今回は電気工事の重要工程、ボックス建て込み配管の施工方法について徹底解説していきます。
主に下地が(LGS)を使われてる場合の建て込み方法の紹介です。
この記事で基本的な知識、技術は習得できますのでほとんどの現場で対応できると思います。
必要な工具から施工方法まで、細かく教えてもらえる機会がないという方の参考になるかと思いますので是非ご覧ください。
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ボックス建て込み配管とは
ボックス建て込み配管とは、内装建築工事の過程でスイッチやコンセントに使うボックスを壁の裏に仕込む作業をいいます。
現場では「建て込み」と呼びます。他の職種でも建て込み作業はありますが、電気工事の建て込みはボックスを「壁裏に仕込むこと」です。
よく「あっちの壁建て込んどいて」とか「ここ建て込みやってある」など会話で使われます。
ボックスはスイッチやコンセントを設置するためのビス穴や、ケーブルを保護するためのものです。
ボックスを建て込まずとも、後付けボックスやC型金物でできなくはないですが、ボックスを建て込んだほうが高品質と言えます。
後付けのものは、ボックスやコンセントの荷重をボードで支えることになりますので、大きな力が加わった際に壁が破損する恐れがあります。
また、建て込みを行うとPF管やボックスでしっかりとケーブルを保護できますし、施工の柔軟性、内装工事の逃げなど多くの利点があります。
ちなみに配管をコンクリートに埋設することを打ち込み配管といいます。混同しないように注意しましょう。
ボックス建て込み配管のタイミングは?
ボックスを建て込むタイミングを逃すと配線やコンセント設置が面倒なことになります。
LGS(軽量鉄骨)が組まれないとボックスを支持する部分がありませんので、もちろんLGSが組み終わった後になります。
軽量屋さんがLGSを組んでる最中でも問題ありませんが、軽量屋さんによっては嫌がる方もいらっしゃいますので現地で一声かけてみるとよいでしょう。
また、もちろんボードが貼られてしまうとボックスを建て込むことができません。ですので建て込みはボード屋さんがボードを貼る前となります。
基本的にLGS組みとボード貼りの間は少し空く工程となっていますので、その隙を狙って建て込みを行います。
大きな現場ですとあっちこっちで内装工事が進んでいます。広い視野を持って現場を見渡さないと「あれ、ボード貼られちゃった」なんてことになりますので、忙しいかと思いますが1日に何度かは現場を歩き回って内装の進捗状況を確認しましょう。
建て込みのタイミング
・LGSが組み終わった後
・ボードを貼る前
ボックス建て込み配管の施工方法
建て込みのイメージとして、コンセントやスイッチを設置したい位置にボックスを仕込みます。
極論そこにボックスがあればいいわけです。建て込みに使用できる便利な材料や工具がメーカーから販売されていますので、そちらも含めて説明していきたいと思います。
施工の前に準備するもの
工具
・腰道具(ニッパー、カッターなど)
・インパクトドライバー
・軽量穴あけ工具(3種 ネグロスMAKCK32、MAKC40A、MAKBR)
材料
・インシュロックまたはバインド線
・アウトレットボックス
・塗り代カバー
・PF管
・全ネジボルト
・ネグロスMBシリーズ
・ネグロスMSRB3、MSRB5、MSRB6、
①まずは地墨の確認
前工程で地墨を出しているはずですので、プロット図と床スラブを見ながらボックスの位置を確認していきます。
墨の位置、高さにボックスを設置しますので、墨の高さでLGSのスタッドに印を付けましょう。
印はマッキーペンなどで大丈夫です。
②ボックスの固定
ボックスの支持ですが、3パターンあります。
この3パターンをおさえればほとんどの状況で対応できます。
アウトレットボックスの種類ですが、ほとんどが4×4ボックス(ヨンヨンボックス)を使用します。
サイズは102mm×102mmのものです。4インチなのでヨンヨンボックスと呼ばれています。
3連以上のコンセントの場合はボックスのサイズが大きくなっていきます。
パターン①スタッドからボックスが近い場合
スタッドとはLGSの柱部分のことです。
スタッドからボックスが近い場合は、ネグロスのMBシリーズというL字の金物を使用できますので一番簡単に施工できます。
MBシリーズは、スライド式でボックスを移動することができますので、可動範囲でボックス位置が届けば使用できます。
スタッドはコの字型になっていますので、コの字の開いている側に挟み込む形で固定します。
開いていない側でも挟み込み金具を使用せずに直接、鉄板ビスで固定することが可能です。
パターン②スタッドからボックスが遠い場合
スタッドからボックスが離れている場合は、MBシリーズでは届かないので全ネジボルトとネグロスMSRB5を使用します。
スタッドとスタッドの間に全ネジボルトを横に流して、その全ネジボルトにMSRB5を使用してボックスを固定します。
この方法ですと全ネジを流した場所ならどこでもボックスを固定することが可能です。
もう一つの利点がスイッチやコンセントが横に複数並んでいる場合、施工性が向上すると共に綺麗にボックスを並べることができます。
施工方法ですが、まずスタッドに全ネジを通す穴を開けます。
穴あけにはネグロスのMAKBRを使用していきます。
スタッド専用の穴あけパンチです。
穴あけの位置は、ボックスの前面をスタッドの前面にピッタリ合わせ全ネジをボックスの裏面にピッタリ合わせた状態で、ボックス前面から全ネジの芯までの寸法で穴あけします。
高さは最初に印をした高さですね。
文章ですとわかりづらいですので下の図を参照ください。
開けた穴にW3/8の全ネジを通し、両側からナットで挟み込み固定します。
最後にボックスと全ネジをMSRB5で固定して完成です。
MSRB5は爪とビスで固定できるので簡単に施工できます。
パターン③スタッドからボックスが遠くかつスタッド幅が狭い場合
先ほど説明したとおり、ボックスがスタッドから遠い場合は全ネジボルトを使用しないとボックス固定ができません。
スタッド幅(柱)が狭く、スタッドとボックスが同じ幅の場合全ネジを裏につけると壁から飛び出てしまいますよね。
具体的には50mm幅のLGSスタッドの場合、ボックスの幅とほぼ同じになります。
そのような場合は、ボックスを全ネジの上に乗せるような形でMSRB6(鉄ボックスの場合はMSRB3)で固定します。
スタッドの全ネジ穴を開ける位置ですが、スタッドの前面から約5mmくらいのところですが、現地で一度現物を合わせて寸法確認することをおすすめします。
穴の高さですが、ボックスが全ネジの上に乗ればいいわけですので、「ボックスの寸法の半分+全ネジ太さの半分」ということでおよそ65mmボックス芯の印から下の位置になりますね。
※使用するアウトレットボックスの種類について
アウトレットボックスにはプラスチックと金属の2種類の素材が存在します。
一般的な壁や、特に指示がない場合はプラスチックのもので問題ありません。
金属ボックスを使用する場合は「防火区画壁」にボックスを建て込む場合です。
金属は耐火素材ですので延焼を防止しなければならない防火区画壁に金属ボックスが使用されます。
金属ボックスとプラスチックボックスの施工上で異なる部分は、金属ボックスについてはボックスアース(接地)を施さないといけません。
たまに「ボックスは壁の裏にあるから人が触らないってことは接地の必要がないのでは?」という意見もあります。
ボックスでは露出していなくても、漏電電流はLGSを伝わり建物のどこかで感電するリスクがあります。
また、接地をしていないと絶縁監視装置やELCBで検知せず、常に漏電電流が流れっぱなしになりますので必ずボックスアースを施しましょう。
施工方法は金属ボックスのどこでも構いませんので、IVの輪っかを作ってビスでもみます。
ボックスからアース線のヒゲを出しておく状態にしておけばOKです。
配線をしたあとケーブルのアースとヒゲを接続します。
③配管立ち上げ
ボックスが固定できましたのでケーブルを通すPF管を立ち上げていきます。
建て込みの配管ですが、電技や内線規定では義務化されていません。(ケーブル工事なので)
ただ、配管をするメリットは多いので一般的には配管をすることをおすすめします。
メリットとしては、建て込み後ボードを貼られてからでもケーブルを通線できますので建て込み配管さえしとけばとりあえず逃げることができます。
もう一つのメリットは後からケーブルの引き換えが可能です。ケーブルを直接縛ってしまうと後から抜けなくなってしまいます。
配管をしておけば仕様変更や増設となった場合に融通が効きますよね。
施工方法
①まず配管を天井裏に出しますので天井面のLGSランナーに穴を開けます。(壁が勝っている場合は穴あけせずに天井裏に配管可能です。)
ランナーとは天井面を横に走っているスタッド柱をはめ込んでいるLGS材です。(仕上がりイメージ参照)
穴あけはMAKC25Aを使用します。ランナーとスタッドの穴あけ工具です。22のPF管の穴を簡単に開けることが可能です。
②次に開けたランナーの穴にPF管を通し天井から300mm程出します。
ここは決まりはありませんので自分が都合の良い長さで大丈夫です。
天井裏分の長さを決めたら今度は反対側です。アウトレットボックスまでの長さを見てPF管を切ります。
③PF管をアウトレットボックスに接続します。
接続はPF管用のコネクターを使用します。
アウトレットボックスにはノックアウトがありますのでハンマーで叩くだけで簡単にPF管の穴を開けられます。
アウトレットボックスが近い位置に縦並びしている場合は45角度のついたコネクターを使用します。
③LGS振れ止め材を切りかく
壁の中間あたりにLGSの振れ止め(補強材)が横に流れています。
スタッド幅が狭い場合、振れ止めがあるとPF管が収まらなくなるので切りかく必要があります。
PF管が収まる場合は切りかく必要はありません。
工具はネグロスのMAKCK32を使用します。振れ止め専用のパンチです。
力強く挟み込むとPF管がちょうど収まる半円を切りかくことができます。
④PF管の長さが決まったらPF管を縛っていきます。
インシュロックで大丈夫ですが、コスト削減でバインド線で縛る電気屋さんも見られます。
縛る場所は縛れる場所があればどこでも構いません。
ただそんなに多くはないと思うので、LGSの振れ止めやスペーサー部分が良いかと思います。
支持する場所がない場合は、全ネジボルトやMBシリーズを使って作るというのも手ですね。
鉄板ビスにバインド線をくくりつけてスタッドにもんでみたり色々な工夫があります。
PF管の支持間隔は1500mm以内ですので普通の天井高さでしたら1、2箇所支持されていれば十分でしょう。
④最後に塗り代カバーを取り付けて完成!
塗り代(ぬりしろ)カバーは忘れずに取り付けましょう。
塗り代カバーはコンセントを止めるビス穴が付いたカバーです。
一個用では小判形、二個用以上は四角い開口になっています。
先に取り付けてしまうとPF管のコネクターが取り付けにくいので最後に取り付けます。
カバーは裏表どちらも使うことができ、裏表で厚さが異なります。
LGSスタッドの幅や使用したMBシリーズによって変わるので、塗り代カバーの表面がLGSスタッドの表面と丁度つらになるように裏表を間違えないようにしましょう。
出典:ネグロスカタログ
塗り代を忘れずに取り付けましたらボックス建て込み配管は完成です。
お疲れ様でした!
最後に
いかがでしたでしょうか。
ボックス建て込み配管の基本を紹介しましたが、これだけ押さえておけばほとんどの現場で対応できるかと思います。
中には応用が求められる現場もあるかもしれませんが、ここまでできれば応用もひらめきます。
あとはネグロスからは便利な部材が色々販売されていますのでコストに余裕があれば色々と試してみたりするのも面白いかなと思います。
この記事が現場のみなさんのお役に立てれば幸いです。
それではまたご安全に!