「大地に電気が流れる」
地絡・・・「大地に電気が流れる」
詳しくは下の記事を参照ください。
【疑問】漏電・地絡・過電流・短絡の違いとは?いずれもよくない事象です
つまり、漏電して機器が電位を帯びているだけの状態ではトリップしません。
漏電した電気を何かしらの方法で大地に接続する必要があります。
そのために、機器のアース線が存在します。
機器のボディをアースに接続しておけば、万が一漏電が発生して機器のボディに電圧が発生しても大地に電気が流れて漏電遮断機がトリップします。
ここで機器のアース線をアースターミナルに接続していない場合、仮に漏電が発生しても漏電遮断器がトリップせずに機器に電圧が帯びた状態が続くので非常に危険です。
人の感電などの地絡により動作する

漏電遮断機は漏電しただけでは動作しませんが、仮に機器のアースを接続していなかったとしても、人が機器に触れて感電することによって漏電遮断機がトリップします。
これは、人間がアース線の代わりに大地への電路(通り道)となるからですね。
そのため、アースを接続していない場合、漏電した機器に人が触れたときに一瞬感電して漏電遮断機がトリップします。
一瞬といえどもかなり危険ですので、ご家庭に限らず機器のアースは必ずアースターミナルに接続しましょう。
建材の抵抗値は意外と低い
人が大地への電路となると書きましたが、人が直接アースに触れていなくても感電してしまいます。
実は建物のほとんどの部分が大地とつながっていると考えられます。
鉄骨造などの中規模以上の物件では、構造体が鉄骨やLGSを使用していますので、それらもちろん大地とつながっています。
また、アースを繋げた機器をLGSにビスやボルトでいたるところで接続しているので、金属製の建材はほとんど大地との抵抗はないに等しいです。
コンクリートや住宅に使用される木材、フローリングや畳なども意外と抵抗値が低いので、漏電した機器と建材に同時に触れることで大地との電路が形成され、漏電してしまいます。
結局家電のアースの役割は?
このように、機器のアースをアースターミナルに接続していない場合、漏電しても大地に接続されないので漏電遮断器が動作しません。
人が感電することにより漏電遮断機が動作しますが、これは大変危険な状態です。
機器が漏電した際に、即座に漏電を検知し、安全に漏電遮断機を動作させるために機器のアースがあるのです。
アース線は、万が一の安全を担保するための重要なものですので、家電等を設置した際はめんどくさがらずに必ずアース線を接続してくださいね。