高圧電気設備に携わる業務をしている方たちの中でも、「高圧受電設備規程」の存在を知らないといった方、知っているけどどのような内容で活用方法がわからないといった方もいるかと思います。
今回は、高圧に特化している少しニッチな規程書「高圧受電設備規程」について説明していきます。
実は、高圧関係の保守や施工に従事する方にはかかせない存在となるため、是非ご覧ください。
高圧受電設備規程とは
「高圧受電設備規程」は、高圧で受電する自家用電気工作物の電気保安の確保に資することを目的に平成14年に制定され、高圧受電設備の設計、維持、検査の規範として、関係各界において広く活用されております。
高圧受電設備規程 序文より引用
「高圧受電設備規程」は、高圧受電設備に関する、各種機器、電線、ケーブル等の性能と施設方法や配置、その他材料に関する規程、それから接地、保護強調、絶縁強調、高調波対策、発電設備等の系統連系要件について詳細に規定した民間規格です。
電気工事のバイブル的存在の「内線規程」の高圧バージョンと思ってもらえればわかりやすいです。
出版も内線規程と同じく日本電気協会です。
高圧受電設備規程は内線規程の高圧バージョン的存在
高圧受電設備規程の目的
高圧受電設備規程の目的は、高圧受電設備規程0010-1条「高圧受電設備規程の目的」に下記のように示されています。
高圧受電設備として施設する自家用電気工作物が、人体に危害をお呼びし、若しくは物体に損傷を与え、又は他の電気設備その他の物件に電気的若しくは磁気的障害を与えないようにするとともに、その損壊により一般送配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないよう施設上及び保守上守るべき技術的な事項などについて定め、電気保安を確保すること。
高圧受電設備規程より引用
高圧受電設備に従事する方に対し、規程を定めてこれを遵守することによって、安全に運用を継続することが目的になります。
国の省令や電技解釈は、必要最低限の規定していることに対し、高圧受電設備規程は、高圧受電設備の必要かつ詳細な内容について、国の基準より詳細に規定しています。
高圧受電設備規程の適用範囲
高圧受電設備規程の適用範囲は、第0020-1条の「適用範囲」に記載がありますが、「一般送配電事業者から高圧で自家用電気工作物」と規程しています。
これは、高圧受電設備規程の高圧受電設備の定義に「高圧の電路で一般送配電事業者の電気設備と直接接続されている設備であって、区分開閉器、遮断機、負荷開閉器、保護装置、変圧器、避雷器、進相コンデンサ等により構成される電気設備をいい、高調波抑制設備及び発電機連系設備を含む」と規程されています。
つまり、高圧受電設備の適用範囲は高圧設備となります。特別高圧設備は適用外です。
ただし、0020-1「適用範囲」の注2に記載がありますが、「特別高圧需要家における構内高圧設備に適用してもよい」となっていますので、特別高圧で受電している需要家設備であっても、構内で特別高圧を高圧に変電した以降の設備は対象となります。
具体的には受変電設備、いわゆる高圧キュービクルが主な適用設備ですね。
【適用範囲】
・高圧で受電している需要家における高圧設備
・特別高圧で受電している需要家における、変圧以降の高圧設備
・高調波抑制設備や発電機連系設備も含む
法律や電気設備技術基準との関係
電気工作物の工事、維持及び運用を規制する法律として「電気事業法」があります。
電気事業法は、その中で自家用電気工作物の設置者に対し技術基準適合維持義務を課しており、電気設備に関する技術基準は「電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)」になります。
さらに、電技省令の技術的要件を満たすため、具体的な施工方法等を規定したものとして「電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)」が公表されています。
高圧受電設備規程は、これらの電技省令・電技解釈を補完する民間規格として、各要件について、技術上必要な事項を具体的かつ詳細に規定しています。
国が定めている電技省令は法律ですので、法的拘束力があるのに対し、高圧受電設備規程は法的拘束力がないです。
しかし、省令は抽象的な表現が多いので、それを電技解釈が具体的に規定し、さらに高圧受電設備規程が補完しています。
法的拘束力はないですが、省令がベースとなっており、実質業界では高圧については高圧受電設備規程が保守や施工の根拠となってます。
高圧受電設備規程は法的拘束力はないが実質的には根拠規程となっている
高圧受電設備規程の活用方法
適用範囲が高圧受電設備になりますので、主に高圧キュービクル内での施工や保守をする際に役に立ちます。
各高圧機器の施設方法を規定していますので、キュービクルの設計やキュービクル内の機器更新の際には参考にするとよいです。
保護協調は絶縁協調の項目もありますので、構内のインピーダンスマップを作成したり保護協調の設計の際のも必須ですね。
また、高圧受電設備は、防火上の観点から消防法に基づく火災予防条例、労働者の安全確保の観点から安衛法にも関連します。
それらの内容も規定してますので確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
まとめ
- 高圧受電設備は民間規定
- 国の省令などより詳細に規定している
- 実質的な根拠規程
- 高圧受電設備が適用範囲
高圧受電設備規程は、電気主任技術者などの高圧受電設備を保守・管理する方はもちろんですが、高圧設備を改修工事したりまたはその仕様を決定する設計者においても重要なものとなります。
内容を頭で網羅するというよりも、気になった際にページをめくるといった使い方になるかと思います。
職場に一冊は欲しい書籍ですね。
それではまた、ご安全に!