CT(変流器)は開放厳禁、VT(変圧器)は短絡厳禁は、電気設備業界では良く言われることですが、どういった理由からでしょうか。
CTやVTが接続された回路の作業の際に留意する必要がある事項ですが、特にCTについては認識できていなく事故になる事例もありますので、深掘りして解説していきたいと思います。
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VT(変圧器)短絡NGの理由
VTに限らずほとんどの回路は短絡NG
まずVTですが、VTは一般的に計器用変圧器のことを指しており、小型の変圧器になります。
変圧器は電圧を変圧する機器ですが、一般的な回路は全て変圧器回路です。
照明やコンセント、動力機器の回路も全て高圧変圧器の二次側の回路ですね。
つまり、VTに限らずほとんどの回路は共通して短絡は厳禁となります。
VT(変圧器)は定電圧源
変圧器は一次側と二次側が電気的には絶縁されていますが、コイルと鉄心を使い発生した磁束を利用して二次側に電圧を発生しています。
一次側に電圧があれば必然的に二次側にも電圧が発生し、コイルの巻き数で電圧が決定します。
つまり、変圧器は定電圧源と捉えることができます。
常に200Vや100Vなどの決まった値の電圧が発生している状態です。
ショート=短絡
よく「ショートして火花が出た」といったことを聞くかと思いますが、ショート=短絡です。
短絡とは、抵抗を介さずに回路の相間(線と線)が接触してしまうことをいいます。
普段、私たちが電気を使って照明や機器を問題なく使用できているのは、機器の内部回路と抵抗によって電気を機器が動くエネルギーに変換しているからです。
もし、機器(抵抗)を接続せずに相間短絡してしまうと、回路には電線そのもののインピーダンス(抵抗)しかありませんので、回路の抵抗は限りなく0に近くなります。
その結果、オームの法則のI(電流)=V(電圧)÷R(抵抗)により、ものすごく大きな電流が回路に流れることになり大変危険です。
ここで、上で説明した変圧器は定電圧源ということで、電圧は一定ですのでI=V÷RのVは一定になります。
実際には、電線自体の抵抗がありますが、仮に回路の抵抗を0とすると、
電流は、V÷0=∞となり、大電流が流れることになります。
短絡した場合の被害
基本的には、配線用遮断器(ブレーカー)がトリップして回路が保護されますが、仮になんらかの理由で短絡電流が継続して流れるようなことがあると、電線の導体に大きな熱が発生して発火することになります。
また、配線用遮断器でトリップ保護された場合でも、短絡した瞬間は大きな光と共に火花がでますので、火傷や発火になるといった事例もあります。
特に幹線ケーブルのような太いケーブルはインピーダンスが低く、高圧ケーブルは電圧が高いため、短絡電流が大きくなります。
CT(変流器)開放NGの理由
CTは電流源!二次側回路には開放状態でも電流が流れようとする
上で説明したように、電気工事で配線する回路はほとんどが変圧器回路ですが、CTの2次側というのはとても特殊な回路といえます。
基本的に電気は、電圧がかかっていても、閉回路でなければ電流は発生しません。
線間が開放している状態では電流は流れないのです。
しかし、CTは電流を変換する機器となりますので、CTの一次側(CTで計測する回路)に電流が流れると、二次側回路にも電流を流そうとします。
CTの二次側回路は一次側回路に依存するといった状態です。
つまり、CTは電流源と捉えることができ、CTの二次側は回路が開放状態でも電流を流そうとします。
CT開放状態にすると高電圧が発生!
CT二次側回路を開放すると、回路の抵抗は開放した部分の線間の「空気」となります。
空気は電気を通さない絶縁体ですので限りなく大きな抵抗となりますので、オームの法則よりV=IRより高電圧が発生することになります。
実際には空気の抵抗は無限ではありませんが∞とすると、電圧は∞×I=∞となり高電圧となります。
磁束から考える
おおまかなイメージは上記のような感じです。
今度は、CTの構造から考えてみましょう。
CTは変圧器と同じく、鉄心の周りに一次側と二次側の線がコイル状に巻き付けられています。
このコイルの巻き数比に反比例した電流が、二次側に流れることによって電流を変化させています。
例えば巻き数比が1:2で、一次側の電流が10Aの場合二次側電流は5Aとなります。
一次側と二次側は電気的に絶縁されていますが、一次側に電流が流れると磁束が発生します。
この磁束が鉄心内を通り二次巻き線を貫くと、電磁誘導により二次側に電流が発生するというのがCTの原理です。
CTは通常時、二次側回路は短絡されており、一次側と二次側の起磁力はお互いに打ち消し合っています。
起磁力・・・磁束×電流で表される。磁束を生じさせる力
二次側が開放されてしまうと、一次電流は変わらないのに二次側には電流が流れない状態になります。
そうすると一次電流の全てが励磁電流となり、磁束が非常に大きくなり磁気飽和してしまうのです。
磁気飽和・・・発生した磁束がこれ以上増やすことができない限界値に達すること
磁気飽和をむかえると、これ以上磁束は上昇しないので、波形にすると下図のような方形波になります。
一次電流が0の地点で、磁束が反転し、急激に変動していることがわかりますね。
ここで、電磁誘導の法則の式から「二次電圧をE、巻き数をN、磁束変化をΔΦ、時間変化をΔt」とすると下の式になります。
\(\displaystyle N=\frac{ ΔΦ }{ Δt }\)
磁束変化が分子にありますので、磁束が急激に変化する点ではCT二次側に高電圧が発生します。
そのため、一次電流が0の磁束が変化する点では、二次電圧がパルス状の尖った形状になります。
高電圧によりCTが破損する
CT二次側開放により高電圧が発生すると、CTが絶縁破壊する可能性があります。
この場合、極端な磁気飽和状態で使用することになりますので、鉄損が増加して鉄心が加熱します。
結果、CTの破損という結果になりますので、CT二次側の開放はNGということです。
さいごに
VTのような変圧器回路は、一般的な回路共通ですが、基本的には活線状態で作業を行わないことと、検電の徹底が重要となります。
ニッパー等でケーブルを切断して相間短絡はよくある事例ですね。
CT二次側回路は、高圧継電器や電力量計への取り込みで使用しますが、二次側を短絡していない状態にしてしまいCTを焼損させてしまった事例がたくさんあります。
また、開放すると高電圧が発生しますので、CT二次側の離線中に感電したといった事例もあります。
事故や品質不具合は、正しい事前知識があれば防げますので是非おさえておきましょう。
それではまた、ご安全に!