高圧設備

LA(高圧避雷器)とは?役割と設置位置、種類や特徴について

避雷器(以下LA)は、落雷等のサージ電圧から機器を守る役割がある重要な設備ですが、高圧設備の中でも操作するものではないので意識しない方も多いかと思います。

また、LA内蔵PASの普及により、需要家によっては設置されていない場合もあります。

しかし、高圧受電設備の事故原因で最も多いのは、雷によるものですのでLAは大変重要な設備といえます。

特に雷の被害が多いのは、引き込み部分である区分開閉器(PAS)や高圧ケーブルが多く、次に受変電設備である遮断器や変圧器、コンデンサ等になります。

雷による被害から機器を守るという点で、高圧設備に携わる方は大変重要な機器ですので抑えておきましょう。

電気設備設計をされる方は、機器選定の対象になりますし、電気設備保守をされる方は特に深い知識が必要になります。

今回は、LAについて詳しく解説していきます。

LA(避雷器)とは?役割について

避雷器

LAはアレスタとも呼ばれ、設置目的としては、落雷時に高圧設備に侵入してくる雷サージ電圧や、負荷を開閉した際に発生する開閉サージ電圧などのサージ電圧(異常電圧)を抑制するためです。

雷サージ電圧・・・雷によって発生する過電圧
開閉サージ電圧・・・回路の開閉によって発生する過電圧

異常電圧発生時に動作し、サージが侵入した電路と接地を繋ぐことで、異常電圧に伴う電流を大地へ分流します。

それにより、過電圧を制限して、受変電設備の損傷を防止することができます。

異常電圧が消滅した後は、続流を速やかに遮断して、電路の正規状態を乱すことなく、元の状態に回復させることのできる装置です。

続流・・・過電圧の放電に引き続いて交流電流が大地に流れようとする

ちなみにですが、雷サージ電圧には、直撃雷によるものと誘導雷によるものがあります。

避雷器では、直撃雷を防ぐことはできません。

LA(避雷器)の設置基準

電気設備技術基準の解釈では、受電電力が500kW以上の需要家に設置することになっています。

しかし、LAがないと落雷によるサージはそのまま電気設備に流入することになるので、500kW未満の場合であっても避雷器を設置することが望まれます。

特に、雷害のおそれのある多雷地区においては設置が必須となります。

LAは、需要場所の引込口またはこれに近接する箇所に設置されます。

LAの設置位置と図記号

具体的には、雷サージ電圧が侵入するおそれがある部分に設置しますので、PASなどの区分開閉器の近くに設置されることが多いですが、キュービクル内部に設置されることもあります。

保護したい機器からLAが離れていると、LAが有効に働かないことがありますのでできるだけ区分開閉器の近くが望ましいです。

近年は、LA付きPASが主流になっていますので、その場合はLAの設置は省略されます。

高圧及び特別高圧の電路中、次の各号に掲げる箇所又はこれに近接する箇所には、避雷器を施設すること。
一 発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所の架空電線の引込口(需要場所の引込口を除く。)及び引込口
二 架空電線路に接続する、第26条(特別高圧配電用変圧器の施設)に規定する配電用変圧器の高圧側及び特別高圧側
三 高圧架空電線路から電気の供給を受ける受電電力が500kW以上の需要場所の引込口
四 特別高圧架空電線路から電気の供給を受ける需要場所の引込口

引用:電気設備技術基準の解釈 第37条(避雷器等の施設)

LA(避雷器)の定格

配電線路には、公称放電電流5000Aおよび2500A避雷器が使用されていますが、6.6kV高圧受電設備に施設される避雷器においては、公称電圧6.6kV、定格電圧8.4kV、公称放電電流2500Aのものが使用されます。

雷害の多い地域では、公称放電電流5000Aの避雷器が使用されます。

現在はギャップレスが主流(LAの動作原理)

通常時は、避雷器に電流は流れませんが、過電圧が発生した際には直ちに避雷器が動作して大地に放電し、電圧の上昇を抑制して機器を保護します。

異常電圧が消滅した後も、大地に電流が流れ続けると地絡状態になるため、放電後はなるべく早く続流を遮断して元の状態に戻す必要があります。

LAの動作イメージ

この続流を遮断するための機構の違いとして、避雷器にはギャップ付き避雷器と、ギャップレス避雷器があります。

この二つは、外観での見た目の違いはほとんどありません。

以前は、LA内に空間を作って空気で絶縁するギャップ付きが使用されていましたが、現在はZnO(酸化亜鉛)の特性を利用したギャップレスが主流となっています。

LAが動作するといっていますが、実際には開閉器のように接点が動作して開閉しているわけではありません。

以下に動作原理を説明します。

ギャップ付き避雷器

ギャップ付き避雷器は、気中ギャップというすきま(空気)と、特定要素であるSiC(炭化ケイ素)を組み合わせた構造をしています。

通常時は、すきまがあるため大地と接地は絶縁状態となり電流を流しませんが、異常電圧が発生すると空気間で絶縁破壊を起こし、大地に放電します。

SiCは、電圧-電流特性に優れているとされていましたが、更に優れたZnOの登場によってギャップレス避雷器へと移行していきます。

ギャップレス避雷器

ギャップレス避雷器は、ZnO(酸化亜鉛)素子を内蔵しています。

ZnOは優れた特性を持っており、電圧が低い間はほとんど電流が流れず、ある電圧を超えると急激に電流が流れるようになります。

通常時のような電路の電圧が低いときはZnOは高抵抗となるため、電路と接地は絶縁された状態となっています。

異常電圧が発生し、高電圧となるとZnOは低抵抗となり、電路と接地がつながり、電流を大地に分流します。

このように、ZnOの優れた電圧-電流特性(非直線)により、電路の電圧に応じて自動で開閉器のような動作を実現できるのです。

ギャップレス避雷器は、直列ギャップを使用しないので、放電耐量が大きく、放電電流は5000A〜10000Aまで対応可能となります。

ギャップ付き避雷器とギャップレス避雷器

LA(避雷器)の接地について

電気設備技術基準の解釈では、避雷器の接地工事はA種接地工事となっています。

したがって、接地抵抗値は10Ω以下にする必要があります。

高圧及び特別高圧の電路に施設する避雷器には、A種接地工事を施すこと。

引用:電気設備技術基準の解釈 第37条-3(避雷器等の施設)

LA(避雷器)の保守

LAは、操作をすることはないですし、常に静止した状態ですので、保守点検が疎かになりがちな機器です。

しかし、しっかりとメンテナンスをしないといざサージ電圧が侵入した際に、機器を守ることができなくなります。

主な点検内容は以下のとおりです。

・がい管(本体のがいしみたいな部分)に著しい汚れがないか

・電路側、接地側共に電線の接続部のゆるみがなく、しっかりと固定されているか。

・絶縁抵抗値(1000MΩ)以上あるか。

電線の接続不良や、がい管が汚れ十分な絶縁性が保てない場合、放電時に大きな事故になる可能性があるので、しっかりと確認する必要があります。

高圧受電設備規程の記載

民間規程の高圧受電設備規程の記載事項を記しておきますので参考にしてみてください。

1.避雷器は、それによって保護される機器のもっとも近い位置に施設すること。(推奨)
[注]屋外用の避雷器は、その接続部に過度の機械的荷重がかからないように配慮すること。
2.避雷器には、保安上必要な場合、電路から切り離せるように断路器等を施設すること。(推奨)
[注]2項の断路器等には、PC(素通し)による方法も含まれる。

引用:高圧受電設備規程 1150-10(避雷器)

1.屋内(盤内を含む。)に施設する高圧避雷器は、JIS C 4608(高圧避雷器(屋内用))又はJEC 203(避雷器)に適合するものであること。
2.屋外に施設する高圧避雷器は、JEC 203(避雷器)またはJE 2371(がいし形避雷器)に適合するものであること。(推奨)
3.前項の場合は、電線接続部の機械的強度が十分であること。(推奨)
4.塩害地域の屋外に設置する「避雷器」については、JEC 203(避雷器)またはJEC 2371(がいし形避雷器)の耐汚損形避雷器に適合するものであること。(推奨)
5.断路機構付き避雷器は、JIS C 4606(屋内用高圧断路器)(定格電流、定格短時間耐電流及び無電圧開閉性能を除く。)及び1項に適合するもので、かつ、次の各号に適合するものであること。
①定格短時間耐電流は、通電時間1秒以上において、2kA以上とすること。
②無電圧開閉性能は、100回以上とすること。
③保持力は、88.2N/3極以上とすること。ただし、可動部が鉛直でない場合であって開極するおそれがあるときは、ロック機構を設けること。

引用:高圧受電設備規程 1270-1(高圧避雷器)

さいごに

落雷は、最近では都市部でも多発しているので、雷害から設備を守るということはとても重要になっています。

LAは、あまり目立つ機器ではありませんが、万一の際に役立つ機器であり、古い設備にはまだまだ設置されていますので、特に設備管理業務の方は注目してみてくださいね。

それではまた、ご安全に!

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