電力会社が発電、送電し、各建物に電気を供給していますが、電気が流れる電線やケーブルには、送配電事業者と需要家との責任を明確に区分する「責任分界点」というものがどの物件にも設定されています。
今回は電路の「責任分界点」について、詳しく説明していきます。
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「責任分界点」とは?
責任分界点とは、一般送配電事業者と自家用電気工作物設置者において、どこまでお互いに責任を持つかを明確に区分けするために設定する分界点です。
つまり、電気を供給している電力会社と建物の保有者(設置者)との責任の境界です。
基本的には、保安上(安全上)の分界点となるため、建物の自家用電気工作物を電気主任技術者が保守・管理をおこないやすいよう建物構内に設定することが望ましく、ほとんどの物件ではそのようになっています。
分界点を設定することによって、仮に電気事故などが発生した際に、事故点が責任分界点を区切った電源側か負荷側かにより、責任の所在を明確にします。
具体的には責任分界点より電源側であれば電力会社の責任、負荷側であれば物件の電気主任技術者の責任となります。
また、建物の自家用電気工作物を普段管理している電気主任技術者が、どこまでを保守・点検・管理をするかが明確になるため、適切な運用を行うことができます。
ちなみに責任分界点からみて自家用電気工作物設置者側の原因におり波及事故発生になった場合は、電気関係報告規則に基づき、事故の発生を知った時から24時間以内に電話・FAX等で連絡(速報)、事故の発生を知った日から起算して30日以内に電気事故報告書(詳報)を提出する必要があります。
このように、もらい事故や波及事故が起こったときに、責任の所在を明確にするための位置が責任分界点です。
責任分界点はどこに設定される?
責任分界点の場所は、一般送配電事業者との運用に関連するので、一般送配電事業者と自家用電気工作物設置者両者の協議により決定されることとなっています。
基本的には、電力会社と需要家との境界線付近に設定され、原則として自家用電気工作物の構内となります。(高圧受電設備規程1110-1 保安上の責任分界点「保安上の責任分界点は自家用電気工作物設置者の構内に設定すること」)
高圧受電設備規程1110-1条のただし書きにおいて、一般送配電事業者が自家用引き込み線用の分岐開閉器を施設する等の特別な場合は、責任分界点を自家用電気工作物の構外に設置できることになっていますが、管理の観点から自家用電気工作物の構内に設置することが適切です。

高圧設備を規程している民間規格の高圧受電設備規程には、下記のように保安上の責任分界点の設定例および区分開閉器の設置例を掲載されています。

責任分界点には区分開閉器を設置する必要がある
責任分界点には「区分開閉器」を設置する必要があります。(高圧受電設備規程1110-2 区分開閉器の施設)
区分開閉器とは、保守点検や工事の際に電路を区分するための開閉器です。
建物電路の一番上位に設置され、受電部ですので区分開閉器を開放することで全館停電することができます。
区分開閉器は、架空引き込みの場合は敷地境界の1号柱に設置されるPAS(高圧気中開閉器)で、地中引き込みの場合は高圧キャビネット(ピラーボックス)の中にあるUGSにになります。
それぞれの電源側が境界となりますので、そこが責任分界点です。
また、区分開閉器には地絡遮断装置を兼用させる必要があります。(高圧受電設備規程 資料1-2-3.3)
一般的にPASやUGSには、SOGという方向性のある地絡保護装置が兼用されています。
責任分界点付近の留意事項
責任分界点から主遮断装置の間には、以下の変成器以外を設置しないこととなっています。(高圧受電設備規程1140-1結線)
【責任分界点から主遮断装置の間に設置してよい変成器】
・電力需給用計器用変成器(VCT)
・地絡保護継電器用変成器
・受電電圧確認用変成器
・主遮断装置開閉状態表示用変成器
・主遮断装置操作用変成器
財産分界点と一致していることがほとんど
財産分界点もわかりやすくするため、責任分界点と同一点にすることが望ましく、ほとんどの物件がそのようななっています。
財産分界点とは、その点を境として所有権を明確にする位置です。
財産分界点は、責任分界点と同じく区分開閉器の電源側となることが多いですので、区分開閉器を含めた負荷側の設備は需要家が管理をします。
区分開閉器より電源側の送電線は、電力会社が管理をします。
また、劣化による機器更新や操作権限もこの財産分界点で判断します。
例えばPASを更新する場合は、PASの更新自体は需要家所有ですので、需要家が実施しますが、PASの上位の開閉器を遮断する必要があります。
PAS上位の開閉器は電力会社管理のものですので、遮断する場合は電力会社に依頼する必要があります。
まとめ
まとめ
- 責任分界点は電力会社と需要家との責任の所在を明確にするための場所
- 責任分界点は原則需要家構内に設定される
- 責任分界点には区分開閉器が設置される
- 責任分界点は財産分界点と一致する
責任分界点は、電気保安にて事故の対処をする電気主任技術者はもちろんですが、高圧機器の更新をする電気工事会社も電力会社を呼ぶか呼ばないかなどがありますので認識しておく必要があります。