今回は、受変電設備を構成する機器のうち、メイン機器となる直列リアクトルについて解説いたします。
直列リアクトルの役割は「突入電流からの保護」と「高調波の抑制」という二つの役割があります。
それぞれについて詳細に説明していきますので是非ご覧ください。
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直列リアクトルとは?
直列リアクトルとは、高圧進相コンデンサの一次側に直列で接続され、進相コンデンサ投入時の突入電流の抑制と、コンデンサ回路を誘導性にすることによって高調波を相殺する働きがあります。高圧進相コンデンサとセットで設置される機器ですね。
キュービクル内には必ずといっていいほど設置され、大型機器となるため受変電設備の中ではメイン機器となります。
進相コンデンサと電線で直接接続され、外観は変圧器と似ている大きな機器ですので一目でわかると思いますよ。
直列リアクトルの種類
直列リアクトルには、高圧トランスと同じく「油入式」と「モールド式」があります。
油入式

油入式は、内部絶縁体に油を使用していますので、絶縁性が高く頑丈といったメリットがあります。
金属製の箱に収められているので、外的損傷に強く設置場所を選びません。
また、感電の恐れがなくメンテナンス性に優れている面もメリットですね。
現在でもほとんどが油入式が使われています。
デメリットは、油を使用している面です。
防災面に配慮した物件はモールド式を使用します。
特殊な環境ではない場合、一般的には「油入式」で計画して問題ない
モールド式

モールド式の最大のメリットは油を使用していないため、火災の際に延焼する可能性が低く、防災面で優れているといった面です。
最近では、病院や避難所の拠点などの、防災面に配慮した施設では需要が増えています。
また、油入式に比べて小型ですので、設備スペースを確保したい場合に計画されたりします。
敷地が狭い物件や、変圧器の増設のため代わりにリアクトルのスペースを少なくするなどといった使われ方をします。
対してデメリットは、モールド式はコイル部分を樹脂で覆っていますが、静電容量により電位を帯びていますので絶縁を空気に頼っている面です。
そのため、触れると感電する危険性があります。
防災に配慮している物件や、設備スペースを節約した物件に「モールド式」を計画する
直列リアクトルの設置義務
高圧受電設備規程には次のように規定しています。
5.進相コンデンサには、高調波電流による障害防止及びコンデンサ回路の開閉による突入電流抑制等や、系統でよく問題になる高調波のうち、低次で含有率が最も大きい第5次高調波等に対して、高調波障害の拡大を防止するとともに、コンデンサの過負荷を生じないよう原則としてコンデンサリアクタンスの6%又は13%の直列リアクトルを施設すること。
高圧受電設備規程1150-9 5
このように、進相コンデンサ回路には直列リアクトルを設置することが義務となっています。
以前は勧告事項でしたが、義務事項へと引き上げられました。
昔の設備ですと、進相コンデンサ回路に直列リアクトルがなかったりしますが、更新の際は必ず直列リアクトルを設置する計画をしましょう。
直列リアクトル設置の際の注意点
旧規格と現規格の組み合わせは危険
1998年以前の旧JIS準拠品と1998年以降の現JIS準拠品では定格が異なるため、両者を混在させると絶縁破壊や過電流等の不具合が発生します。
例えば、昔の設備で旧JISの進相コンデンサのみが設置してあり、直列リアクトルがないので新品(新JIS)を増設するといったことは危険です。
直列リアクトルを増設する場合は、必ず進相コンデンサとセットで更新しましょう。
また、コンデンサ内部で故障が生じた場合、それが原因でコンデンサの爆発・出火といった二次災害に発展していようにコンデンサ回路には必ず源流ヒユーズを設ける必要があります。
通常は、一時側にLBSやVMCを開閉器として設置します。
直列リアクトルの役割は二つ!
①高圧進相コンデンサを突入電流から保護する

進相コンデンサ回路を投入すると、コンデンサ定格電流の数十倍にもなる大きな突入電流が流れます。
直列リアクトルは、この突入電流を定格電流の5倍程度まで抑制することで進相コンデンサを守っているのです。
突入電流抑制の仕組みはどうなっているのでしょう。
直列リアクトルは、インダクタンス成分です。つまりコイルなんですね。
コイルに電流が流れると、電磁誘導が起こり、流れている方向と逆方向に誘導起電力(自己誘導)が発生し、電流の増加を防止します。
時間が経つにつれて誘導起電力は小さくなり、やがてなくなり定常状態となります。(実際にはこの動作は一瞬です)
コイルは、電流の変化を嫌うと考えるとわかりやすいかと思います。
直列リアクトルは、コイルの「電流変化を嫌う」という性質を利用し、突入電流を抑制しているのです。
②高調波の抑制
近年は、パワーエレクトロニクス技術の発展により、トランジスタなどの半導体を応用した電子機器が原因により高調波電流が発生し電圧をひずませています。
高調波は、特に夜間等の負荷が少なくなり、フェランチ現象によって受電電圧が高くなる時間帯に大きくなることが多いです。
このような、高調波電流、特に第5調波電圧のひずみが大きい場合は、進相コンデンサの最大許容電流を上回る過電流となり、異常な温度上昇を起こして焼損することがあります。
この現象を抑制するために、進相コンデンサに直列リアクトルが挿入されているのです。
直列リアクトルを挿入し、回路を誘導性にすることで高調波と共振させて、結果相殺する形となります。
6%と13%の仕様の違いについて
6%と13%の違いは、結論として第5調波が多い場合は6%を、第3調波が多い場合は13%となります。
しかし、発生する高調波は主に第3調波と第5調波ですが、第3調波は高圧トランスのデルタ結線部分で循環し、回路側には流れないので一般的には6%を基本として選定されます。
ほとんどの物件では6%リアクトルが使われますが、第3調波が無視できない地域では13%リアクトルが選定されます。
まとめ
進相コンデンサの「守り神」、直列リアクトルの説明でした。
直列リアクトルの役割を理解すれば、自ずと設置位置もわかってくると思います。
受変電設備の中でも、目的がわかりづらい機器ですがこの機会に理解を深めてみましょう。
それではまた、ご安全に!