高圧設備

【高圧】避雷器の接地と接地抵抗値について。単独接地ではなく共用接地でよいのか

最近ではPAS内蔵避雷器が普及し、避雷器自体が単独で設置されることが少なくなりましたが、まだまだキュービクル内に避雷器が設置されていることもあるかと思います。

避雷器の接地はA種接地のイメージですが、単独接地されている物件が多くないですか?

結論として、避雷器の接地はA種接地共用で問題なく、接地抵抗値は条件により30Ω以下に緩和されます。

これらについて詳しく解説していきます。

避雷器については下記の記事をご覧ください

LA(高圧避雷器)とは?役割と設置位置、種類や特徴について

避雷器の接地は共用接地でよいのか

結論として、避雷器の接地は共用接地で問題ないのですが、昔の設備を見てみると接地端子盤に避雷器用の接地が単独で設けられています。

これは、高圧受電設備規程の前身である「高圧受電設備指針」に「高圧電路に施設する避雷器の接地は、原則として単独接地とし、第1種接地工事(現在のA種接地)とすること」と規程されており、当時に竣工した物件は避雷器の接地は単独接地となっています。

高圧受電設備指針では、避雷器動作時の電位干渉を避けるため単独接地を規定していたようです。

現行の電気設備技術基準の解釈及び高圧受電設備規程には以下のように規定しており、避雷器の接地は単独である必要がないと解釈できます。

高圧及び特別高圧の電路に施設する避雷器には、A種接地工事を施すこと。

引用元:電気設備技術基準の解釈 第37条 3項

高圧電路に施設する避雷器には、A種接地工事を施すこと。

引用元:高圧受電設備規程 1160-1 2

また、電気設備技術基準の解釈の解説では以下のように記載があります。

第3項は、高圧用及び特別高圧用の避雷器の接地をA種接地工事(→第17条)によることとしているが、機器に対する 保護効果を十分にするためには、10Ωより更に低い接地抵抗値とする場合が多い。避雷器の接地は、他の機器の接地と 分離して、単独接地とするのが普通であるが、発蓄変電所等の構内全体にわたる接地網を共通の接地極として使用した方が、効果が上がる場合もあるので、特に避雷器を単独接地とすることとはしていない。

引用元:電気設備技術基準の解釈の解説

以上のことから、避雷器の接地は以前の規程とは異なり、特に単独とはせずにA種接地を施すことで問題ないです。

避雷器の接地はA種接地と共用で問題ない

避雷器の接地抵抗値について

単独接地の場合は30Ω以下

避雷器の接地は基本的にはA種接地を施すので、接地抵抗値としては10Ω以下となります。

ただ、避雷器の接地線を単独接地とした場合と避雷器が変圧器に近接しない場合は30Ω以下となります。

これは、電気設備技術基準の解釈のただし書きに記載のある「JESC E2018(2015)「高圧架空電線路に施設する避雷器の接地工事」」が根拠になります。

高圧及び特別高圧の電路に施設する避雷器には、A種接地工事を施すこと。ただし、高圧架空電線路に施設する 避雷器(第1項の規定により施設するものを除く。)のA種接地工事を日本電気技術規格委員会規格 JESC E2018 (2015)「高圧架空電線路に施設する避雷器の接地工事」の「2.技術的規定」により施設する場合の接地抵抗値は、第17条第1項第一号の規定によらないことができる。

引用元:電気設備技術基準の解釈

高圧架空電線路に施設する避雷器の接地工事は,次の各号のいずれかの場合によることができる。

一 避雷器{B種接地工事が施された変圧器(高圧巻線と低圧巻線との間に金属製の 混触防止板を有し,高圧電路と非接地の低圧電路とを結合する変圧器を除く。以下 同じ。)に近接して施設する場合を除く。}の接地工事の接地線が当該接地工事専用 のものである場合において,当該接地工事の接地抵抗値が 30Ω以下であるとき。

二 避雷器をB種接地工事が施された変圧器に近接して施設する場合において,避雷 器の接地工事の接地極を変圧器のB種接地工事の接地極から1m以上離して施設し, 当該接地工事の接地抵抗値が 30Ω以下であるとき。

三 略

引用元:JESC E2018(2015) 2.技術的規定

三項は少し複雑ですので割愛しますが、概ね一項と二項の内容を理解するればよいかと思います。

避雷器の接地抵抗を30Ω以下にできる場合
・避雷器の接地を単独接地とする場合
・避雷器が変圧器と近接しない場合

30Ω以下は避雷器設置義務がない場合の緩和規程なので注意

単独接地する場合は、30Ω以下で問題ないということですが、これは避雷器の設置を義務付けられていない場所に避雷器を施設した場合のみの緩和規程となりますので注意が必要です。

上記、電気設備技術基準の解釈の「ただし、高圧架空電線路に施設する 避雷器(第1項の規定により施設するものを除く。)」の部分が根拠となります。

第1項の規定は以下になります。

一 発電所、蓄電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所の架空電線の引込口(需要場所の引込口を除く。)及 び引出口

二 架空電線路に接続する、第26条に規定する配電用変圧器の高圧側及び特別高圧側

三 高圧架空電線路から電気の供給を受ける受電電力が500kW以上の需要場所の引込口

四 特別高圧架空電線路から電気の供給を受ける需要場所の引込口

引用元:電気設備技術基準の解釈 第37条1項

このように、電気設備技術基準の解釈の解説にも記載がありますが、任意に避雷器を設置する場合については、設置抵抗値を30Ωまで許容しています。

避雷器の接地はA種接地を施せば無難

上記のように、条件によっては30Ω以下で問題ないということですが、わざわざ単独接地にしたり設置義務がない場所に避雷器を設置する状況というのはかなり希かと思います。

避雷器は、雷サージという高電圧から機器や人体を保護する目的であるため、高圧受電設備規程の2210-1 2項の「避雷器の施設に当たっては、できるだけ接地抵抗値を低減すること」と記載のとおり、接地抵抗値は低いほうが望ましいといえます。

そのため、確実に10Ω以下が保証されているA種接地を施すことが無難でしょう。

だいたいの場合、A種接地は避雷器を設置する場所に近い部分にありますので、そう難しいことではないですね。

30Ω以下の規程は避雷器を任意に設置する場合の緩和規程

まとめ

まとめ

  • 避雷器の接地はA種接地と共用可
  • 避雷器の接地抵抗は条件により30Ω以下にできる(任意接地、単独接地、変圧器と近接しない)
  • 接地抵抗値は低い方が望ましいためA種接地を施すことが無難

今回は高圧避雷器の接地についてまとめてみました。

昔の設備は単独接地になっていたりするのでこれで謎が解決したのではないでしょうか。

条件によっては30Ω以下に緩和できる規程もありますが、あまり考えずにA種接地を施しておけば問題ないかと思います。

わざわざ単独で接地工事をするのもコスト的には不利にもなりますからね。

ただ現場の条件などによっても左右されますので、この緩和規程がどこかで役にたつかもしれません。

それではまた、ご安全に!

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