実は、「電線」「絶縁電線」「ケーブル」「移動電線」の三つの単語には明確な違いがあります。
日常では、電線と言ったりケーブルと言ったりあまり意識する部分ではないかと思いますが、電気工事業界では非常に重要となる部分です。
特に、「絶縁電線」と「ケーブル」の違いが重要で、内線規程や電気設備技術基準などの電気関連法令の各所で見られる単語であり、「絶縁電線」に対して規定している部分と「ケーブル」に対して規程している部分がありますので、それぞれの違いを知識として知っている必要があります。
具体的な例としては、電線は露出配線できないといったことや、
結論として、「電線」は各種電線類の総称、「絶縁電線」は導体に絶縁を施したもの、「ケーブル」は絶縁の上に更に保護用外皮を施したもの、「移動電線」は移動する機器に使用するものになります。
それぞれについて解説していきます。
電線とは
電線は、省令と内線規程にて次のように明確に定義されています。
「電線」とは、強電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体をいう
引用:電気設備に関する技術基準を定める省令 第一章第一節第一条-七
電線とは、強電流電気の伝送に使用する裸線、絶縁電線、多心型電線、コード、ケーブルなどをいう。
引用:内線規程1100-1-23
これより、全ての電線類の総称が「電線」となります。
「強電流電気の伝送」ということで、強電流に限定しています。
つまり、弱電流に使用する通信線や信号線は除くということです。
概念的にいえば、電信・電話等の用に使用される低電圧微小電流のものが弱電流電気であり、それ以外のものが強電流電気である。電信・電話等の電気回路以外では、次のようなものを弱電流電気回路と考える。
電気設備の技術基準の解釈の解説 電線
①インターホン、拡声器等の音声の伝送回路
②高周波又はパルスによる信号の伝送回路
③最大使用電圧が10V以下で使用電流が5Aを超えない電気回路
④短絡電流が1mA程度以下の電気回路
⑤電圧の最大値が60V以下の直流電気回路で第181条に規定する小勢力回路に準じたもの
⑥電力保安通信線であって、最大使用電圧が110V以下で短絡電流が100mA以下の電気回路
絶縁電線とは
絶縁電線とは、銅やアルミなどの電気を通す導体のまわりに、絶縁体である絶縁被覆を施した電線です。
導体を一層で絶縁しているというシンプルな構造です。
ケーブルのように、外装がありませんのでケーブルに比べて損傷に弱いため、露出して配線することができません。
必ず電線管などで保護する必要があります。
ケーブルの外装を剥ぎ取った状態も絶縁電線となります。
昔は、絶縁電線であるIV線で配線することが多くありましたが、近年ではアース以外ではほとんど使用することがなくなりました。
ケーブルとは
次にケーブルですが、絶縁電線の上に更にシース(保護外装)を施したものになります。
複数の絶縁電線を束ねてその上に外装を施した、多芯ケーブルがよく使用されます。
ケーブルは外装がありますので、絶縁電線に比べて外的強度と絶縁性能が高くなります。
配線にケーブルを使用する場合は、電気設備技術基準のケーブル工事に該当し、全ての場所に配線することが可能です。
移動電線とは
移動電線 電気使用場所に施設する電線のうち、造営物に固定しないものをいい、電球線及び電気機械器具 内の電線を除く。
引用:電気設備技術基準の解釈 第142条-6
移動電線は、「コード」と「キャプタイヤケーブル」に大別されます。
この二つについて明確に定義されていませんが、内線規程にてそれぞれの仕様が規定されています。
メーカーからもコードとキャプタイヤケーブルを分類しており、コードは小型電気器具の電源コードとして、キャプタイヤケーブルは工場や工事現場などに使用する600V以下の移動用電気機器の電源や配線に使用することを推奨しています。
コードとキャプタイヤケーブルの用途のイメージ
・コード・・・家庭用の小型電気機器
・キャプタイヤケーブル・・・工場等に使用する移動用大型機器
内線規程では、コードは移動することを前提とした使い方を規定していますが、キャプタイヤケーブルについては特に規定していません。
実際に、キャプタイヤケーブルは取り回しの厳しい箇所の固定電源ケーブルとして敷設されることがあります。
コードは、電球線及び移動電線として使用する場合に限るものとし、固定した配線として施設しないこと。
引用:内線規程3203-1 コードの使用制限
各電線類の違いの根拠について
上記4つのうち、明確に定義されているものは「電線」と「移動電線」のみとなります。
「絶縁電線」と「ケーブル」については、法的な根拠があるのかというとそうではありません。
絶縁電線とケーブルについては、電線類を規程している、「電気設備技術基準」「電気用品安全法」「内線規程」などの電気関係法令や規程の中では明確に定義していませんでした。
用語としては定義していませんが、各規程では絶縁電線とケーブルという用語を明確に分けて記載しており、それぞれに対して細かい仕様が定められています。
一般社団法人日本電線工業会のHPに以下のような記載があります。
電線と並んでケーブルという言葉が使われていますが、電線とケーブルとの間には明確な区別はありません。一般には構造が複雑で太く、シース(外装)のあるものをケーブルと呼んでいます。
引用:一般社団法人日本電線工業会
各社電線メーカーも製品として、絶縁電線とケーブルを分け、シースがあるものをケーブルとして販売しています。
このようなことから、法的な定めはありませんが慣用的にこれらの区別がされ、一般的に用いられています。
この区別は先述のとおり、各規程でも区別されており、電気工事士の筆記試験でも違いについて出題されますので、とても重要な事項です。
さいごに
電気工事を施工するうえで、電気設備技術基準や内線規程などの根拠規程を確認することは是非実行すべき重要なことです。
その際に、文言の記載が「絶縁電線」であるのか、「ケーブル」であるのかを意識する必要があります。
ここの知識がない場合、間違った認識で規程の内容を理解してしまうことになりますので、しっかりと意識しましょう。
それではまた、ご安全に!