電気工事の施工は、「電気設備技術基準」か「内線規程」にて規程されています。
ケーブルラックについては、電気設備技術基準や内線規程では「ケーブル工事」のくくりとなり、ケーブルを支持するための鋼材ということで、施工基準を明確に記載していません。
もちろんケーブルラックに支持するケーブルは、ケーブル工事の基準で施工すればいいわけですが、ケーブルラック自体の施工基準も知っておきたいですよね。
実は、ケーブルラックについては「公共建築工事標準仕様書」に規程されています。
国土交通省から発行されたもので、公共工事の場合はこちらを遵守する必要があります。
公共工事標準仕様書には、ケーブルラックに関して、支持間隔、ボルトの太さ、接地工事、耐震支持についての4つを指針しています。
他に、ケーブルラック自体の構造や強度、寸法などを規定していますが、基本的にネグロスなどのメーカーは指針に準じて製作していますので、特に気にする必要はないです。
ケーブルラックについては施工根拠が公共建築工事標準仕様書のみとなりますので、民間工事の場合も基本的にはこちらの基準で施工することになります。
今回は、公共建築工事標準仕様書からケーブルラックについて規程している部分を抜粋して解説していきます。
ケーブルラックの選定についてはこちら↓
関連記事:【設計】ケーブルラックのサイズと材質の選定方法を解説
ケーブルラックのより実践的な施工についてはこちら↓
関連記事:【施工】ケーブルラックの寸法取りとサイズ関係の基本を解説!
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ケーブルラックの支持間隔
第10節 ケーブル配線2.10.1 ケーブルラックの施設
(2)ケーブルラックの水平支持間隔は、鋼製では2m以下、その他については1.5m以下とする。また、直線部と直線部意外との接続部では、接続部に近い個所及びケーブルラック端部に近い個所で支持する。
(3)ケーブルラックの垂直支持間隔は、3m以下とする。ただし、配線室等の部分は、6m以下の範囲で各階支持とすることができる。
引用:公共建築工事標準仕様書(電気設備編)
ケーブルラック の支持間隔は、鋼製2m以下、その他1.5m以下ですので、電線管と同じですので覚えやすいです。
ケーブルラックほほとんどが鋼製を使いますので、2mと覚えておきましょう。
垂直支持間隔は3m以下になります。
いわゆる縦ラックですね。
【ケーブルラックの支持間隔】
・水平支持は鋼製2m、その他1.5m
・垂直支持は3m以下
ケーブルラックの吊りボルトサイズ
(4)ケーブルラックを支持するつりボルトは、ケーブルラックの幅が呼び600mm以下のものでは呼び径9mm以上、呼び600mmを超えるものでは呼び径12mm以上とする。
引用:公共建築工事標準仕様書(電気設備編)
ケーブルラックを支持するボルトサイズについても規定されています。
一般的にはボルトで吊ったダクターの上にケーブルラックが乗りますので、ダクターを吊るボルト(全ネジボルト)のサイズになります。
規程ではW600までが径9mm以上、W800からが径12mm以上となっています。
現場では、3分と4分のサイズを使用しますので、W600までが3分、それ以上が4分で覚えましょう。
【ケーブルラックのボルトサイズ】
・W600までは9mm以上(3分)
・それ以上は12mm以上(4分)
ケーブルラックの接地
接地の基本事項
ケーブルラックの接地については、「公共建築工事標準仕様書(電気設備編)第13節 接地」に規程されています。
文章は長いので割愛しますが、概要は高圧ケーブルを収めるケーブルラックにはA種接地、使用電圧が300Vを超える低圧ケーブル配線による電線路のケーブルを収めるケーブルラックはC種接地、300V 以下 のケーブル配線に使用するケーブルラックはD種接地となります。
電技や内線規程で規程している、配管やダクトへの接地と同じ条件ですので覚えやすいですね。
【ケーブルラックの接地】
・高圧ケーブル・・・A種接地
・300V超えの電路・・・C種接地
・300V以下の電路・・・D種接地
接地の省略
ケーブルラックは、電線管と同じくある条件でD種接地を省略することができます。
2.13.15 D種接地工事の省略
(ア)屋内配線の使用電圧が直流300V又は交流対地電圧150V以下で簡易接触防護措置を施す場合又は乾燥した場所で次のいずれかの場合
(a)略
(b)長さ8m以下のケーブル防護装置の金属製部分及びケーブルラックを施設するとき。
(ウ)使用電圧が300V以下で、次のいずれかの場合
(a)及び(b)略
(c)長さ4m以下のケーブルの防護装置の金属製部分及びケーブルラックを施設するとき
引用:公共建築工事標準仕様書(電気設備編)
条件が重なっていてわかりづらいですがまとめると以下となります。
【ケーブルラックのD種接地省略】
・対地電圧DC300V、AC150V +(簡易防護措置or乾燥した場所)+8m以下
・使用電圧300V以下+長さ4m以下
こちらも電技や内線規程の電線管などと同じですね。
次に、C種接地をD種接地にする条件も記載されています。
2.13.6 C種接地工事をD種接地工事にする条件
C種接地工事を施す電気工作物のうち、使用電圧が300Vを超えるもので接触防護措置を施す場合で、次のものは、D種接地工事とすることができる。
(カ)ケーブル配線に使用する管その他の防護措置の金属製部分、ケーブルラック、金属製接続箱及びケーブルの金属被覆
引用:公共建築工事標準仕様書
【ケーブルラックのC種接地をD種接地にする条件】
・接触防護措置を施す場合
ちなみに接触防護措置や簡易接触防護措置とありますが、「設備に人が接触しないように講じる措置」と定義されていまして、簡単なところフェンスなどの柵などになります。
このように、ケーブルラックの接地は、条件により省略できたり変更できたりしますが、業界内の通念上特段理由がないかぎり全てのケーブルラックに接地を施しているのが私の印象です。
物件の環境などにより、どうしても接地が難しいといった際に逃げとしてこの規定を適用する使い方ですね。
電気的に接続するとは?
「第10節 ケーブル配線2.10.1 ケーブルラックの施設」に以下の記載があります。
(8)ケーブルラックの自在継手部及びエキスパンション部には、ボンディングを施し、電気的に接続する。ただし、自在継手部において、電気的に接続されている場合には、ラック相互の接続部のボンディングは、省略することができる。
引用:公共建築工事標準仕様書(電気設備編)
以前のケーブルラックの自在継手などの部材は、電気的に繋がっていませんでした。
要は部材同士が絶縁されてしまって、一箇所接地をとっても継手部分で絶縁されるので電線で渡りを取る必要がありました。
現在の部材は「ノンボンドタイプ」が主流となっていますので、電線で渡りをとらなくても電気的に接続されます。
マルチ型接続タイプの継ぎ手など、ノンボンドタイプではない部材もありますので、その場合は電線で渡りをとってあげる必要があります。
ケーブルラックの耐震支持
「第2章 施工 第1節 共通事項 2.1.13 耐震施工」にケーブルラックの耐震施工について記載があります。
引用:公共建築工事標準仕様書(電気設備編)
ケーブルラックの耐震支持は、上表のとおりです。
SA種、A種、B種というのは耐震クラスとなります。
公共建築設備工事標準図(電気設備編)の第2編「電力設備工事」に図が載ってます。
また、このクラス分けは、日本建築センターから発行されている「建築設備耐震設計・施工指針」がもととなっています。
電気工事や空調工事などの、設備工事の耐震設計のバイブル的な書籍なのでよろしければ目を通して見てくださいね。
ケーブルラックの耐震支持ですが、下の図のように吊りボルトとは別物として、地震時の破損や落下を防止するためのものです。
一定の間隔でがっちりとした鋼材で支持をします。

まとめ
まとめ
- 支持間隔は、基本的に水平部2m以下、垂直部3m以下
- 支持ボルトは、W600までが3分、それ以上が4分
- 接地は、電技や内線規定と同様の規定
- 条件を確認し、耐震支持をとる必要がある
ケーブルラックは、住宅以外の物件になると100%といっていいほど使用する部材になります。
支持間隔やボルトサイズなど、根拠規程を明確にし、しっかりと施工しましょう。
それではまた、ご安全に!